アウトインアウトを完璧に守ると、公道では逆に事故リスクが3倍以上になります。
アウトインアウトとは、コーナーを走行する際に「コース外側(アウト)→コース内側(イン)→コース外側(アウト)」という順序でラインを取る、モータースポーツの基本的なコーナリング技術です。この概念はF1やツーリングカーレースはもちろん、バイクのサーキット走行、さらにはカートに至るまで、すべての競技カテゴリで共通して使われる走行理論の根幹となっています。
なぜこのラインが有効なのか。それは、コーナーを「最大半径の円弧」として捉えることで、速度を落とさずに曲がれる距離を稼ぐからです。コーナーの入口でコース幅いっぱいの外側(アウト)からスタートし、コーナーの頂点付近(クリッピングポイント)で内側(イン)に寄せ、コーナー出口で再び外側(アウト)へ向かうことで、実際の旋回半径が大きくなります。半径が大きいほど、同じ遠心力でも速いスピードを維持できます。これが基本です。
「クリッピングポイント」とはコーナーの頂点のことで、インに最も近づく瞬間の地点を指します。ここを通過するタイミングや正確な位置が、コーナリングの成否を決定的に左右します。早すぎると出口でアウトにはみ出し、遅すぎると立ち上がり加速が遅れます。つまりクリッピングポイントの設定が肝心です。
物理的に説明すると、遠心力は速度の2乗に比例し、旋回半径に反比例します。半径を2倍にすれば、同じ遠心力でも速度を約1.4倍(√2倍)にできる計算になります。これは体感としても大きく、コーナリング中のGの減少や、タイヤへの横方向の負荷軽減につながります。
クリッピングポイントの位置は「コーナーのどこに頂点を置くか」によって、走行ラインの質が根本から変わります。これは単純に「コーナーの真ん中」ではなく、コーナーの形状や続くコース構成によって最適な位置が異なります。重要ですね。
一般的なコーナーでは、クリッピングポイントはコーナーの出口側、つまり「遅めのクリップ(レイトクリップ)」が有利とされています。入口で少し我慢してイン側に近づく時機を遅らせることで、出口での立ち上がり加速を最大化できます。全開加速が始まる地点を早めることが最終的なラップタイム短縮に貢献するからです。つまり「我慢して遅めにイン」が原則です。
逆に「早めのクリップ(アーリークリップ)」は入口でいち早くイン側に寄せるラインですが、出口でコースをはみ出しやすくなるリスクがあります。初心者がやりがちなミスであり、インに早く寄りすぎて出口でアウトにはらむパターンは典型的な失敗例です。これは痛いですね。
コーナーを見極める実践的な方法として、サーキット走行に慣れているドライバーは「コーナーの出口が見えてから曲がり始める」意識を持っています。出口が見えない状態でアクセルを開けると、出口でコースを外れるリスクが高まるからです。安全確認と走行ラインの精度向上を両立する、重要な習慣です。
複合コーナー(S字など)の場合は単純なアウトインアウトが使えないケースもあります。前後のコーナーのつながりを考慮し、次のコーナーへのラインを優先して前のコーナーのラインを犠牲にすることも、上級テクニックとして知られています。コーナー単体ではなく、コース全体の流れで判断することが大切です。
バイクにおけるアウトインアウトは、四輪車と同じ基本理論を持ちながら、車体の特性上いくつかの重要な違いがあります。バイクはコーナリング中にバンク角(車体の傾き)を使って曲がるため、ラインの取り方と荷重移動の連動が四輪よりも繊細です。これだけは覚えておけばOKです。
バイクでアウトインアウトを実践する場合、アウト側からの進入でハンドルを起こした状態を維持しながらゆっくりバンクを始め、クリッピングポイントで最大バンク角を迎え、出口に向けてバンクを戻しながら加速する、という一連の動作が求められます。特に公道では路面の荒れや砂、マンホールなど予測不能な要素が多いため、サーキットと同じラインで走ることは危険です。
バイクのサーキット走行において注目すべきデータとして、MotoGPレベルのライダーはコーナリング中に最大65度前後のバンク角をつけることが知られています。この際の走行ラインはアウトインアウトを基本としながらも、コーナーごとに数センチ単位でラインを調整しています。プロと一般ライダーの差はまさにこの精度にあります。意外ですね。
四輪車との最大の違いは「旋回時のタイヤ接地面積」です。バイクはバンク角が深くなるほど接地面積が変化し、グリップの限界も変わります。そのためバイクのクリッピングポイント設定は四輪以上に「体感フィードバック」への依存度が高く、習熟に時間がかかります。バイクでのアウトインアウトマスターには、サーキット走行会への参加が最短ルートです。
日本のライダー向けセーフティライディングを提供するMSF(モーターサイクルセーフティファウンデーション)日本版関連情報
サーキットで正解のラインが、公道では違法かつ危険です。これは多くのドライバー・ライダーが見落としがちな、非常に重要な事実です。
