センチュリー・ロイヤルの価格は標準車5250万円、防弾・装甲を加えた特装車では9450万円に達する[1]。これは通常の3代目センチュリー(約1960万円)[2]と比べて約2.7〜4.8倍に相当し、価格差の大部分を以下の要素が占める。
項目 | コストへの影響度 |
---|---|
車体延長加工 | ★★★★★ |
防弾・装甲仕様 | ★★★★★ |
内装特注素材 | ★★★★☆ |
開発・試験費 | ★★★☆☆ |
台数限定効果 | ★★★★☆ |
予算は1台あたり8000万円以内という政府調達基準でもあった[3]。結果として特装車のみが上限を超えているが、これは防弾レベルの強化に起因する特例とされる。
ロイヤルは2代目センチュリーのV型12気筒5.0L(1GZ-FE)エンジンを継承し、静粛性と振動対策において国産最高峰の水準を維持する[1]。最高出力は280kW、最大トルクは480N·m級と推定され、2.7t超の重量でも余裕の加速を示す。
燃費は公表されていないが、同エンジンを搭載する先代センチュリーで平均5–6 km/L前後とされており、ロイヤルでは車重増加の影響でさらに1割程度悪化する可能性が高い。
なお現行(3代目)センチュリーはV8 5.0Lハイブリッドへ移行したため、量産車でV12を味わえる国内モデルはロイヤルのみとなった。維持コストの観点では燃料税・重量税・自動車税(6L区分相当)に加えて、専用部品の供給体制をトヨタ東日本が長期支援する形で確保している。
インテリアは日本の伝統工芸を随所に盛り込む。天井へ岐阜県産の手漉き和紙を貼り、後席にはイギリス製メリノウールをベースに京都の染織技術で仕立てた特注ファブリックを用いる[1]。対してフロントシートは拘束力の高いナッパレザーを採用し、乗員区分を明確化。
これらは「量産を前提にしない開発」であるため、型紙から家具職人が一台ごとに採寸し、寸法誤差は0.1 mm単位で管理される。
特装車はNIJレベルIII+の多層装甲ガラスに加え、ボディ外板裏へセラミック複合装甲を組み合わせる[1]。ドア一枚で90 kg超の重量となるが、電動アシストヒンジにより開閉荷重を軽減。タイヤはミシュランPAXシステムをベースに、80 km/hで30 km走行可能なランフラット仕様だ。
耐爆性能については明確に公開されていないが、フロア下に700 g TNT相当の爆破試験をクリアしたとされる。さらに車体前後にはケブラー織布製スプラッタライナーが敷設され、破片貫通を防ぐ。
事故時の退避を想定し、燃料タンクは難燃樹脂とセルフシーリングゴムで二重保護。加えて車載火災抑制の自動消火装置をトランクに備える。
下表は主要皇族御料車の比較だ。価格は多くが非公表だが、参考値として推定額を掲載する。
モデル | 全長 | 排気量 | 装甲 | 推定価格 |
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センチュリーロイヤル | 6155 mm[1] | 5.0L V12 | 防弾・装甲(特装車) | 9450万円[1] |
Bentley State Limousine | 6390 mm | 6.75L V8 | 防弾 | 非公表(10億円級) |
Rolls-Royce Phantom IV | 6040 mm | 5.7L 直8 | 非装甲 | 非公表 |
Mercedes-Maybach S680 Guard | 5469 mm | 6.0L V12 | VR10装甲 | 2億円超 |
これら比較から、ロイヤルは「皇室用」という用途に最適化された結果、豪華さ・安全性・コストバランスを高次元で成立させたことが見えてくる。
【参考リンク:観音開きドアの機構解説】
Kuruma-newsの記事ではドア構造と防弾ガラス厚の技術的背景を詳細に説明。
【参考リンク:V12エンジンの整備体制】
BestCarWebではV12搭載2代目センチュリーのメンテナンス事例とコストを解説。