トヨタ新型ミニバン「マジェスティ」は、2019年8月にタイで初公開された高級ミニバンです。このモデルは日本で販売されているグランエースのタイ版として位置づけられており、現地では法人向けの送迎車両として高い人気を誇っています。
マジェスティの最大の特徴は、その圧倒的なボディサイズにあります。全長5300mm×全幅1970mm×全高1990mmという大型ボディは、アルファードやヴェルファイアを上回る存在感を放ちます。ホイールベースは3210mmと長く、11人乗りの大容量を実現しています。
パワートレインには、最高出力163ps・最大トルク420Nmを発生する2.8リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載。6速ATとの組み合わせにより、大型ボディながら力強い走行性能を確保しています。また、バイオディーゼル燃料B20に対応し、EURO5排出ガス規制もクリアしている環境性能も注目ポイントです。
マジェスティの内装は、まさに「移動するVIPルーム」と呼ぶにふさわしい豪華仕様となっています。2列目にはマッサージ機能付きキャプテンシートを採用し、長距離移動でも疲労を軽減する工夫が施されています。バタフライヘッドレストやウッド調シートコンソールなど、細部にまでこだわった高級感あふれる装備が特徴的です。
利便性の面でも充実しており、7つのUSBポートを配置することで、乗員全員がデバイスを充電できる環境を整えています。また、サンシェードや読書灯なども標準装備され、快適な車内空間を演出しています。
2024年モデルでは、さらなる装備の充実が図られました。助手席の電動パワー調整機能が追加され、Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応する8インチタッチスクリーンも新たに搭載されています。これにより、最新のコネクティビティ機能も享受できるようになりました。
マジェスティの価格設定は、タイの高級ミニバン市場において戦略的なポジションを狙ったものとなっています。2024年モデルでは、プレミアムグレードが198万9000バーツ(約880万円)、最上級のグランデグレードが232万9000バーツ(約1035万円)で設定されています。
この価格設定の背景には、タイ市場特有の事情があります。同国ではアルファードやヴェルファイアも販売されていますが、輸入車に対する80%の関税により、価格が374万7000バーツ(約1311万円)と非常に高額になってしまいます。マジェスティは現地生産により、より手頃な価格で高級ミニバンを提供することを可能にしています。
トヨタ・モーター・タイランドの菅方道信社長は、「アルファードでは高額すぎるという事情があったため、贅沢で手頃な価格のマジェスティを新しく紹介できることを大変嬉しく思っています」とコメントしており、明確な市場戦略を示しています。
マジェスティには、トヨタの最新安全技術「Toyota Safety Sense」が標準装備されています。この安全パッケージには、衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ(PCS)、レーンディパーチャーアラート(LDA)、オートマチックハイビーム(AHB)、レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)が含まれています。
さらに、ブラインドスポットモニター(BSM)やリヤクロストラフィックアラート(RCTA)、パノラミックビューモニター(PVM)なども装備され、大型ボディでも安心して運転できる環境が整えられています。これらの安全装備は、法人利用が多いタイ市場において、ドライバーの負担軽減と乗員の安全確保に大きく貢献しています。
エアバッグシステムも充実しており、9個のSRSエアバッグを配置することで、万が一の事故時にも乗員を守る体制を構築しています。また、車両安定制御システム(VSC)も標準装備され、大型ボディでも安定した走行性能を実現しています。
マジェスティの日本導入については、業界関係者の間で大きな注目を集めています。実際に、トヨタの販社からは「高級ワゴンが登場することは間違いない」という情報も得られており、将来的な日本市場への投入が期待されています。
日本導入時の最大の課題は乗車定員の調整です。マジェスティは11人乗りですが、日本では普通免許で運転できる最大乗車定員は10名となっています。しかし、フロントシートを2名乗車にすることで、現行のハイエースワゴンと同様に対処可能とされています。
また、タイは日本と同じ左側通行のため、マジェスティは右ハンドル仕様となっており、日本導入時の改造コストを抑えられる利点があります。最小回転半径も5.5mとアルファードの5.6mよりも小さく、日本の道路事情にも適応しやすい設計となっています。
業界専門家は、日本では「グランドハイエース」として販売される可能性が高いと予想しており、トヨタの高級ミニバンラインナップにおける新たな選択肢として期待が高まっています。タイでの成功を受けて、日本市場への展開が現実味を帯びてきているのが現状です。
マジェスティの技術的基盤となっているのは、2019年に発表された海外向け新型ハイエース(300系)です。従来の日本仕様ハイエース200系とは異なり、セミボンネット化されたパッケージングとFRレイアウトを採用しており、静粛性と乗り心地の向上を実現しています。この技術革新により、商用車ベースでありながら乗用車レベルの快適性を提供することが可能になりました。