ディーゼル車のチョイ乗りで最も深刻な問題となるのが、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)への影響です。DPFは排気ガスに含まれるススを捕集し、一定量溜まると燃焼させて無害化する装置ですが、この燃焼処理には約200℃以上の高温が必要となります。
短距離走行を繰り返すチョイ乗りでは、エンジンが十分に暖まらず排気温度も上がりません。その結果、DPFに蓄積されたススを燃焼させる「DPF再生」が正常に行われず、フィルター内にススが詰まってしまいます。
具体的な症状として以下が挙げられます。
マツダのディーラーでは「調子が悪いという場合、30分くらい負荷をかけて走ることでほとんどが好調になる」と報告されており、DPF再生の重要性が実証されています。
EGR(排気ガス再循環装置)は、排気ガスを再び吸気側に戻すことで燃焼温度を下げ、NOx(窒素酸化物)の発生を抑制する重要な装置です。しかし、チョイ乗りを繰り返すことで、このEGRシステムにも深刻な問題が発生します。
チョイ乗りでエンジンが十分に暖まらない状態では、排気ガスに含まれるススが水分を含んでベタベタした状態になります。この湿ったススがEGRバルブや通路に付着し、以下のような問題を引き起こします。
特に深刻なケースでは、EGR通路の半分以上がススで塞がれてしまい、センサー類も機能しなくなることがあります。エンジンが暖まるとススが乾燥して剥がれやすくなりますが、チョイ乗りではこの自浄作用が働かないため、汚れが蓄積し続けてしまいます。
ディーゼル車でチョイ乗りを避けられない場合でも、適切な対策を講じることで故障リスクを大幅に軽減できます。最も効果的な対策は、定期的な長距離走行の実施です。
推奨される走行パターン:
メンテナンス面での対策:
国沢光宏氏は「20分以内のチョイ乗りが続くと、やがてチェックランプがついて調子が悪くなる」と指摘しており、短時間走行の連続は避けるべきです。
チョイ乗りでディーゼル車を使用する際、燃料添加剤の活用は非常に効果的な対策となります。特に清浄効果の高い添加剤は、エンジン内部に蓄積されたカーボンやススの除去に威力を発揮します。
燃料添加剤の効果:
添加剤の選択においては、ディーゼル専用の製品を選ぶことが重要です。ガソリン用の添加剤では十分な効果が期待できません。また、添加頻度についても製品の指示に従い、定期的な使用を心がけることが大切です。
ただし、添加剤はあくまで補助的な対策であり、根本的な解決には適切な走行パターンの実践が不可欠です。添加剤と長距離走行を組み合わせることで、チョイ乗りによる悪影響を最小限に抑えることができます。
ディーゼル車のチョイ乗りにおいて、季節による影響の違いを理解することは重要です。特に冬季と夏季では、エンジンの暖機時間や排気温度の上昇パターンが大きく異なります。
冬季の注意点:
夏季の注意点:
季節に応じた対策として、冬季はより長時間の暖機運転を心がけ、夏季は渋滞を避けた走行ルートの選択が効果的です。また、季節の変わり目には特に注意深くエンジンの状態を観察し、異常を感じた場合は早期に専門店での点検を受けることをお勧めします。
これらの季節別対策を実践することで、年間を通じてディーゼル車を良好な状態で維持することが可能になります。