トヨタ ハイランダーは2001年に北米市場で初代モデルが登場した3列シートSUVです。興味深いことに、初代モデルは日本でも「クルーガー」という名称で2000年から販売されていました。
初代クルーガー(ハイランダー)は、トヨタのミッドサイズSUVとして初めてカムリと同じプラットフォームを使用し、乗用車のようなハンドリングと高い乗車位置、広々とした多用途性がユーザーに受け入れられました。7年間で100万台以上が販売される成功を収めたにも関わらず、日本市場では初代のみで販売が終了しています。
現在のハイランダーは4代目となり、2019年11月に北米で販売を開始しました。このモデルはTNGA(Toyota New Global Architecture)のプラットフォームやパワートレーンを採用し、快適性や安全性を含めた基本性能、燃費性能を一段と高めています。
2018年には北米・中国・豪州・ロシアを中心に世界で年間約39万台を販売する3列シートSUVの主力モデルとして位置付けられており、その人気の高さが伺えます。
現行の4代目ハイランダーは、RAV4よりもひと回り大きな3列シート車として設計されています。具体的なボディサイズは全長4950×全幅1930×全高1730mmとなっており、RAV4の全長4600×全幅1855×全高1685mm、ハリアーの全長4740×全幅1855×全高1660mmと比較すると、その大きさが際立ちます。
パワートレーンには3.5LのV6エンジンが搭載されており、ドロドロとした低回転のサウンドを轟かせる豪快な走りが特徴です。このエンジンは初期のレスポンスよりも、モーターボートやジェットスキーをトーイングするシーンで役立つような出足の力強さを重視した特性になっています。
乗り心地については、ハリアーやRAV4に比べて柔らかい足回りが採用されており、段差やマンホールといった路面突起を踏んでも何事もなかったかのようにやり過ごせる一方で、うねりのある道を走ると上下のフワつきを感じる特性があります。
この足回りのセッティングは、平らでまっすぐな道を延々と走り続けるという北米の道路事情に最適化されたものです。
2023年2月8日、トヨタ北米法人はシカゴオートショーにて新型ミドルサイズSUV「グランドハイランダー」を世界初公開しました。このモデルはハイランダーの派生車種として、3列目の居住性をさらに拡大させたモデルとして位置付けられています。
グランドハイランダーは、日本でも販売中のハリアーやRAV4などと同じGA-Kプラットフォームを採用しており、技術的な親和性は高いと考えられます。ボディサイズは全長5116mm×全幅1989mm×全高1781mm、ホイールベース約2949mmとなっており、ハイランダーよりもさらに大型化されています。
パワートレーンには3種類が設定されており、最も注目すべきは「ハイブリッドMAXモデル」です。このモデルは排気量2.4L直列4気筒ターボエンジンとデュアルブーストハイブリッドを組み合わせ、システム総出力362hp、システムトルク542Nmを発生し、0-100km/hの加速時間は6.3秒という驚異的な性能を実現しています。
価格帯は日本円で約601万円からとなっており、プレミアムSUVとしての位置付けが明確になっています。
グランドハイランダーの世界初公開時に実施されたアンケートでは、日本国内の発売に関して多数の期待の声が寄せられました。「日本でも発売して」という声が多数あったことから、日本市場でも一定の需要があることが確認されています。
しかし、日本での発売には大きな課題があります。最も大きな問題はボディサイズです。ハイランダーの全幅1930mm、グランドハイランダーの全幅1989mmは、日本の道路事情を考慮すると「明らかにデカい」サイズとなっています。
実際に日本の道路でハイランダーを試乗したレポートでは、「狭くて信号の多い日本では、ボディサイズも含めてストレスがたまるかもしれない」という評価がなされています。一方で、「アメリカのハイウェイを流すシーンを考えたら、これこそが正解」とも評価されており、設計思想の違いが明確になっています。
もう一つの課題は、日本市場における3列シートSUVの需要です。現在、日本ではアルファードやヴェルファイアなどのミニバンが3列シート車の主流となっており、SUVタイプの3列シート車の需要は限定的です。
トヨタがハイランダーを日本市場に導入する場合、いくつかの戦略が考えられます。
まず、日本専用の小型化モデルの開発です。現在のハイランダーをベースに、全幅を1850mm程度に抑えた日本仕様を開発することで、日本の道路事情に適応させることが可能です。これは初代クルーガーが成功した要因の一つでもありました。
次に、レクサスブランドでの先行導入という戦略があります。実際に、グランドハイランダーのレクサス版として新型TXが2023年6月8日に世界初公開予定となっており、まずはプレミアムブランドで市場の反応を見る可能性があります。
また、ハイブリッド専用モデルとしての導入も考えられます。日本市場では環境性能への関心が高く、ハイランダーのハイブリッドモデルは従来比で17%の燃費向上を実現しており、日本のユーザーニーズに合致する可能性があります。
さらに、限定販売という戦略も有効です。2024年9月には米国でハイランダーの25周年記念限定モデルが2500台限定で発売されており、日本でも同様の限定販売で市場の反応を測ることが可能です。
最後に、商用・業務用途での導入も考えられます。大型の3列シートSUVは、観光業や送迎サービスなどの業務用途では需要があり、まずはこの分野から導入を開始する可能性があります。
トヨタ ハイランダーの日本発売は、技術的には十分可能ですが、市場ニーズとボディサイズの課題をクリアする必要があります。今後のトヨタの戦略と日本市場の動向に注目が集まります。