ダイハツが2022年10月に発売したタントファンクロスは、発売から1ヶ月で驚異的な売れ行きを記録しました。タント全体の受注台数約5万台のうち、ファンクロスが約25%(約1万2,500台)を占める好調なスタートとなっています。
この数字は月間販売目標台数1万2,500台の4倍という驚異的な受注を記録したタント全体の中でも、特に注目すべき成果です。タイプ別の構成比を見ると、カスタムが約55%、ファンクロスが約25%、標準モデルが約20%となっており、ファンクロスが新参モデルとしては異例の高いシェアを獲得しています。
この好調な売れ行きの背景には、軽自動車市場におけるアウトドア志向の高まりと、従来のタントユーザーとは異なる新しい顧客層の開拓があります。
タントファンクロスの人気色は、他のタントシリーズとは明確に異なる傾向を示しています。最も人気が高いのは「サンドベージュメタリック」で、単色とツートーンカラーの両方で高い支持を得ています。続いて「レイクブルーメタリック」が人気となっており、アウトドアテイストを強調したカラーリングが好評です。
リセールバリューの観点から見ると、定番の「シャイニングホワイトパール」と「ブラックマイカメタリック」は安定した価値を保つ傾向にあります。一方で、ファンクロス特有の「サンドベージュメタリック」も、アウトドアブームの追い風を受けて中古市場で一定の需要を維持しています。
色選びにおいては、新車時の値引き交渉にも影響があります。人気色は値引き幅が限定的になる傾向がある一方、不人気色は在庫処分の対象となりやすく、価格交渉の余地が生まれることもあります。
タントファンクロスの購入層は、従来のタントユーザーとは大きく異なる特徴を持っています。主な購入層は男性で、特に新規ユーザーが多いことが特徴的です。これは標準タントの子育て世代の女性中心、カスタムの幅広い世代の男性とは明確に区別される傾向です。
購入者からの評価で特に高いのは、「アクティブでタフなデザイン」と「荷室の使い勝手の良さ」です。特に上下2段調節式デッキボードをはじめとした荷室の機能性は、アウトドア用途を想定したユーザーから高く評価されています。
一方で、内装の質感や加速性能については改善の余地があるとの声も聞かれます。特にNA(自然吸気)モデルでは加速が物足りないと感じるユーザーもおり、ターボモデルの検討を推奨する声もあります。
タントファンクロスの価格設定は、エントリーモデルの「ファンクロス」が180万9,500円から、最上位の「ファンクロスターボ "Limited"」が192万5,000円からとなっています。この価格帯は軽自動車としては高めの設定ですが、装備内容を考慮すると妥当な水準と評価されています。
競合車との比較では、ホンダN-BOXとの比較がよく行われます。室内の広さやスライドドアの利便性ではタントファンクロスが優勢である一方、静粛性や内装の質感ではN-BOXがリードしているとの評価が一般的です。
価格面では同グレード比較でN-BOXの方がやや高めの設定となっており、コストパフォーマンスを重視するユーザーにとってはタントファンクロスが有利な選択肢となっています。
タントファンクロスの成功は、軽自動車市場における新たなトレンドを示しています。従来のスーパーハイトワゴンに加えて、アウトドア系の軽SUVテイストモデルが市場で受け入れられていることが明確になりました。
この流れは他メーカーでも見られ、スズキのスペーシアギアやスペーシアBASE、三菱のデリカミニなど、同様のコンセプトのモデルが相次いで投入されています。軽自動車市場全体の4割以上を占めるスーパーハイトワゴンセグメントにおいて、新たなサブカテゴリーが形成されつつあります。
ただし、世界的な半導体不足やコロナ感染拡大の影響による部品供給不足により、納車遅延が発生している状況です。この状況は当面続くと予想され、購入を検討する際は余裕を持った計画が必要です。
タントファンクロスの好調な売れ行きは、軽自動車市場の多様化と消費者ニーズの変化を反映した結果といえるでしょう。アウトドアブームの継続と相まって、今後も安定した需要が期待されます。