首都高速道路における「追い越し車線」の存在について、多くのドライバーが誤解を抱いています。実際のところ、「追い越し車線」という用語は道路交通法や道路構造令には一切記載されていない法令外の通称です。
NEXCO東日本の公式回答によると、追い越し車線とは「片側に複数車線がある場合の最右端の車線のことであり、走行車線を走っている前車を追い越すための車線」と定義されています。しかし、この定義は「法令上の用語ではなく、キープレフト原則を表す交通標語的意味合いの通称」に過ぎません。
首都高速道路では、右側からの入口・合流や右側の出口・分岐が多数存在するため、走行車線・追い越し車線の区別を明確にしていません。首都高お客様センターの回答では、「右から入って右に出るような場合は、右側車線は走行車線になります。追い越し車線ではありません」と明言されており、このルールは都心環状線だけでなく、湾岸線を含む首都高全域に適用されています。
首都高速道路においても道路交通法第20条(左側通行の原則)は適用されるため、理由なく右側車線を走り続けることは「車両通行帯違反」に該当する可能性があります。
実際の違反事例として、首都高での通行帯違反による反則切符が確認されており、その内容は以下の通りです。
首都高公式ホームページでも2021年冬頃の更新で「道路交通法20条(左側通行の原則)は首都高速にも適用されますので、理由なく一番右側を走り続けることはできません」と明記されています。
ただし、右側に出入口がある区間については例外が認められており、「分合流のために右側を走ることは問題ない」とされています。この例外規定は道路交通法第20条第3項に基づくもので、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」に該当します。
首都高速道路の特殊な構造は、建設当時の都市部における用地確保の困難さに起因しています。首都圏では建設用地を公共用地以外で確保することが困難であり、公共空間を活用しつつ、出入口付近の一般道路との交通処理など様々な制約のもとで総合的に考慮した結果、右側に出入口を設置せざるを得ない場合が生じています。
主な右側出入口の特徴。
この構造により、首都高では右側車線を「追い越し車線」として一律に定義することができず、区間ごとに走行車線としての機能を持たせています。
設計速度についても、首都高は区間によって30km/hから10km/h刻みで設定されており、主流は50-60km/h、新しい区間でも70-80km/hと、一般的な高速道路(100km/h)よりも低く設定されています。
首都高速道路での安全運転を実現するためには、法的な理解と適切な運転マナーの両方が重要です。
基本的な運転原則:
事前準備の重要性:
首都高公式サイトの「首都高のミカタ」では、右側から入る入口と右側から出る出口を示した出入口マップが公開されています。初心者ドライバーやペーパードライバーは、事前に走行ルートを予習することで実際の走行時に焦らずに運転できます。
カーシェアリング利用者への注意:
近年増加しているカーシェアリング利用者の中には、首都高の特殊な構造を理解していない初心者ドライバーも多く存在します。130万人を超えるカーシェアリングユーザーの安全確保のため、事前の情報収集と慎重な運転が求められています。
首都高速道路の構造的な問題は、建設から60年以上が経過した現在でも根本的な解決が困難な状況にあります。しかし、技術革新と運用改善により、安全性向上への取り組みが続けられています。
技術的改善の取り組み:
運用面での改善:
首都高速道路公式サイトでは、危険箇所や注意点を詳細に解説する情報提供を強化しています。特に「右車線側に出口」「分岐が難しい」といった利用者の8割以上が危険と感じる要素について、具体的な対策情報を提供しています。
将来的な展望:
自動運転技術の普及により、首都高の複雑な構造に対応した運転支援システムの開発が期待されています。車線変更支援や出口案内の自動化により、現在の構造的な問題を技術的に解決する可能性が高まっています。
また、2025年の大阪・関西万博を控え、類似の都市高速道路である阪神高速道路との連携による運用ノウハウの共有も進められており、都市高速道路全体の安全性向上に向けた取り組みが加速しています。
首都高速道路の追い越し車線に関する正しい理解と適切な運転マナーの実践により、すべてのドライバーが安全で快適な移動を実現できる環境づくりが重要です。