現在、東京中央区にある銀座という地名は、江戸時代の1603年(慶長17年)に由来しています。徳川家康が江戸幕府を開く際に、駿府にあった銀貨鋳造所(銀座役所)を現在の銀座2丁目に移転させました。銀貨を製造するこの役所から「銀座」という名称が誕生し、その正式町名は「新両替町」でしたが、通称として「銀座」と呼ばれるようになりました。
江戸時代の銀座役所は、幕府の直轄で銀貨を製造する重要な施設でした。しかし、後に不正行為が発覚したため、銀座は蛎殻町(現在の日本橋人形町)へ移転し、そこで「蛎殻銀座」と呼ばれるようになります。その後、明治政府による造幣局の設立に伴い、明治2年(1869年)に廃止されました。しかし、銀座という地名だけは江戸時代の通称として残り、現在も東京を代表する繁華街の名称として使用されています。
明治時代の1872年(明治5年)に起きた銀座大火は、東京の街を大きく変える転機となりました。火災の後、政府は都市の不燃化を目指して、銀座通りに煉瓦造りの建物を建設する政策を推し進めました。この煉瓦街は当時の最先端の建築技術であり、ガス灯も備えられた近代的な商業地として、日本の繁華街の象徴となりました。
煉瓦街の誕生により、銀座には百貨店や商店が次々と集中し、明治中期から後期にかけて東京を代表する商業地へと発展していきました。特に、呉服店や時計店、眼鏡店などの高級店舗が出店し、銀座という名前が「高級」「おしゃれ」の代名詞として定着するようになったのです。この時代に形成された銀座のブランドイメージが、後に全国の商店街に「銀座」という名前を付けるインセンティブになったと考えられます。
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1923年9月1日に発生した関東大震災は、銀座に壊滅的な打撃を与えました。不燃化を目指して建設された煉瓦街は、地震の揺れ自体では大きな被害を受けませんでしたが、その後の大火により、銀座の煉瓦街はほぼ全滅してしまいました。しかし、銀座の商人たちの対応は素早く、震災の翌日から復興策の検討が始まり、わずか2ヶ月後の1923年11月には、バラック建てされた仮設店舗で営業を再開させたのです。
この迅速な復興は、当時の東京市民に大きな影響を与えました。銀座通連合会の前身である京新聯合会が「商店は従前のところで開業すること」と決定し、各商人がこれに従ったことで、銀座の活気が素早く戻ってきたのです。政府の帝都復興事業により、晴海通りの拡幅、昭和通りの建設などが行われ、1930年(昭和5年)までに銀座は新しい街並みを取り戻しました。
関東大震災の復興過程において、銀座のレンガ瓦礫が全国に配分されたという、あまり知られていない重要な事実があります。戸越銀座商店街(東京都品川区)は、1924年に銀座6丁目から処分に困っていた大量のレンガ瓦礫を譲り受け、水はけの悪い通りに敷き詰めました。この工事により「銀六商店街」という名前が誕生し、日本で初めて銀座を名乗った商店街となったのです。
銀座の復興が他の地域より圧倒的に早かった理由は、銀座に多くの大地主がいたからという点が重要です。1923年当時の銀座には、土地を広く所有する地主が多く、困っている店舗に対して自分の土地を提供するなど、積極的に復興を支援したのです。この地主たちのネットワークと支援体制が、銀座の迅速な復興を実現し、その結果として「銀座のようになりたい」という全国の商人たちの願いが込められて、各地で「銀座」を名乗る商店街が誕生するようになったのです。
現在、全国47都道府県に300ヵ所以上の銀座商店街が存在するというのは、銀座というブランドが持つ強力な影響力を示しています。北は北海道北見市の北見銀座から、南は鹿児島県奄美大島の銀座通商店街まで、その分布は日本全国に広がっています。東京都内に限定しても、戸越銀座、砂町銀座、十条銀座の「三大銀座」をはじめとして、90ヵ所以上の銀座商店街が存在しています。
これらの商店街は、単に銀座の名前を借用しただけではなく、地域の活性化と商業の発展を象徴する施設として機能しています。戸越銀座商店街は延長1240メートルで400軒以上の店舗を有し、砂町銀座は「生鮮3品の天国」として知られ、十条銀座は「惣菜天国」として特色を持ちながら繁栄しています。このように各地の銀座商店街は、それぞれ地域に根ざした特色を持ちながら、関東大震災からの復興という銀座の歴史に支えられた共通のブランド価値を享受しているのです。
銀座商店街の名称が全国に広がったことは、単なる地名の流行ではなく、地域の商業を活性化させ、市民生活を豊かにしたいという切実な願いの表れであり、関東大震災からの復興を成し遂げた銀座の歴史と精神が、日本全国の商店街に受け継がれていることを示しているのです。
【銀座歴史】全国各地にある「◯◯銀座」は全国で300カ所以上
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