トヨタFT1コンセプトカー和製スーパーカー

トヨタが2014年に発表したFT-1コンセプトカーは、現在のGRスープラのベースとなった和製スーパーカーです。その圧倒的なデザインと性能の秘密とは?

トヨタFT1コンセプトカー詳細解説

トヨタFT-1の魅力
🚗
未来的デザイン

2000GTを彷彿とさせるロングノーズと流麗なフォルム

高性能エンジン

直列6気筒ターボエンジンで約500馬力を発生

🎮
グランツーリスモ連携

ゲーム内でも体験可能な革新的なアプローチ

トヨタFT1の誕生背景とコンセプト

トヨタFT-1は2014年の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)で初公開されたコンセプトカーです。車名の「FT」は「Future Toyota(未来のトヨタ)」を意味し、「1」は頂点を表現しています。

 

このコンセプトカーは、トヨタの米国デザイン拠点であるCalty Design Research(キャルティ)が担当し、同拠点の創立40周年記念プロジェクトとしても位置づけられました。興味深いことに、FT-1はプレイステーション用ゲーム「グランツーリスモ」とのコラボレーションも実現し、ゲーム内でも体験可能な革新的なアプローチを取りました。

 

デザインチームは、1967年に登場したトヨタ2000GTをはじめ、セリカ、スープラ、MR2、86といったトヨタスポーツカーの歴史を紐解きながら、その情熱を注ぎ込んでデザインしたといいます。

 

トヨタFT1のデザインと外観特徴

FT-1の最も印象的な特徴は、その圧倒的なロングノーズデザインです。全体的なフォルムは曲線美を強調しつつも、レースカーらしい力強さを表現しています。未来的でありながら、クラシックスポーツカーのスタイリングも取り入れており、フロント・サイドのガラスのカーブの形状はトヨタ2000GTを彷彿とさせます。

 

車体サイズは全長4,675mm、全幅1,970mm、全高1,225mmと、現行のGRスープラと比較して二回り近く大きなサイズとなっています。このサイズ感は、現在のトヨタ・レクサス車の中では最もレクサスLCに近いといわれています。

 

フロントデザインは大胆な形状のフェンダーを備え、高い運動性能を予感させます。サイドやリアには最適空力をイメージした吸排気口や可動式のリアウイングなどを装備し、デザイン性だけでなく機能性も持たせています。

 

21インチのアルミホイールの中には、6ポッドブレーキキャリパー方式のブレーキシステムが鎮座し、その存在感は圧倒的です。

 

トヨタFT1のエンジンスペックと性能

FT-1のパワートレインは、直列6気筒ターボエンジンを想定して設計されています。グランツーリスモ内でのスペックでは、最高出力493PS/7,000rpm、最大トルク58.8kgfm/3,000rpmを発生し、車両重量1,320kgと組み合わせることで、パワーウエイトレシオは2.68kg/PSという驚異的な数値を実現しています。

 

駆動方式はFR(フロントエンジン・リアドライブ)を採用し、6速トランスミッションが組み合わされています。この直列6気筒エンジンの選択理由について、Caltyのデザイナーたちは「トヨタ2000GTやスープラに通じるうえ、サウンドやフィーリングがいいから」と説明しています。

 

実際の市販車では、V6 3.0リッターターボエンジンが330馬力/40.8キロの馬力・トルクをマークするとの噂もありましたが、FT-1自体は市販化の予定はなく、あくまでデザインスタディとして位置づけられています。

 

トヨタFT1の内装とコックピット設計

FT-1のインテリアは、ドライバーに最適化されたシンプルなデザインでまとめられ、ドライビングに集中できる環境を構築しています。インパネやドアトリムにはカーボンコンポジット素材を用い、軽量化にも貢献しています。

 

センターコンソールやシートはブラックレザー素材に赤ステッチを施し、フルアルミのペダルを採用するなど、プレミアムなしつらえにもこだわっています。シートは斬新な形状に目がいきがちですが、実際に腰を下ろした際のホールド感とタイト感が印象的です。

 

特筆すべきは、カラー表示が可能なヘッドアップディスプレイ(HUD)を搭載していることです。これにより、ドライバーの視線の動きを最小化し、操作性を向上させることができます。

 

センター部には各種作動用のトグルスイッチが配置されており、市販バージョンでは採用されていませんが、タッチパネルではなく物理的なスイッチによる操作感を重視した設計となっています。

 

トヨタFT1とGRスープラの関係性と影響

FT-1は現在のGRスープラのデザインベースとなったことで知られていますが、コンセプトカーであるFT-1の方が制約がないため、より伸びやかなプロポーションを実現しています。

 

当初、このコンセプトカーがスープラを想定していなかったとしても、世間の目としてはスープラの復活を予感させた要因として、随所にトヨタが世に出してきたトヨタらしいスポーツカーの要素が織り込まれていたことが挙げられます。特にサイドのシルエットはトヨタ2000GTを彷彿とさせるものとなっています。

 

フロントフェイス周りでは、特にライトユニット、グリルの開口、リップスポイラーの形状が現行のスープラに色濃く引き継がれています。ただし、ダクトがしっかり開口されていたり、ライトユニットがひとつひとつ分離したものとなっているなど、コンセプトを完全に再現しきれていない部分もあります。

 

実際に富士スピードウェイで開催されたスープラの全国オフ会では、FT-1の実車が展示され、現行スープラとの比較が可能でした。その際、FT-1の圧倒的な迫力とサイズ感は、まさにフラッグシップといって差支えのないフォルムを見せつけました。

 

FT-1の存在は、トヨタのスポーツカー開発における重要な転換点となり、その後のGRブランド展開やスポーツカー戦略に大きな影響を与えたといえるでしょう。現在でもSNSなどで「ヤバすぎる」「あっぱれ」といったコメントが寄せられ続けており、その魅力は色褪せることがありません。