筋萎縮性側索硬化症初期症状と運動障害診断治療

筋萎縮性側索硬化症の初期症状は手足のしびれや筋力低下、言語障害など多様です。早期発見で適切な対応が可能になりますが、あなたは初期のサインを見逃していませんか?

筋萎縮性側索硬化症の初期症状

この記事のポイント
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手足の症状

箸が持ちにくい、重いものが持てない、歩きにくいなどの運動障害が現れます

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言語・嚥下の症状

ろれつが回らない、飲み込みにくい、むせやすいなどの球麻痺症状が出ます

筋肉の異常

筋肉のピクつき、筋萎縮、筋力低下が徐々に進行していきます

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脳や脊髄の運動ニューロンが徐々に障害される進行性の神経疾患です。発症年齢は50代から70代前半に多く、特に65~69歳の年齢層で最も多く見られます。男女比は約1.5:1で男性にやや多い傾向があります。
参考)筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状

初期症状は発症部位によって大きく異なり、患者さんの約4分の3が手足の動きに異常を感じて病院を訪れます。残りの約4分の1は舌やのどの症状から始まります。この病気の特徴は症状が一度現れると治まることなく常に進行していく点にあります。
参考)https://www.sanofi-als.jp/public/als-about/about-02

自動車を日常的に運転される方にとって、手足の筋力低下や反応速度の変化は運転操作に直接影響を及ぼす重要な症状です。初期段階での気づきと適切な対応が、安全な生活を維持するために欠かせません。
参考)初期症状と診断

筋萎縮性側索硬化症の手足に現れる初期症状

手足の症状で始まるタイプ(四肢型)は、ALS患者さんの中で最も多い発症パターンです。上肢型では約40%、下肢型では約33%の患者さんがこのタイプに該当します。
参考)ALSの初期症状(肩こり・筋肉のびくつき・痛み)を現役医師が…

上肢の初期症状として以下のようなものがあります:​

  • 箸が持ちにくい、うまく使えない
  • ペットボトルのフタが開けにくい
  • 字が書きにくくなる
  • 重いものを持てなくなる
  • 指先に力が入らない

下肢の初期症状には次のようなものがあります:
参考)ALS患者に必要な情報「実用編」 ~下肢(1)~ - NsP…

  • 歩きにくい、走りにくい
  • 階段の昇り降りがつらい
  • つまずきやすい、よく転ぶ
  • スリッパが脱げやすい
  • 足が上がらない

自動車の運転に関しては、アクセルやブレーキの操作に支障をきたすことがあります。足の筋力低下により、ペダル操作の感覚が変わってきたと感じたら、早めに医療機関に相談することが大切です。
参考)https://ameblo.jp/hirohirohiro-20200801/entry-12650836006.html

筋萎縮性側索硬化症の言語と嚥下に現れる初期症状

球麻痺型と呼ばれるタイプは、舌やのどの筋肉の力が弱まることから始まります。ALS患者さんの約25%がこの症状で発症します。
参考)ALSの初期症状とは?手足の異常や飲み込みにくさに早期対応す…

言語障害の初期症状は以下の通りです:​

  • ろれつが回らなくなる
  • 言葉が不明瞭になる
  • 特に「ラリルレロ」「パピプペポ」の発音がしにくい
  • 話すスピードが遅くなる
  • 声が出にくくなる

嚥下障害の初期症状には次のようなものがあります:
参考)https://www.hotetsu.com/files/files_491.pdf

  • 食べ物や唾液を飲み込みにくい
  • むせることが多くなる
  • 食事に時間がかかる
  • 水分でむせやすい

球麻痺の症状は上位運動ニューロンの障害による舌運動の緩慢さや嚥下反射の惹起遅延、下位運動ニューロンの障害による口腔・咽頭の筋力低下によって引き起こされます。時期に差はありますが、摂食嚥下障害はALSでは必発の症状です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/12/4/12_322/_pdf/-char/ja

呼吸機能低下からむせがみられないなどが原因で、潜伏性に進行することも多いため注意が必要です。​

筋萎縮性側索硬化症の筋肉異常による初期症状

筋肉に関連する症状は、ALSの特徴的な初期症状の一つです。これらの症状は運動ニューロンの障害によって直接引き起こされます。
参考)運動ニューロン病|滋賀県大津市 脳神経内科、内科 さくらいク…

筋肉の異常症状として以下が見られます:
参考)筋萎縮性側索硬化症とは|筋萎縮性側索硬化症( ALS )と鍼…

  • 筋肉のピクつき(線維束性収縮):静止時に筋肉がピクピクと動く
  • 筋萎縮:手や足の筋肉が痩せ細ってくる
  • 筋力低下:徐々に力が入らなくなる
  • 筋肉のこわばり:関節まわりが固まり動かしにくい
  • 筋肉の痙攣:つることが増える

筋肉のびくつきは、とくに手足に多く見られ、意識しなくても動くのが特徴です。このような症状は、神経が正常に機能していないことを示すサインとなります。
参考)筋萎縮性側索硬化症の初期症状 手足の筋力低下と日常生活に影響…

