継ぎ足し給油は、セルフガソリンスタンドで最も危険な行為の一つです。ガソリンは非常に揮発性が高く、マイナス40度という低温でも気化し、わずかな静電気でも引火する可能性があります。
継ぎ足し給油による主な危険性は以下の通りです。
実際に、軽トラの荷台に積んだガソリン携行缶への給油中に静電気から引火した事例も報告されており、継ぎ足し給油の危険性は決して軽視できません。
消防庁も「継ぎ足し給油は決して行わないように」と強く注意を呼びかけており、セルフガソリンスタンドでの禁止事項として明確に定められています。
給油機のオートストップ機能は、給油ノズルの先端にある小さな検知口を利用した精密なシステムです。この仕組みを理解することで、なぜ継ぎ足し給油が危険なのかが明確になります。
オートストップ機能の動作原理。
継ぎ足し給油では、少量ずつガソリンを注ぐため、この圧力変化を感知しにくくなります。その結果、オートストップ機能が正常に作動せず、タンクから燃料が溢れ出す危険性が高まります。
さらに、ガソリンタンクは複雑な形状をしており、上部10%の部分は熱膨張を考慮して空気層として設計されています。オートストップ機能が作動した時点で、すでに安全な満タン状態に達しているのです。
継ぎ足し給油が危険な理由の一つに、タンク内でのガソリンの挙動があります。満タン状態でさらに燃料を追加すると、予想外の現象が発生する可能性があります。
ガソリン逆流の発生メカニズム。
温度変化による体積膨張。
ガソリンの体膨張率は0.00135で、温度変化による体積増加は無視できません。例えば、40リットルのガソリンが10度の温度上昇で約0.54リットル膨張します。
朝の低温時に継ぎ足し給油を行い、昼間の気温上昇でガソリンが膨張すると、タンク容量を超えて溢れ出す危険性があります。これは車両の塗装損傷だけでなく、火災事故の原因にもなりかねません。
多くのドライバーが疑問に思うのが、「なぜフルサービスガソリンスタンドでは継ぎ足し給油が可能なのか」という点です。この違いには明確な法的根拠があります。
フルサービスガソリンスタンドの場合。
セルフガソリンスタンドの場合。
この違いにより、セルフガソリンスタンドでは継ぎ足し給油が法的に禁止されており、違反した場合は重大な事故責任を問われる可能性があります。
近年では、有人のフルサービスガソリンスタンドでも継ぎ足し給油を控える施設が増えており、安全性を最優先とする傾向が強まっています。
安全な給油を行うためには、正しい手順と注意点を理解することが重要です。以下の手順を厳格に守ることで、継ぎ足し給油の誘惑を避けることができます。
正しいセルフ給油の8ステップ。
給油中の注意事項。
オートストップ機能の最適化。
ガソリンタンクの形状によってはオートストップ機能が途中で作動することがあります。この場合、ノズルを一度奥まで差し込んでから1cm程度抜くことで、タンク内の空気を適切に排出できます。
万が一燃料が吹きこぼれた場合は、給油機近くのウエスで即座に拭き取るか、備え付けの水で洗い流すことが重要です。汚れたウエスを使用すると逆効果になるため、スタッフに交換を依頼することも大切です。
継ぎ足し給油の誘惑に負けず、オートストップ機能を信頼することが、安全なカーライフを送るための基本原則です。