ホンダ・シティーは1981年に初代モデルが登場し、その特徴的な背高スタイルから「トールボーイ」と呼ばれ大ヒットを記録しました。しかし、1986年の2代目モデルは初代ほどの成功を収めることができず、日本市場では1995年に販売を終了しました。
興味深いことに、日本市場から撤退した翌年の1996年には海外で新型シティーが登場し、その後も継続的に進化を続けています。3代目はシビックフェリオベース、4代目は日本でフィットアリアとして販売されたモデル、6代目は日本ではグレイスとして販売されていたという経緯があります。
現在の7代目シティーには、4ドアコンパクトセダンの「シティ」と5ドアハッチバックの「シティハッチバック」が存在し、2024年2月に最新モデルが発表されています。
2020年にタイで発表された新型シティーハッチバックは、革新的な「ウルトラ(ULTR)シート」を採用しています。このシートシステムは4つの異なるモードを提供します。
エンジンは3気筒1.0リッターDOHC VTECターボを搭載し、最高出力122PS、最大トルク173Nmを発揮。燃費は23.3km/lという優秀な数値を実現しています。
ボディサイズは全長4335mm(RSグレードは4349mm)×全幅1748mm×全高1488mm、ホイールベース2589mmとコンパクトながら実用性の高いパッケージングを実現。
2020年にタイで発表されたシティーe:HEVは、このセグメント初のハイブリッドモデルとして注目を集めています。スポーツハイブリッドi-MMD(インテリジェント マルチモード ドライブ)システムを搭載し、電気モーターの強力な性能を活用しています。
パワートレインの詳細は以下の通りです。
このハイブリッドシステムは日本のフィットに搭載されるモーターと同数値であり、ホンダの電動化技術の高さを示しています。
安全装備としては、ホンダセンシングを標準装備し、衝突警報システム、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、車線逸脱防止アシスト、レーンキーピングアシスト、オートハイビームなどの先進機能を搭載。
タイ市場での展開
2025年3月のバンコクモーターショーでは、限定車「DRIVAL」が発表されました。この特別仕様車は1000台限定で、価格は82万9000バーツ(約366万円)に設定されています。スポーティな外観デザインが特徴で、フロント・リアアンダースポイラー、専用ガーニッシュ、ブラックルーフを採用しています。
インドネシア市場での展開
2025年1月13日、インドネシアではシティーハッチバックRSのマイナーチェンジモデルが発売されました。注目すべきは、従来設定されていたマニュアルトランスミッションが廃止され、CVTのみの設定となったことです。
ブラジル市場での展開
2024年11月、ブラジルではシティーハッチバックの改良モデルが発売されました。主な変更点はフェイスリフトで、グリルの大型化とクロームからブラックへのガーニッシュ変更により、よりスポーティな印象を演出しています。
機能面では電動パーキングブレーキの採用により、ACCの作動領域が拡大し、ストップ&ゴーを繰り返す渋滞時にも対応可能となりました。
現在、新型シティーの日本市場への復活について公式発表はありませんが、いくつかの要因が復活の可能性を示唆しています。
復活を後押しする要因
技術的優位性
海外で展開されている新型シティーは、日本市場で求められる技術要素を多数搭載しています。特にe:HEVハイブリッドシステムは、日本の燃費基準や環境規制に十分対応可能な性能を有しています。
市場ポジショニング
現在の日本市場では、フィットとヴェゼルの間に位置するモデルが不在となっており、シティーが復活すれば、この空白を埋める重要な役割を果たす可能性があります。
競合他社への影響
もしシティーが日本市場に復活すれば、トヨタのヤリス、日産のノート、マツダのデミオ(現MAZDA2)などの競合モデルに大きな影響を与えることが予想されます。特に、ハイブリッドシステムの優秀性とユニークなシートアレンジ機能は、差別化要素として機能するでしょう。
ホンダの五十嵐雄行氏が述べているように、「世界中の人々に幸せを提供したい」というビジョン2030の実現に向けて、日本市場でのシティー復活は重要な戦略の一つとなる可能性があります。
現時点では憶測の域を出ませんが、海外での成功実績と技術的優位性を考慮すると、新型シティーの日本市場復活は十分に現実的なシナリオといえるでしょう。