2024年2月にタイで発表されたカローラクロスのマイナーチェンジは、これまでの常識を覆すほど大胆なデザイン変更が施されました。最も注目すべきは、フロントグリルの完全な刷新です。従来の大型グリルから一転して、ハニカム形状を組み合わせたシームレスなデザインに変更され、まさにレクサス「LM」や「LBX」を彷彿とさせる高級感あふれる表情に生まれ変わりました。
新しいヘッドライトには、直線状のデイライトとLED4灯のシーケンシャルターンシグナルが組み込まれており、夜間の視認性と存在感を大幅に向上させています。特に印象的なのは、ヘッドランプに繋がる縦ストライプデザインのグレー色ガーニッシュで、これまでのトヨタ車では見たことのない斬新なアプローチです3。
バンパー下部には細いメッキ調の装飾が施されており、一部の動画では光っているように見えることから、デイライト機能への期待も高まっています3。ただし、実際にはメッキの反射によるもので、LED発光ではないという情報もあり、今後の詳細確認が待たれます。
リア部分については、フロントほど大きな変更はありませんが、ボディ同色のガーニッシュが採用され、全体的な統一感が向上しています3。特に最上級グレードの「アーバンプレステージ」では、フロント・サイド・リアに専用エアロパーツが装着され、よりスポーティな印象を与えています3。
内装面では、従来のブラック基調から大きく方向転換し、新色「ダークローズ」が追加されました。このダークローズは、その名前から想像される落ち着いた色合いとは異なり、実際にはかなりビビットなレッドカラーで、シートやドア、センターコンソールのアームレストに鮮烈な赤色が採用されています。
この大胆な内装色の採用は、タイ市場における若年層の嗜好を反映したものと考えられ、従来のトヨタ車にはない攻めたデザインアプローチとして注目されています3。アクセント部分にも同じレッドカラーを使用するという徹底ぶりで、乗車した瞬間に強烈な印象を与える仕上がりとなっています。
グレード構成については、ガソリンモデルの「1.8スポーツプラス」と、ハイブリッドモデルの「ハイブリッドプレミアム」「ハイブリッドプレミアムラグジュアリ」の3車種に加え、新たにスポーティモデルの「GRスポーツ」が追加されました3。このGRスポーツは、専用外観とチューニングサスペンションを備えており、標準モデルとの差別化が図られています。
価格設定は、ガソリンモデルが415万円から、ハイブリッドモデルが454万円からとなっており、タイの物価水準を考慮すると決して安価ではない設定となっています3。しかし、充実した装備内容を考慮すれば、妥当な価格設定と評価されています。
タイにおけるカローラクロスの人気は、単なる偶然ではありません。2020年7月の発売以来、2023年12月までの累計販売台数は71,160台に達し、もはやタイにおけるトヨタを代表する車種に成長しました。この驚異的な成功の背景には、タイ特有の地理的・社会的要因が深く関わっています。
バンコクは元々水害被害の多い地域で、フロアが高い車が好まれる傾向が強くありました。そこに高い信頼性で知られるカローラブランドと、SUVの高いフロア設定が組み合わさったことで、まさに現地ニーズにマッチした商品として爆発的な人気を獲得したのです。
また、カローラそのものがバンコク市内でタクシーとして長年運用されてきた実績があり、ブランドへの信頼度が非常に高いことも成功要因の一つです。街中でカローラクロスを目にする頻度は他の車種を圧倒しており、その普及ぶりは「半端じゃない」と現地関係者も驚くほどです。
さらに、タイが世界で最初にカローラクロスが発売された市場であることも、現地での特別感を演出しています。日本での発売が2021年9月だったのに対し、タイでは2020年7月と1年以上も早く、まさにタイ市場への重要度の高さを物語っています。
多くの日本の自動車ファンが気になるのは、このタイ仕様のマイナーチェンジモデルが日本に導入される可能性です。現在の情報を総合すると、日本でのマイナーチェンジは2025年5月頃に実施される見込みで、タイ仕様の外観デザインが採用される可能性が高いとされています。
特に注目されるのは、クラウンエステートやレクサスRXに似たハニカム状のグリルデザインで、これが日本仕様にも採用されれば、カローラクロスの印象は大きく変わることになります。また、全長についても現在の4490mmから4455mmに短縮される見立てもあり、日本の道路事情により適した仕様になる可能性があります。
GRスポーツグレードの日本導入についても期待が高まっています。タイ仕様では専用外観とチューニングサスペンションのみのシンプルな構成ですが、日本版ではより充実した装備が期待されています。実際に、2025年5月23日に日本でもマイナーチェンジ版が発表され、GRスポーツグレードの追加が確認されています。
ただし、タイ仕様がそのまま日本に導入される可能性は低く、日本独自の仕様変更が加えられる可能性が高いとされています3。これは、日本と海外では安全基準や装備要求が異なることが主な理由です。
タイ仕様のカローラクロスは、1.8Lガソリンエンジンと1.8Lハイブリッドシステムの2つのパワートレインを用意しています3。ハイブリッドシステムは、トヨタが長年培ってきた技術の集大成であり、優れた燃費性能と静粛性を実現しています。
先進安全装備については、全てのハイブリッドモデルにトヨタセーフティセンスを標準装備し、全車速ダイナミックレーダークルーズコントロール、アラウンドビューモニター、自動ブレーキなど充実の装備を備えています3。これらの装備は、タイの交通事情を考慮した実用的な選択といえます。
ボディカラーには、高級感とモダンさを兼ね備えた新色のセメントグレーメタリックを含む5色が設定されており3、多様な顧客ニーズに対応しています。このセメントグレーメタリックは、近年のトヨタ車で採用が増えている人気色で、都市部での使用に適した洗練された印象を与えます。
TNGAプラットフォーム(GA-C)の採用により、上質な走りと快適な乗り心地、静粛性を実現している点も見逃せません。このプラットフォームは、カローラシリーズ全体で共有されており、品質の安定性と開発効率の向上に大きく貢献しています。
競合車種と比較した場合、カローラクロスの最大の優位性は、カローラブランドの信頼性とSUVの実用性を両立させた点にあります。タイ市場では、この組み合わせが絶妙にマッチし、他の競合車種を大きく引き離す成功を収めています。