琵琶湖西縦貫道路は、木之本インターチェンジから名神高速道路京都東ICまでを結ぶ延長約80kmの地域高規格道路です。この道路は国道161号のバイパス道路として機能し、区間の大半を占める琵琶湖西岸部全体が湖西道路と呼ばれています。
1994年12月に国道161号を含む区間が地域高規格道路「琵琶湖西縦貫道路」の計画路線として指定を受けました。この道路の整備により、北近畿・湖西地域と京阪神圏・大津市中心部との連携が強化され、観光面などで地域活性化が期待されています。
北陸・若狭方面と近畿(京阪神)を琵琶湖西岸を経由する重要な路線であり、西近江路とも呼ばれています。京都から敦賀まで、琵琶湖東岸を経由するより25kmあまり距離が短く、NEXCO中日本によると、京都東ICと敦賀ICまで、名神高速道路や北陸自動車道を経由するより所要時間が10分短縮できるとされています。
湖西バイパスの渋滞は休日に限らず、平日でも朝夕の通勤時間帯や交通量が増す時間帯に毎日のように発生しています。この渋滞の主な原因は、湖西道路の「高低差」にあります。
湖西バイパスは湖西の山沿いを通って作られており、琵琶湖沿岸と比良山系との間の狭いゾーンに、なるべくカーブを少なく直線的に道を作ろうとした結果、横方向のカーブは少ない反面、上下方向の高低差が生まれる結果となりました。
長い直線でスピードの出る下り坂があり、その先に上り坂があるため、ドライバーは下り坂から上り坂に変わったことに気づかず、アクセルを踏むのが遅れ、そこで速度が落ちます。この状態で車の台数が増えてくると、どうしても自然渋滞が発生してしまうのです。
湖西バイパスの中で最もよく渋滞が発生するのは「雄琴インター」と「坂本北インター」の間にある坂道です。この区間では、2~3時間の渋滞は覚悟しなければならない状況が頻繁に発生しています。
現在、湖西道路で4車線化が進んでいるのは、大津市の坂本北IC~真野IC間6.6kmです。南側で接続する西大津バイパスはすでに4車線ですが、北行きが坂本北ICの手前で2車線から1車線に絞られるため渋滞を引き起こしています。また、南行きも仰木雄琴ICを先頭にやはり渋滞が多発しています。
工事は2025年秋の完成を目指して進められており、橋脚はほぼ完成済みの状態です。この4車線化により、長年の懸案だった渋滞問題の大幅な改善が期待されています。
西大津バイパス(坂本北IC~下阪本ランプ間)では、4車線整備後の死傷事故件数が28件/6ヶ月と、整備前の37件/6ヶ月から大幅に減少しており、交通安全の確保にも大きく貢献しています。
工事費については、当初想定から大幅に増額されており、遮音壁の追加施工による35億円の増額、橋梁基礎形式の見直しによる12億円の増額、地盤改良工の追加による24億円の増額により、全体事業費は160億円となっています。
琵琶湖西縦貫道路の北部では、湖北バイパス(延長10.8km)と小松拡幅(延長6.5km)の整備が進められています。これらの区間も地域高規格道路「琵琶湖西縦貫道路」の一部として、湖西地域の幹線道路ネットワークを強化する重要な役割を担っています。
小松拡幅事業では、2024年12月17日に「小松拡幅 13工区」の都市計画変更が発表され、環境影響評価書の縦覧が開始されました。国道161号改良事業の中で、未確定だった一部のルートが確定した形となります。
北小松地区までは2025年秋に開通予定となっており、「北小松トンネル」も貫通済みです。これにより、小松バイパスからさらに北へ延伸していく計画が着実に進行しています。
湖北バイパスについても、高島市境付近の「未整備区間」の工事が進んでおり、全線開通に向けて着実に歩みを進めています。
琵琶湖西縦貫道路の整備は、単なる交通渋滞の解消にとどまらず、地域経済に大きな波及効果をもたらしています。地域の運送事業者からは、湖西道路の無料化を期に、西大津バイパスを積極的に利用するようになったという声が聞かれています。
4車線化されたことで、「とても走りやすくなりました。速い車がいる場合でも抜かしてもらえますし、また、ミニバイクや自転車との並走もありませんので、安全安心に運転することができます」といったドライバーの声も多く寄せられています。
物流を担う事業用トラックの安全運行や輸送品質の向上にもつながっており、滋賀県トラック協会の担当者は、この道路整備の効果を高く評価しています。
将来的には、京都から敦賀まで「無料でほぼ信号ゼロ」の高規格道路が完成する予定で、これにより北陸最短ルートとしての機能がさらに強化されることになります。米原経由よりもはるかにショートカットとなるため、長距離ドライバーにとって非常に魅力的なルートとなることが期待されています。
観光面でも大きな効果が期待されており、北近畿・湖西地域と京阪神圏・大津市中心部との連携強化により、地域活性化が促進されると考えられています。特に琵琶湖西岸の観光地へのアクセス向上により、観光客の増加と地域経済の活性化が見込まれています。
交通安全面でも顕著な改善が見られており、4車線化により追突事故が減少し、事故発生時の通行規制についても、2車線から4車線に整備されたことで、全車線が通行止めになる可能性が低くなっています。これにより、道路利用者の安全性と利便性が大幅に向上しています。
琵琶湖西縦貫道路の整備は、交通渋滞の解消、交通安全の確保、地域経済の活性化、観光振興など、多方面にわたって大きな効果をもたらす重要なプロジェクトとして、今後も注目され続けることでしょう。