トラクションコントロール(TRC・TCS)は、滑りやすい路面での発進時や加速時にタイヤの空転を抑える安全装備です。速度センサーがタイヤの回転数を常時監視しており、空転を検知すると自動的にエンジン出力を抑制します。具体的には燃料供給の制限、点火タイミングの調整、スロットルの制御などを行い、駆動力を路面に確実に伝えられるよう制御しています。
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この機能により雨天や凍結路面など摩擦係数が低い路面でも、運転技術に関わらず安定した走行が可能になります。アクセル操作が多少雑でもシステムが自動的に介入してくれるため、ドライバーの運転負担を軽減し車体の挙動安定に貢献するアクティブセーフティ機能として普及しています。
参考)トラクションコントロールシステム - Wikipedia
近年の車両では、ABS(アンチロックブレーキシステム)と組み合わせて各車輪の回転速度を制御し、横滑り防止装置と統合した高度な制御を行うシステムが主流となっています。
雪道や泥濘地でスタックした際、トラクションコントロールをオフにすることが脱出の鍵となります。通常時は安全のためエンジン出力を抑制するシステムですが、新雪やぬかるみから脱出する際には、この制御が逆効果になる場合があります。アクセルを踏み込んでもエンジン出力が上がらず、タイヤが十分に回転せずスタックから抜け出せないのです。
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TRC OFFスイッチを押してシステムを停止させると、エンジン出力の制限がなくなり、タイヤへ駆動力を十分に伝えられるようになります。タイヤを意図的に空転させながら勢いをつけることで、雪や泥から脱出できる可能性が高まります。
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実際の使用例として、新雪が降り積もった坂道でTRCが作動して登れなかった車両が、TRC OFFスイッチを押すことで脱出に成功したケースが報告されています。特に魔の右コーナー登りなど難所で効果を発揮します。
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サーキットやダートラなどスポーツ走行においても、トラクションコントロールをオフにすることで走行性能が向上します。通常状態ではタイヤの空転を抑制するため、ドリフト走行など車の挙動を自由にコントロールする走行が困難になります。TRC OFFにすることでタイヤが空転できる状態、つまり車の挙動が自由になり激しいスポーツ走行が可能になるのです。
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特にドリフト走行ではタイヤを横滑りさせながら走る必要があり、トラクションコントロールが生きている状態では非常に困難です。システムをオフにすることで、ドライバーの意図通りの挙動を引き出せます。
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ただし、スポーツ走行時にオフにする場合は運転技術が求められます。ハンドルを切っている角度に合わせてアクセル開度を細かく調整する必要があり、ハンドルを少しでも切っているときはアクセルを緩める必要があります。この繊細なペダルワークとハンドル操作の習得が重要です。
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トラクションコントロールをオフにすることで得られるメリットがある一方、重要なデメリットと注意点も存在します。最も大きなリスクは、悪天候や複雑な道路状況での車両安定性が大幅に低下することです。システムをオフにすると、雪や泥などの滑りやすい路面でホイールスピンや横滑りを防ぐ制御メカニズムが失われます。
参考)トラクション コントロール システム (TCS) をオフにし…
その結果、車両はトラクション損失を受けやすくなり、フィッシュテール(後部の横滑り)、横転、制御不能などの危険な状態に陥る可能性が高まります。TRCを停止した状態では、システムが装備されていない車と同じ走行性能になるため、滑りやすい路面での走行では車両の挙動が安定しにくくなります。
参考)https://www2.mazda.co.jp/carlife/owner/manual/cx-5/kf/ekhi/contents/03140102.html
解除後の走行では、アクセルワークやハンドル操作に十分な注意が必要です。タイヤが過度にスリップすることがあるため、特に滑りやすい路面では過剰な加速を避け、車両の挙動を常に把握することが求められます。
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トラクションコントロールをオフにすべき適切な使用場面は、主に緊急時のピンチ脱出に限定されます。具体的には雪道でのスタック、道路に積もった泥にハマった場合、ぬかるみからの脱出時などです。通常の走行では必ずオンにしたまま安全運転に務めるべきで、日常的に訪れるシチュエーションではありません。
操作方法としては、車内にある「TRC OFF」と表記されたスイッチ、またはクルマのイラストの下に波線が2本程度描かれているスイッチを押します。スイッチを押すとメーター内にTCS OFF表示灯が点灯し、システムが停止されたことが確認できます。
さらに効果的な操作として、ブレーキを踏んだ状態でTRC OFFスイッチを長押しすることで、メーター内に黄色くクルマのイラストが点灯します。1度押しよりも長押しの方が電子制御のカット率が高くなるため、より困難な状況からの脱出に有効です。なお、TCSを停止した状態でエンジンを停止すると、次回エンジン始動時には自動的にTCSは作動可能な状態に戻ります。
参考)https://www2.mazda.co.jp/carlife/owner/manual/cx-3/dk/edsa/contents/03140101.html
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