エルティガは2012年にスズキがインドで発売を開始した7人乗りコンパクトミニバンです。現在販売されているのは2018年に登場した2代目モデルで、新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用し、初代から全長を130mm延長することで、より広い室内空間と荷室スペースを実現しています。
ボディサイズは全長4395mm×全幅1735mm×全高1690mm、ホイールベース2740mmとコンパクトながら、3列シート7人乗りを実現。最低地上高180mm、最小回転半径5.2mという数値からも、取り回しの良さが分かります。
パワートレインは1.5リッター自然吸気エンジン(K15B型)を搭載し、最高出力104.7ps/6000rpm、最大トルク138Nm/4400rpmを発揮。ハイブリッドモデルでは、ISG(Integrated Starter Generator)とリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用しています。
トランスミッションは4速ATまたは5速MTから選択可能で、ミニバンでありながらマニュアルトランスミッションが選べる点は日本市場では珍しい特徴です。
エルティガは現在、インド、インドネシア、フィリピンなど東南アジア諸国を中心に展開されており、2018年2月末時点で世界70以上の国・地域で累計68万台を販売した実績があります。
インドでは最量販ミニバンとして位置づけられ、CAGR(年平均成長率)4.7%という安定した成長を記録。マルチ・スズキ・インディアでは同車を「インド初のLUV(Life Utility Vehicle)」と称し、ファミリー層を中心に高い支持を得ています。
インドネシア市場では、自動車市場の約3割を占める多目的車カテゴリーにおいて重要な位置を占めており、2022年6月にはスマートハイブリッドシステムを搭載したエルティガ ハイブリッドが発売されました。
フィリピンでは2024年10月のフィリピン国際モーターショー(PIMS2024)でエルティガ ハイブリッドが展示され、現地価格は95万4000ペソ(約248万円)から117万8000ペソ(約319万円)で販売されています。
エルティガという車名は、インドネシア語で「ER」が「R(アール)」、「TIGA」が「3」を意味することから、「コンセプト R3」に由来しています。この命名からも分かるように、3列シートという基本コンセプトが車名に反映されています。
設計思想として、エルティガは「コンパクトでありながら広い室内空間と居住性、取り回しの良さ」を重視して開発されました。日本のミニバンとは異なり、リアドアにはスライドドアではなくヒンジドア(通常のドア)を採用している点が特徴的です。
この設計選択により、車両価格を抑えながらも7人乗りを実現し、新興国市場のニーズに応えています。また、最新のハーテクトプラットフォームにより、軽量化と剛性向上を両立させています。
内装では木目調パネルやレッドステッチが施されたシートを装備するグレードも用意され、スズキの海外市場における上級車種としての位置づけが明確になっています。
2022年にインドネシア市場で発売されたエルティガ ハイブリッドは、スズキが同市場で初めて採用したスマートハイブリッドシステムを搭載しています。このシステムは、1.5リッターガソリンエンジンにISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)とリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッド方式です。
ISGは発電機とモーターの機能を併せ持つ装置で、エンジン始動時のアシストや減速時の回生エネルギー回収を行います。これにより燃費性能の向上とともに、アイドリングストップ機構も備えています。
最高出力は約105馬力(77kW)、最大トルク138Nmを発揮し、従来のガソリンエンジンと比較して優れた燃費性能を実現。ハイブリッドシステムの搭載により、環境性能と動力性能を両立させています。
安全・快適装備として、坂道発進時の後退を防ぐヒルホールドコントロール、クルーズコントロール、オートライトなどの運転支援機能も搭載され、現代的な装備水準を確保しています。
エルティガは現在日本では販売されていませんが、SNSなどでは「これ、欲しい」「このまま日本で発売希望」「このサイズ感で7人乗りはいい」といった日本での発売を切望する声が多く見られます。
日本市場でエルティガが注目される理由として、以下の点が挙げられます。
一方で、日本市場特有の課題もあります。「7人乗りでリアドアがスライド式ではないのが残念」との声もあり、日本ではスライドドアの需要が高いことが課題となっています。
日本の軽自動車規格やコンパクトカー市場を得意とするスズキにとって、エルティガのようなコンパクト7人乗りミニバンは技術的な親和性が高く、将来的な導入の可能性は十分考えられます。
現在日本で販売されているスズキのミニバンはランディ(日産セレナのOEM)のみで、自社開発のミニバンとしてエルティガの導入は戦略的意味も大きいと考えられます。