駐車場でトナラーが発生する主な原因の一つは、ドライバーの無意識的な行動パターンにあります。臨床心理士によると、人間には「何もない空間より、集まった場所に安心を感じる習性」があるとされています。ガラガラの駐車場でも、すでに駐車している車を目印として、その隣を選んでしまうケースが多いのです。
特に駐車が苦手なドライバーは、隣の車を目安にして駐車位置を判断しようとします。両側が空いている広い枠よりも、片側に車がある状況の方が、相対的な距離感が分かりやすく感じられるためです。高齢のドライバーに顕著で、ほぼ男性によるトナラーが多いという報告もあります。駐車枠の線を見分けるのが難しくなる加齢とも関係がありそうです。
意識的にトナラーをするドライバーには、むしろ「ドアパンチのリスク回避」という防御的な心理が働いている場合があります。すでに停まっている車を確認してから駐車することで、その間に誰かが来てドアパンチされるリスクを低減させようとする考え方です。
また高級車や綺麗に整備された車の隣に停める傾向も見られます。「この車の所有者は運転が上手で、丁寧だから安全だろう」という無意識の判断が働いており、被害者側が感じる不快感とは裏腹に、加害側には自分の車を守りたいという心理があるのです。ただし被害者から見ると、ドアパンチの危険性が増すため、結果的にトラブルに発展することもあります。
心理学の観点から見ると、トナラーが不快に感じられる根本的な理由は「パーソナルスペースの侵害」です。コロナ禍によって人々のソーシャルディスタンスの意識が急速に高まり、周囲が空いているほどパーソナルスペースの範囲が広がるようになりました。
ガラガラの駐車場で隣に停められることは、個人的な領域を侵害されるという心理的な抵抗感につながります。この不快感は、電車やカフェでの同様の行為と同じメカニズムで発生します。わざわざ隣に来る行為自体が、相手の気持ちを考慮していないと受け取られやすく、特に女性ドライバーからは「気持ち悪い」という感情が強く発生しやすいのです。
トナラーを避けるための対策として、複数の有効な方法が提唱されています。最も効果的とされるのは「斜めに駐車する」ことです。一見、運転が下手そうに見える駐車をすることで、他のドライバーが「接触のリスクがある」と判断し、自然と隣への駐車を避けるようになります。
入口から遠い場所を選ぶのも一つの戦略ですが、一長一短があります。入口が近いと通路が狭く、駐車が苦手なドライバーは避ける傾向がありますが、交通量が多く全体的にはトナラーが多くなる可能性があります。柱や壁の近くに駐車するのは物理的な障害物となり、トナラーしにくい状況を作り出す効果があります。
また一部のドライバー間には、同じ車種(例えばスバル車など)の隣に停めるという暗黙の了解のようなものが生まれており、これは「同じ趣味を持つドライバー同士の連帯感」として捉えられることもあります。
トナラーの問題を理解する上で重要なのは、する側と受ける側の心理的ギャップの存在です。多くのトナラーは悪意がなく、むしろ自分の車の安全を考慮した行動であったり、無意識の習性から来ています。一方で被害者は「ドアを開けにくい」「ドアパンチが怖い」といった実害を感じています。
この心理的ギャップを埋めるためには、双方がお互いの視点を理解することが重要です。トナラー側が「不快に思う人が多い」と認識することで、より配慮のある駐車選択ができるようになる可能性があります。同時に被害者側も「多くの場合、悪意がない」と理解することで、不必要な怒りやストレスを軽減できるでしょう。
気持ち悪いと感じるのは当然の反応ですが、その反応の背景にある複数の要因を理解することが、駐車場でのより良い共存につながるのです。
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