ディーゼル車の心臓部とも言えるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)は、排気ガス中の有害な粒子状物質(PM)を捕集する重要な装置です。このフィルターは、溜まったススを高温で燃焼させて除去する「再生」というプロセスを自動的に行います。
DPF再生が正常に機能するためには、以下の条件が必要です。
チョイ乗りでは、これらの条件が満たされずに再生が中断されることが頻繁に発生します。特に冬場は暖機に時間がかかるため、より深刻な問題となります。
短距離走行を繰り返すことで発生する問題は多岐にわたります。最も深刻なのは、DPF内でのススの過剰蓄積です。
主要なトラブル症状:
EGR(排気ガス再循環)システムにも深刻な影響が現れます。排気ガスを再利用するこの装置では、始動直後の水分を多く含んだ排気ガスによってPMが付着しやすくなります。流路の半分以上が詰まることもあり、センサー類の機能不全を引き起こします。
マツダのディーラーでは、調子不良の診断時に30分程度の負荷走行を実施することで、ほとんどの症状が改善されると報告されています。これは、高負荷運転によってDPF再生が促進され、EGR系統のPMも剥がれて燃焼することを示しています。
ディーゼル車を長期間良好な状態で維持するためには、計画的な運転パターンが重要です。
効果的な予防策:
DPF再生の発生間隔は一般的に150~300km程度ですが、車種や使用状況によって大きく異なります。普段短距離走行が多くても、休日に長距離ドライブを取り入れることで、DPFの自動再生機能を正常に働かせることができます。
燃料添加剤の使用も効果的な対策の一つです。特に清浄効果の高い製品を定期的に使用することで、エンジン内部のカーボン蓄積を抑制できます。
ディーゼル車特有のメンテナンス項目には、ガソリン車にはない費用が発生します。
主要なメンテナンス費用:
項目 | 費用目安 | 交換頻度 |
---|---|---|
エンジンオイル交換 | 8,000~15,000円 | 5,000km毎 |
DPF洗浄・交換 | 50,000~300,000円 | 10~15万km |
アドブルー補充 | 3,000~5,000円 | 10,000~20,000km毎 |
EGRバルブ清掃 | 20,000~40,000円 | 必要に応じて |
エンジンオイルの交換サイクルは、ガソリン車より短く設定されています。DPF再生時に軽油がオイルに混入する「燃料希釈」現象により、オイルが薄くなってしまうためです。マツダの説明書では、オイルレベルゲージの×印まで量が増えた場合は即座に交換が必要と記載されています。
ディーゼル車には、一般的にあまり知られていない特有のリスクが存在します。
意外なリスク要因:
マツダのディーゼル車では、ガス欠寸前になると自動的に疑似ガス欠状態となり、トラブルを防ぐ機能が搭載されています。しかし、他メーカーでは同様の機能がない場合もあるため、注意が必要です。
また、街乗り中心の使用では、ディーゼル車の最大のメリットである燃費の良さが大幅にスポイルされます。DPF再生の頻度が増加し、一時的とはいえ燃費が大幅に悪化するためです。
適切な車種選択の指針:
これらの特性を理解した上で、自分の使用パターンに最適なパワーユニットを選択することが、長期的な満足度と経済性の両立につながります。