また、筋肉の疲れやすさと脱力感も初期から現れます。軽い運動でも疲れやすく、動作の途中で力が抜ける感覚があることが特徴的です。筋力低下による姿勢の崩れや負担で、肩や関節に違和感や重だるさを覚えることもあります。​
興味深いことに、筋肉痛や関節痛など、痛みを伴って発症するケースもあることが報告されています。​

筋萎縮性側索硬化症の進行パターンと症状の広がり

ALSの症状は体の片側に偏って現れることが多いのが特徴です。例えば、右手の筋力低下や痙攣が始まり、その後に左手や脚にも同様の症状が見られるようになります。​
症状の進行には個人差がありますが、初期段階では限定的な部位で症状が始まることが一般的です。最初は体の一部に感じる違和感が、時間の経過によって次第に体全体に及んでいきます。​
進行の特徴として以下が挙げられます:
参考)ALSの症状の経過|筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?|筋萎…

  • 症状がどこかの段階で治まることはない
  • 常に進行していく
  • 最終的には自分の意思で体を動かせなくなる
  • 筋肉の機能喪失により麻痺が進行

自動車の運転に関しては、症状の進行に伴い操作の困難さが増していきます。病気の進行に合わせて運転免許の更新時に特別な配慮が必要になることもあります。足の状態が悪化し、連続して歩ける距離も短く、ぎこちなくしか歩けなくなった段階では、運転についても慎重に判断する必要があります。
参考)https://ameblo.jp/livekenta/entry-12742699263.html

診断から一定期間は、まだ自分で車を運転して病院へ通うことができる方もいますが、安全性を考慮した判断が重要です。
参考)会員さんのALS的日常 Vol.1

筋萎縮性側索硬化症の診断方法と検査

ALSの診断は、医師の診察や検査により運動ニューロンの障害があることを確認し、似たような症状を呈する他の病気を除外することで総合的に判断されます。最終的にALSと診断されるまでの期間は平均で約15ヶ月程度です。
参考)筋萎縮性側索硬化症(ALS) - 東京逓信病院

主な検査項目には以下があります:​

  • レントゲンやMRIなどの画像検査
  • 血液検査
  • 髄液検査
  • 神経伝導検査
  • 針筋電図検査

特に針筋電図検査は、検査に痛みを伴いますが、運動ニューロンの障害を評価するのに最も重要な検査の一つとされています。​
診察内容としては、目の動きから始まり、顔や手足の動き、ハンマーを使った腱反射、バランスや感覚の異常の有無を診察します。こういった診察は、運動神経がどの程度障害を受けているかなどの判定の材料になります。​
初発症状に気づいたときに、患者さんはまず、かかりつけ医に相談に行ったり、近隣の大きな病院に受診します。整形外科や脳神経外科に受診されることもありますが、最終的には神経内科に受診して診察・検査を受け診断されます。​
他の疾患ではなくALSであると診断するためには、よく似た病気を除外するための検査、たとえば脊髄のMRIなどを受けていただくことになります。​
厚生労働省の診断基準に基づいた詳細な情報も公開されており、専門医による正確な診断が重要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089881.pdf

筋萎縮性側索硬化症の診断基準と詳細情報(難病情報センター)
難病情報センターでは、ALSの診断基準、臨床調査個人票、重症度分類などの公的な情報が掲載されています。

 

筋萎縮性側索硬化症の治療と生活の質向上

現在、ALSに対する根治的な治療法はありません。しかし、進行を抑制する治療として、内服薬のリルゾール(リルテック®)、点滴薬のエダラボン(ラジカット®)がありますが、効果は限定的です。
参考)筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療

薬物療法の詳細は以下の通りです:​

  • リルゾール50mgを1日2回服薬
  • グルタミン酸の興奮毒素を抑える効果
  • 気管切開や人工呼吸器を利用するまでの期間を2~3カ月遅らせる
  • 運動機能や筋力回復効果はない

リルゾールは日本で唯一認可された治療薬で、症状を遅らせるといった科学的根拠があり治療法として確立しています。なお、周辺症状の緩和のために安定剤や消炎鎮痛剤、湿布などが利用されることもあります。​
生活の質を保つための支援として以下が重要です:​

  • リハビリテーション:筋力維持と機能訓練
  • ケア:日常生活動作の支援
  • 福祉用具の活用:車椅子、電動リフトなど
  • 住宅環境の整備:バリアフリー化

自動車の運転については、症状の進行に合わせて適切な時期に判断することが大切です。車椅子に乗る時間が増えた段階や、足の筋力低下が顕著になった時点で、運転の継続について医師や家族と相談することが推奨されます。​
移動手段としては、手動式車椅子から電動式車椅子、さらにはリクライニング機能付き車椅子へと段階的に移行していくことが一般的です。手が少しでも動かせる間は電動式の車椅子を使用し、操縦が難しくなってきたりした際にリクライニング機能付きの車椅子に乗り替えていくのが良いとされています。​
筋萎縮性側索硬化症の治療とケアの詳細(健康長寿ネット)
健康長寿ネットでは、ALSの治療方法、薬物療法、対処療法について詳しい情報が提供されています。