土壌汚染対策法基準値一覧と自動車関連施設の注意点

土壌汚染対策法の基準値を詳しく知りたいと思いませんか?特定有害物質26種類の溶出量基準や含有量基準を一覧でまとめました。自動車整備工場や駐車場など車に関わる施設での土壌汚染リスクについても解説します。あなたの施設は大丈夫ですか?

土壌汚染対策法基準値一覧

🏭 土壌汚染対策法の基準値を理解する3つのポイント
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第一種特定有害物質(VOC類)

揮発性有機化合物12物質。ベンゼンやトリクロロエチレンなど、土壌ガス調査が必要です。

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第二種特定有害物質(重金属類)

カドミウムや鉛など9物質。溶出量基準と含有量基準の両方が設定されています。

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第三種特定有害物質(農薬類)

シマジンやPCBなど5物質。過去に農薬として使用された物質が中心です。

土壌汚染対策法では、人の健康を保護するために特定有害物質26種類について基準値を定めています。この基準値は、土壌を直接摂取する経路と地下水を飲用する経路の2つを考慮して設定されています。基準値を超過した場合、その土地は指定区域として公示され、適切な管理や対策が必要となります。
参考)https://www.georhizome.co.jp/soil_contamination/hazardous-substances/type-standard-value/

土壌汚染対策法の第一種特定有害物質と溶出量基準値


土壌汚染をめぐる41の重要裁判例と調査・対策の実際および費用計算の具体例

 

第一種特定有害物質は揮発性有機化合物(VOC)に分類され、全部で12物質が指定されています。これらの物質は揮発する性質があるため、調査では土壌ガス(土壌中の空気)を採取して濃度を測定します。
参考)土壌汚染の種類と基準値 - 知識集・事例集 - エコサイクル…

物質名 土壌溶出量基準(mg/L) 地下水基準(mg/L)
クロロエチレン 0.002以下
四塩化炭素 0.002以下
1,2-ジクロロエタン 0.004以下
1,1-ジクロロエチレン 0.1以下
1,2-ジクロロエチレン 0.04以下
1,3-ジクロロプロペン 0.002以下
ジクロロメタン 0.02以下
テトラクロロエチレン 0.01以下
1,1,1-トリクロロエタン 1以下
1,1,2-トリクロロエタン 0.006以下
トリクロロエチレン 0.01以下
ベンゼン 0.01以下

ベンゼンは自動車整備工場やガソリンスタンドで検出されることが多い物質です。ガソリンには体積比1%以下のベンゼンが含まれており、適切な処理をしないと土壌汚染の原因となります。
参考)自動車整備工場に残る土壌汚染~ベンゼン・鉛・水銀~

土壌汚染対策法の第二種特定有害物質と含有量基準値

第二種特定有害物質は重金属類に分類され、9物質が指定されています。重金属類には溶出量基準に加えて、土壌を直接摂取することを想定した含有量基準も設定されているのが特徴です。​

物質名 土壌溶出量基準(mg/L) 土壌含有量基準(mg/kg) 地下水基準(mg/L)
カドミウム及びその化合物 0.003以下 45以下 0.003以下
六価クロム化合物 0.05以下 250以下 0.05以下
シアン化合物 検出されないこと 50以下(遊離シアン) 検出されないこと
水銀及びその化合物 水銀0.0005以下、アルキル水銀不検出 15以下 水銀0.0005以下、アルキル水銀不検出
セレン及びその化合物 0.01以下 150以下 0.01以下
鉛及びその化合物 0.01以下 150以下 0.01以下
砒素及びその化合物 0.01以下 150以下 0.01以下
ふっ素及びその化合物 0.8以下 4,000以下 0.8以下
ほう素及びその化合物 1以下 4,000以下 1以下

含有量基準は、一生涯(70年)その土地に居住し、子供が1日200mg、大人が1日100mgの土壌を摂取することを想定して設定されています。鉛は自動車のバッテリーに含まれており、適切に廃棄されない場合は土壌汚染の原因となります。ふっ素はブレーキオイルやエンジンオイルに含まれており、自動車整備工場で注意が必要な物質です。
参考)板金・塗装以外に自動車整備工場で懸念される土壌汚染

