2022年8月に発売された新型ランディは、スズキのミニバン戦略において大きな転換点となりました。これまで3代にわたってニッサン・セレナのOEM供給を受けていましたが、4代目となる新型では初めてトヨタ・ノアからのOEM供給に変更されています。
この変更により、従来のセレナベースでは実現できなかったハイブリッドシステムの搭載が可能となりました。トヨタの1.8Lハイブリッドシステムを採用することで、WLTCモード走行で23.2km/L(2WD車)という優れた燃費性能を実現しています。
OEM供給元の変更は単なる仕入れ先の変更ではなく、スズキのミニバン戦略における技術的な進歩を意味します。トヨタの先進的なハイブリッド技術とスズキの軽自動車で培った燃費技術のノウハウが融合することで、より競争力のあるミニバンとして生まれ変わったのです。
新型ランディに搭載されたハイブリッドシステムは、トヨタの最新技術を活用した1.8Lエンジンベースのシステムです。このシステムの特徴は、電動モジュールの最適化により実現された高効率性にあります。
ハイブリッドシステムの核となる制御技術では、エンジンとモーターの協調制御を徹底的に最適化しています。これにより、発進時の軽やかな出足とダイレクトなレスポンスを実現し、従来のミニバンにありがちな重厚感のある加速感を払拭しています。
4WD車には電気式4WDシステム「E-Four」を搭載し、走行状況に応じて4WD/2WDを自動切り替えします。このシステムは燃費性能と走行安定性の両立を図っており、雪道や悪路での安心感を提供しながらも、通常走行時の燃費悪化を最小限に抑えています。
特筆すべきは、ハイブリッドシステムによる静粛性の向上です。エンジン停止時の静寂性はもちろん、エンジン始動時の振動や騒音も大幅に軽減されており、家族での長距離ドライブでも快適な車内環境を維持できます。
ハイブリッド車と並行してラインアップされるガソリン車「G」は、2.0L直列4気筒エンジンを搭載しています。このエンジンは動力性能と燃費向上の両立を目指して開発されており、最大熱効率40%を達成しています。
エンジンの技術的特徴として、マルチホールの直噴インジェクタとロングストローク化による高速燃焼を実現しています。これにより、燃料の霧化性能が向上し、燃焼効率の最適化が図られています。また、エネルギーロスの低減により、従来型エンジンと比較して大幅な燃費改善を実現しています。
VVT-iE(電動連続可変バルブタイミング機構)の採用により、吸気バルブの開閉タイミングを最適制御し、エンジンレスポンスの向上も図られています。この技術により、低回転域から高回転域まで幅広い回転域で効率的な出力特性を実現しています。
Direct Shift-CVTとの組み合わせにより、力強くダイレクトな走りと優れた燃費性能を両立しており、ハイブリッド車との価格差約30万円を考慮すると、コストパフォーマンスに優れた選択肢となっています。
新型ランディには、トヨタの先進安全技術「Safety Sense」が標準装備されています。このシステムは予防安全パッケージとして、日常の運転をサポートする多彩な機能を搭載しています。
プリクラッシュセーフティシステムは、前方の車両や歩行者を検知し、衝突の可能性が高いと判断した場合に警報やブレーキアシストを作動させます。特に市街地走行での歩行者検知性能は高く評価されており、家族を乗せることの多いミニバンにとって重要な安全機能となっています。
レーンディパーチャーアラートやレーントレーシングアシストにより、高速道路での長距離運転時の疲労軽減にも貢献しています。これらの機能は、車線逸脱の警告だけでなく、ステアリング操作のアシストも行うため、運転者の負担を大幅に軽減します。
政府が推進する「サポカーS ワイド」認定車両として、ペダル踏み間違い急発進抑制装置も装備されています。この装置は特に高齢者ドライバーの事故防止に効果的とされており、幅広い年齢層のユーザーに安心感を提供しています。
新型ランディの室内空間は、全長4695mm、全幅1730mm、全高1845mmのボディサイズに対して、室内長2805mm、室内幅1470mm、室内高1405mmという広々とした空間を実現しています。
3列シートの配置は多彩なシートアレンジが可能で、2列目シートは左右独立したキャプテンシートとなっています。シートの前後スライド幅は最大690mmと大きく、乗員の体格や荷物の量に応じて柔軟に調整できます。
注目すべき利便性機能として、ハンズフリーデュアルパワースライドドアが挙げられます。携帯リモコンを身につけた状態で、フロントドア下のセンサーに足先をかざすだけでスライドドアが自動オープンします。両手に荷物を持っている場面や、小さな子供を抱いている際に特に重宝する機能です。
室内の収納スペースも充実しており、各席からアクセスしやすい位置に多数の収納ボックスやカップホルダーが配置されています。特に3列目使用時でも十分な荷室容量を確保しており、家族旅行やアウトドア活動での実用性を高めています。