土地改良法第3条に規定される資格者(以下「3条資格者」)とは、土地改良事業に参加する資格を有する者のことを指します。具体的には、土地改良区の組合員となり、事業に必要な経費を負担する立場にある人々です。この制度は、農業生産基盤の整備を効率的に進めるための法的枠組みとして機能しています。
参考)土地改良区の設立手続及び審査等の要領について(平成28年4月…
3条資格者は農用地の場合、原則として耕作者等が該当し、農用地以外の土地については所有者が資格を持ちます。土地改良区の地区内にある土地について3条資格を有する者は、自動的にその土地改良区の組合員となることが法律で定められています。この仕組みにより、土地改良事業の受益者が適切に事業運営に参画し、費用負担の責任を果たすことができるのです。
参考)e-Gov 法令検索
土地改良事業を新たに開始する際には、3条資格者が15人以上集まることが設立要件とされており、確実な有資格者が申請人となるべきとされています。資格者の確定は、土地改良区の運営や事業実施において極めて重要な手続きです。
参考)https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/763/tkseturitu280401.pdf
農用地における3条資格者の要件は、所有権の形態によって異なります。所有権に基づいて耕作又は養畜の業務を営む者は、原則として3条資格者となります。「耕作又は養畜の業務を営む者」とは、当該業務の損益が自己に帰着する者を指し、単なる労務者は含まれません。
参考)土地改良法 第3条(土地改良事業に参加する資格)|Lawz…
所有権以外の権原(利用権設定など)に基づき耕作する場合、その耕作者が土地改良法第3条第1項第2号により3条資格者となります。この場合、土地の実際の利用者が資格を持つことで、事業の実効性が高まります。一家族内で事実上の耕作者が複数いる場合や、経営主体と実際の耕作者が異なる場合は、損益の帰着先を基準に判断されます。
参考)http://midorinet-kohoku.or.jp/files/reiwasannkasikakusyakoutaikinyuurei.pdf
ただし例外として、所有権以外の権原で耕作されている農用地について、所有者が3条資格者になろうとする場合は農業委員会の承認により資格を得ることができます。この制度は「資格交替」と呼ばれ、特定の条件下で所有者が組合員としての権利義務を持つことを可能にしています。
参考)東広島市農業委員会土地改良事業参加資格交替承認事務処理要領
農用地以外の土地については、原則として所有者が3条資格者となります。これは農用地とは異なり、耕作という概念が適用されないためです。ただし、法第3条第8項に規定する特定用途用地の所有者は、3条資格者になることができないという重要な例外があります。
参考)土地改良法|条文|法令リード
特定用途用地とは、土地改良事業の施行によって農業上の利用の増進を図ることが相当でないと認められる土地を指します。具体的には、住宅地や駐車場など農業以外の用途に供されている土地が該当する可能性があります。この規定により、事業の受益が見込めない土地の所有者に不当な負担を課すことを防いでいます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/sutomane/attach/pdf/index-12.pdf
農用地以外の土地で、使用及び収益をする者(借地人など)が3条資格者になろうとする場合は、所有者の同意を得て農業委員会に申し出ることにより資格を得ることができます。この手続きにより、実際に土地を利用している者が事業に参加する道が開かれています。土地改良区を設立する際には、これらの手続きを速やかに完了させることが求められます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/attach/pdf/t0000958-2.pdf
土地改良法第11条の規定により、土地改良区の地区内にある土地につき3条資格を有する者は、その土地改良区の組合員となります。この組合員資格は自動的に発生するものであり、本人の同意の有無にかかわらず、3条資格者は組合員としての権利義務を負うことになります。
参考)土地所有者が土地改良事業に参加しない場合、費用の負担を免れる…
組合員は土地改良区の運営に参加する権利を持ち、各々一個の議決権及び選挙権を有します。これにより、事業の方針決定や役員の選出に関与することができます。一方で、組合員は土地改良事業の実施に必要な経費(賦課金)を負担する義務があります。この費用負担は、事業による利益を受ける者が相応の負担をするという受益者負担の原則に基づいています。
参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/kikaku/attach/pdf/lowoflandimprovement-8.pdf
土地改良区の設立に同意しなかった3条資格者であっても、地区内に農地を所有または耕作している限り、組合員となり賦課金の納付義務を負います。組合員の資格は、土地の所有権移転や耕作者の変更により得喪するため、変更があった場合は速やかな届出が必要です。この仕組みにより、土地改良区は安定的な運営基盤を確保しています。
参考)「土地改良区」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio…
所有権以外の権原に基づき耕作されている農用地について、所有者が3条資格者になろうとする場合、農業委員会への申出と承認が必要です。この「資格交替」の手続きは、土地改良法施行令第1条の3及び第1条の4、施行規則第2条及び第3条に詳細が規定されています。
資格交替が認められる要件として、農用地の使用収益権者と所有者の合意が整っていることが前提となります。具体的な承認理由としては、使用収益権者が公務に従事する等のやむを得ない理由により土地改良区の運営に参加できない場合、正当な理由なく事業費負担金を滞納する場合、使用収益権者の農業経験が浅く所有者の方が農業水利の知識や経験が豊富な場合などが挙げられます。
申出には農地法や農業経営基盤強化促進法に基づく農地貸借契約書の写しなど、必要書類の提出が求められます。農業委員会は総会において申出を審議し、承認を決定した場合は申出者に通知します。この手続きを経ることで、法律上の資格者が変更され、組合員としての権利義務が移転します。資格交替の申出期間は規則で定められており、期間内に手続きを完了させる必要があります。
参考)https://midorinet-makinohara.com/_document/files/kousakuhoukitoiawase.pdf
一見すると土地改良法と車両管理は無関係に思えますが、実は農地の転用や土地利用において接点があります。農地を駐車場に転用する場合、その土地は特定用途用地として扱われ、3条資格の対象外となる可能性があります。農業委員会の議事録では、駐車場への転用案件が頻繁に審議されており、中古車置場や資材置場への転用事例も報告されています。
参考)https://www.city-matsuura.jp/material/files/group/104/31111.pdf
土地改良施設の都市化に伴い、駐車場等への利用要請が増加しているという社会経済的背景があります。このような状況下で、農地を駐車場に転用すると土地改良区の賦課受益地から除外されることになります。転用により3条資格を失った場合、組合員資格の得喪通知を土地改良区に提出する必要があり、新しい所有者や用途に応じて納税義務者が変更されます。
参考)各種届出申請 - 吹土地改良区
車を所有し日常的に利用する人々にとって、農地を相続した際や購入を検討する際に、その土地が土地改良区の区域内にあるかどうかは重要な確認事項です。区域内の農地であれば、たとえ耕作していなくても組合員として賦課金の負担義務が生じる可能性があるため、将来的な土地利用計画(住宅建築や駐車場整備など)を立てる際には、地区除外申請や転用手続きの理解が必要になります。このように、車社会における土地利用と土地改良法の資格制度には、実務上の関連性が存在しているのです。
参考)https://www.city.minamishimabara.lg.jp/kiji00311720/3_11720_shiryou1_47pa2sxe.pdf
参考情報として、農林水産省の土地改良事業実施手続きページでは、各種手続きの詳細を確認できます。
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kikaku/procedureoflandimprovementproject.html
また、土地改良区の設立手続きや審査要領の全文は、農林水産省の通知文書で公開されています。