2022年にデザインディレクターのRoman Miah氏とAvante Design社が公開したR36スカイラインGT-Rのレンダリング画像は、単なるCGに留まらず、現在実車化が進行している。このプロジェクトは「Artisan GT-R」と呼ばれ、ドイツのハノーバーにある工場でR35型GT-Rをベースに製作されている。
製作過程では、カーボンファイバー製のボディパネルを採用することで軽量化と高剛性を実現し、見た目の印象も大幅に変更される。特に注目すべきは、R34型を彷彿とさせるヘッドライトとテールライトの採用で、これによりR36らしさが際立つデザインとなっている。
最新の進捗状況として、2024年11月時点でカーボン製のドア、サイドシル、フロントウィングが既に取り付けられており、近日中にリアクォーターパネル、その後フロントバンパー、ヘッドライト、フード、ボンネットが順次取り付けられる予定となっている。
Artisan GT-Rには「トラックパッケージ」と「アルティメットパッケージ」の2つの仕様が用意されている。トラックパッケージでは、インタークーラーや燃料ポンプの交換により、ベース車両より250馬力高い最大出力800馬力を発生する。
一方、アルティメットパッケージはより過激な仕様となっており、エンジン排気量を4.1リッターにアップし、大型ローラーベアリングターボの採用により、ベース車両より450馬力高い最大出力1000馬力を実現する。このパッケージには、ドイツのビルシュタイン製サスペンションとイギリスのアルコン製ビッグブレーキパッケージも装備される。
興味深いことに、このエンジンチューニングは単なるパワーアップに留まらず、ギアボックスのリビルドや排気系の見直し、エアロダイナミクスの改良も含まれており、総合的なパフォーマンス向上が図られている。
内装面でも大幅な変更が施されており、カーボンファイバーパネルとアルカンターラレザーを組み合わせた高級感のある仕上がりとなっている。シートはRECARO製のオリジナルレーシングタイプに変更され、ハンドルやシフトノブも全て新デザインのものに交換される。
特筆すべきは、インパネ中央に大型ディスプレイが新たに搭載される点で、これはオリジナルのR35には存在しない装備となっている。この大型ディスプレイの搭載により、現代的なインフォテインメント機能の充実が期待される。
ボディカラーは青、紫、白、黒など10色が用意されており、購入者の好みに応じて選択可能となっている。カーボンファイバー製ボディパネルの採用により、軽量化だけでなく、視覚的にもよりスポーティーな印象を与える仕上がりとなっている。
現在話題となっているArtisan GT-Rは日産公式のモデルではないが、過去に日産の海外法人がこのSNS投稿をシェアしたことがあり、公式も注目するプロジェクトとなっている。しかし、日産公式の次期GT-R(R36)に関しては、2025年3月にR35型GT-Rの新規注文受付が終了したものの、後継モデルに関する正式なアナウンスは行われていない。
日産の経営状況を考慮すると、GT-Rのようなスポーツカーの開発は困難な状況にあるとされている。しかし、次期CEOイヴァン・エスピノーサ氏の「日産としてはGT-Rのようなスペシャルなモデルは諦めていない」という発言もあり、何らかの形でGT-Rが復活する可能性は残されている。
過去の例を見ると、GT-Rは2度の生産終了を経験しており、前回は2002年にスカイラインGT-R(BNR34型)が生産終了してから5年の空白期間を経て、2007年にR35型GT-Rが登場した。この歴史を踏まえると、R36型の登場は2030年頃になる可能性が高いと予想される。
R36スカイラインGT-Rの話題は、既存のGT-R市場にも大きな影響を与えている。R35型GT-Rの生産終了発表により、中古車市場では価格上昇の傾向が見られており、特に初期モデルや限定仕様車の価値が再評価されている。
Artisan GT-Rプロジェクトは世界限定36台という希少性から、コレクターズアイテムとしての価値も期待されている。このような限定プロジェクトは、GT-Rブランドの価値向上にも寄与すると考えられる。
また、このプロジェクトが示すR34風デザインへの回帰は、第2世代スカイラインGT-R(R32、R33、R34)の中古車市場にも影響を与えており、特にR34型の価格上昇が顕著となっている。これは、ファンの間でクラシックなGT-Rデザインへの憧憬が強いことを示している。
投資の観点から見ると、GT-Rシリーズは日本の自動車文化を代表するアイコンとして、長期的な価値保持が期待される車種である。特に、電動化が進む自動車業界において、内燃機関を搭載した最後の世代として、歴史的価値が高まる可能性がある。