ウッドパネル車の歴史は1940年代のアメリカ車にまで遡ります。マーキュリーのシリーズ79MやプリムスP10といった初期のモデルから、ナッシュ、フォード、クライスラーなど、メーカーの枠を超えて採用されていました。
アメリカでウッドパネルが愛された理由は、雄大な自然の中でも映えるラグジュアリーな外観にありました。特にステーションワゴンやSUVで多く採用され、アウトドアライフを楽しむアメリカ人の生活スタイルと完璧にマッチしていたのです。
興味深いことに、ウッドパネルの多くはデカール(シールの一種)でしたが、中には本物の木の板を貼り付けているモデルも存在していました。この本物志向が、ウッドパネル車の特別感を演出する重要な要素となっていました。
1970年代から90年代にかけて、日本でも外板をウッド調にしたモデルが登場しました。アメ車に憧れた人々やサーファーなど、自然の中でスポーツを楽しむ人たちから強い支持を受けました。
日本車で最も印象的なウッドパネル車の一つが、1980年にホンダが発売した「シビックカントリー」です。2代目シビックのライトバンをベースにしたこのステーションワゴンは、ホンダ初のステーションワゴンとして注目を集めました。
シビックカントリーの特徴的な点は、発売から最初の1500台分に木目調パネルが標準装備されていたことです。1.5リッターエンジンと5速MTの組み合わせに加え、2ペダル仕様の「ホンダマチック」も選択可能で、機能性とデザイン性を両立させていました。
日本車で本物の木材を使用したウッドパネル車は限られており、その希少性が価値を高めています。主要な車種を以下にまとめました。
トヨタ車
日産車
ホンダ車
レクサス車
これらの車種は、ヤマハがピアノ製造で培った木材加工技術を活用して製造されており、その品質は楽器レベルの精密さを誇っています。
ウッドパネル車の製造には、単なる装飾以上の高度な技術が必要です。特に日本車の場合、ヤマハが1960年代後半にトヨタ2000GT向けの本杢パネルを手掛けたことが始まりでした。
ヤマハは楽器製造で培った「墨掛けの匠」と呼ばれる技術者による木材選別技術を自動車業界に応用しました。この技術により、木目の美しさを最大限に引き出し、耐久性も確保することができるのです。
本物の木材を使用したウッドパネルは、以下の特徴を持っています。
80年代後半には、初代レクサスLS用の加飾パネル開発プロジェクトから、ヤマハのカーパーツ部門が創設されました。これにより、より多くの高級車にウッドパネルが採用されるようになったのです。
現在、ウッドパネル車は単なる懐古趣味を超えた価値を持っています。90年代リバイバルブームの影響で、当時を知らない若い世代からも「新しいデザイン」として注目されています。
ウッドパネル車の現代的価値は以下の点にあります。
コレクション価値
ファッション性
投資対象としての魅力
2022年には、米国日産が電気自動車「アリア」をベースにした「アリア サーフワゴンコンセプト」を発表しており、レトロブームも手伝って今後は自動車メーカーがウッドパネルデザインを再評価する可能性も高まっています。
特に注目すべきは、本物の木材を使用したウッドパネル車の製造技術が失われつつあることです。現在でも新車で本物のウッドパネルを採用しているのは、主に超高級車に限られており、その技術継承は貴重な文化遺産とも言えるでしょう。
ウッドパネル車は、単なる移動手段を超えた芸術品としての価値を持ち続けています。その美しい木目は、所有者に特別な満足感を与え、見る人々に深い印象を残す存在として、今後も愛され続けることでしょう。