トヨタ プリウスプライムは、従来のプリウスをベースにプラグイン機能を追加したPHV(プラグインハイブリッド車)です。最大の特徴は8.8kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、従来型の約2倍の電力量を実現している点です。
システム最高出力は164kW(223PS)で、標準ハイブリッド車を20kW上回る動力性能を誇ります。EV走行時の最高速度は135km/hに設定されており、アメリカの高速道路でも十分にエンジンの助けなしで走行できる性能を持っています。
デュアルモータードライブシステムを新採用し、通常のプリウスでは発電専用として使用するモーター(ジェネレーター)にワンウェイクラッチを付加することで、より力強いEV走行を実現しています。
プリウスプライムの燃費性能は実質51km/Lという驚異的な数値を記録し、航続距離は966kmに達します。JC08モードでのEV走行距離は60km以上とされており、日常の通勤や買い物程度であればガソリンを使わずに走行することが可能です。
新型(5代目)では、満充電EV走行航続距離が従来型から50%以上延伸され、計算値でEVレンジは90km以上となる見込みです。これにより、より多くのシーンで電気自動車としての恩恵を受けることができます。
充電時間は家庭用電源(100V)で5.5時間、240V電源では2時間程度で満充電が可能です。充電出力は3.3kWに設定されており、日常使いには十分な充電速度を確保しています。
アメリカ市場でのプリウスプライムの価格は3万3100ドルで、ベースのプリウス最上級グレードに対して5000ドルの上乗せという設定になっています。この価格差は、大容量バッテリーやプラグイン機能、専用装備を考慮すると妥当な範囲と言えるでしょう。
装備面では、11.6インチのHDモニターやToyota Safety Sense Pが標準装備されています。最上級グレードにはヘッドアップディスプレイやブラインドスポット・モニターも標準装備され、先進的な運転支援機能が充実しています。
特筆すべきは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のテールゲートです。同デザインのアルミ製に比べて約40%軽量化を実現しており、PHVの重量増加を抑制する重要な役割を果たしています。
プリウスプライムには、PHVならではの独自技術が多数採用されています。最も注目すべきは、ガスインジェクション機能付きのヒートポンプ・エアコンです。EV走行時はエンジンの稼働時間が少なく、その排熱を暖房に利用しにくいため、外気中の熱をくみ上げることで効率的な暖房を実現しています。
パワーコントロールユニットの昇圧コンバーターの出力は、従来型比で約1.8倍と大幅にアップされており、より力強いモーター駆動を可能にしています。一方、1.8リッターエンジン自体の最高出力98PSや最大トルク142Nmのスペックは、ベースのプリウスと変わりません。
興味深いのは、仕向け地別の特別制御機能です。アメリカ向けには「US06」と呼ばれる急加速試験プログラム内をすべてEV走行するための制御が設定され、ヨーロッパ向けには「ゼロエミッション・ゾーン」でエンジンが始動しない「シティ・モード」が用意されています。
実際の運転感覚について、充電状態に余裕がある状況では、その走りの印象は100%電気自動車そのものです。ホテルの地下駐車場からの急な登りスロープでも、アクセルペダルを深く踏み込んでもエンジンが始動することはなく、純粋なEVの静粛性と力強さを味わうことができます。
フリーウェイでの走行でも、75mph(約120km/h)程度の流れに十分対応でき、コンクリート路盤の継ぎ目が連続する路面でもフラットな姿勢を保ちながら上質な乗り味を提供します。ワインディングロードでは低重心感覚に溢れたハンドリングが印象的で、アクセル操作に対するトルクの上乗せ感とシャープなレスポンスが楽しめます。
ただし、バッテリーの充電レベルが低下すると、ハイブリッドモードに移行して「普通のプリウス」として走行することになります。この点は、バッテリー容量とコスト、重量のバランスを考慮した現実的な「落としどころ」と評価できるでしょう。
現在、2025年モデルからカナダでは「プリウス プライム」から「プリウス プラグインハイブリッド」に名称変更されることが発表されており、PHVの普及に向けた取り組みが続いています。トヨタは持続可能な生活を送ろうとするユーザーの増加とPHEVを受け入れる環境の整備を背景に、この名称変更を決定したと説明しています。