土壌汚染対策法の第三種特定有害物質と基準値一覧

第三種特定有害物質は農薬類とPCBに分類され、5物質が指定されています。これらは主として過去に農薬として使用されていた物質で、現在は製造や使用が禁止されているものが多く含まれます。​

物質名 土壌溶出量基準(mg/L) 地下水基準(mg/L)
シマジン 0.003以下
チオベンカルブ 0.02以下
チウラム 0.006以下
ポリ塩化ビフェニル(PCB) 検出されないこと
有機りん化合物 検出されないこと

第三種特定有害物質は農地や工場跡地で検出されることが多い物質群です。PCBは絶縁油やトランスオイルとして使用されていた物質で、現在は製造・使用が禁止されています。​

土壌汚染対策法における自動車関連施設の調査対象範囲

自動車整備工場やガソリンスタンドなどの自動車関連施設では、土壌汚染が発生するリスクが高いため、適切な調査と管理が求められます。土壌汚染対策法では、土地の利用状況によって「土壌汚染のおそれの程度」を3つに分類し、調査密度を変えています。
参考)土壌汚染のおそれの分類|株式会社セロリは環境省指定調査機関で…

土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地には、住居、駐車場(従業員用や作業車用を除く公共駐車場)、グラウンドなどが該当し、特定有害物質の使用可能性が客観的に否定できる状態が継続している土地です。​
土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地には、事業用の駐車場、資材置場、倉庫、作業車用通路などが該当します。これらは30m格子(900㎡)の区画で1検体の分析を実施します。
参考)https://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/seminar/files/2024a/doc_shimane_03.pdf

土壌汚染が存在するおそれがあると認められる土地には、特定有害物質の使用履歴がある作業場や配管がある敷地などが該当し、10m格子(100㎡)の単位区画で1検体の分析が必要です。自動車整備工場の整備エリアやガソリンスタンドの給油エリアはこの分類に該当することが多くなります。​
事業用の駐車場が工場と壁で隔てられている場合、その駐車場は調査対象地となるかどうかは個別に判断されます。有害物質使用特定施設と一連の生産プロセスを構成していない資材置き場や倉庫は、おそれの少ない土地に該当します。
参考)https://www.eic.or.jp/qa/?act=viewamp;serial=10462

自動車整備工場で注意すべき土壌汚染物質とリスク管理

自動車整備工場では、ベンゼンと鉛による土壌汚染が最も多く発生します。ベンゼンはガソリンに含まれており、給油タンクに残っているガソリンが土壌に漏れると汚染の原因となります。1996年からガソリンに含まれるベンゼンの規制が始まり、2000年には体積比1%以下に制限されましたが、依然として注意が必要です。​
鉛はガソリンにも含まれており、自動車のバッテリーにも使用されています。廃棄するバッテリーを適切に処分しないと、内部に残った鉛が漏れて土壌汚染につながる可能性があります。
参考)自動車整備工場と土壌汚染~土壌汚染が見つかりやすい自動車整備…

ふっ素はブレーキオイルやエンジンオイルに含まれており、これらのオイルが土壌に漏えいすると汚染の原因となります。自動車整備では各種パーツの取替えなどの作業があるため、廃棄パーツを適切に処分しないと内部に残ったオイルが漏れるリスクがあります。​
六価クロムや水銀も自動車整備工場で基準値を超えることがある物質です。特にベンゼンは揮発性が高く、コンクリートを透過してしまうため、ガソリンが漏れた際に適切な処置を行わないと地下まで浸透してしまいます。​
自動車整備工場を解体する場合や他の用途に転用する場合には土壌汚染の調査が必要となります。継続使用の場合でも、自治体によって見解が異なることがあるため、事前に確認することが重要です。
参考)購入しようとする土地の隣りが、自動車整備工場なのですが‥土壌…

環境省「土壌汚染対策法ガイドライン」では、特定有害物質の種類や基準値、調査方法について詳しく解説されています。

 

https://www.env.go.jp/water/dojo/gl_ex-me/pdf/full.pdf
環境省「土壌汚染対策法の概要」では、法律の目的や指定区域の制度について分かりやすく説明されています。

 

https://www.env.go.jp/content/000213371.pdf

 

 


土壌汚染対策法と企業の対応: 事業者のための紛争対応・リスクコミュニケ-ションガイド