アウトインアウトをそのまま公道で実践した場合、コーナー入口でアウト側(センターライン寄り)から進入するため、対向車線にはみ出すリスクが発生します。日本の道路交通法では、センターラインをオーバーすることは「右側通行違反」にあたり、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第17条)が科される可能性があります。知らないと損します。
さらに対向車との衝突事故につながった場合、過失割合の評価にも影響します。センターラインオーバーを伴う事故では、加害者側の過失割合が大きく認定されるのが一般的で、保険対応や損害賠償においても不利な状況になります。金銭的・法的ダメージが同時に発生します。
公道での正しいコーナリングは「自分の車線内で収まるライン」が絶対条件です。コーナー手前で適切に速度を落とし、左コーナーでは左側に寄せ、右コーナーでは中央寄りで進入する、車線内アウトインアウト(縮小版)が安全かつ合法的な走り方です。これが公道の原則です。
スポーツ走行を楽しみたい場合は、必ずサーキットや走行会の場を利用することをすすめします。日本国内には富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、筑波サーキットをはじめ、地方の小規模サーキットを含めると50か所以上の走行施設があります。月1回程度の走行会参加で、公道リスクゼロの環境でアウトインアウトを練習できます。
富士スピードウェイ公式サイト:走行会・スポーツ走行の日程や申し込み方法が確認できます
アウトインアウトを頭で理解していても、実際の走行で再現するのは別の話です。初心者が最もよく陥るミスは「入口でイン側に寄るのが早すぎる(アーリーターンイン)」パターンです。コーナーの入口でアウト側を保てず、すぐにハンドルを切り込んでしまう。これは習慣と視線の問題です。
視線の使い方が改善の第一歩です。コーナーに差し掛かった際、視線を「コーナーの先・出口」に向けることで、自然とラインが遅くなり、クリッピングポイントも後ろに設定されやすくなります。視線は常に1〜2秒先(速度が60km/hなら約17〜33m先)を見ることが基本です。
練習順序としては、まず低速(サーキットなら同乗走行、またはカート)でラインのイメージを身体に覚えさせることが効率的です。カートは車体が低く、ラインのズレが直接タイムに反映されるため、アウトインアウトの練習に非常に優れた教材です。全日本カート選手権出身のドライバーが多いのも、この基礎力の高さが理由です。これは使えそうです。
ドライビングシミュレーターの活用も有効です。グランツーリスモシリーズ(PlayStation)では、実際のサーキット(鈴鹿、富士など)のレイアウトが再現されており、理想ラインの視覚的フィードバックを受けながら走行練習ができます。1本のソフトで数百円〜数千円の投資で、無数の走行シミュレーションが可能です。
上達を加速させる方法のひとつとして、車載カメラ(ドライブレコーダーやアクションカム)で自分の走行を記録し、後から確認する方法があります。GoPro等で撮影したオンボード映像を見返すことで、クリッピングポイントへの到達タイミングや、アウト側の使い方が客観的に把握できます。セルフコーチングとして非常に効果的です。
JAF(日本自動車連盟):コーナリングの基礎知識と安全走行に関する公式解説ページ
基本的なアウトインアウトをマスターしたあとは、状況に応じたラインの応用が競技力向上のカギになります。特にレース中の「追い抜き」「ブロックライン」「コンビネーションコーナー」の3場面では、教科書通りのラインを捨てる判断が求められることがあります。
追い抜きの場面では、前車のアウトインアウトラインの「アウト側の隙間」に自車を入れることで、イン側を先行させて追い越しを図る「インへの飛び込み」が使われます。ただしこの際、クリッピングポイントが通常より手前(アーリークリップ)になるため、出口でのオーバーランリスクが高まります。ブレーキングポイントを10〜15m手前に設定し直す計算が必要です。
逆に「ブロックライン」は、前を走るドライバーが後続からの追い抜きを防ぐため、意図的にインに寄ってアウト側を封じるラインです。この場合コーナリング速度はやや犠牲になりますが、順位を守るための戦略として正当な技術です。F1では「1回のラインチェンジのみ許可」というFIAルールが存在するほど、ブロックラインは競技において重要な駆け引きです。
コンビネーションコーナー(S字やシケイン)では、前述のとおり単独コーナーでの最適ラインよりも「次のコーナーへの準備」を優先します。具体的には、最初のコーナーでやや犠牲のある走りをしてでも、次のコーナー入口でアウト側を確保できる位置に車を持ってくることが正解です。全体最適が条件です。
タイヤの摩耗や燃料残量によってもラインを変える必要があります。タイヤが消耗した状態ではグリップが落ちるため、コーナリング速度を下げ、クリッピングポイントをさらに遅らせる(レイトクリップ側に調整する)ことで、スピンリスクを管理します。レースの後半戦ではタイヤ管理が順位を左右するため、ラインの微調整が重要なスキルとなります。
FIA(国際自動車連盟)公式レギュレーションページ:追い越しやブロックに関する競技規則の原文が確認できます(英語)

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