マツダの次期ロードスターne型の発売時期について、業界関係者の間では2026年が最有力候補として挙げられています。現行のnd型ロードスターが2015年にデビューしてから既に10年近くが経過しており、モデルチェンジのタイミングとしては適切な時期と言えるでしょう。
特に注目すべきは、ユーロ7排出ガス規制の施行時期との関連性です。この新しい環境規制は2025年7月から実施される予定で、従来の純ガソリンエンジンでは対応が困難とされています。マツダとしても、この規制に確実に対応できるエンジンシステムを開発し、市場投入するためには十分な開発期間が必要となります。
また、マツダの青山裕大取締役専務執行役員は、ロードスターブランドの継続について明確な意思を示しており、「世界中に広がるロードスターオーナーとの約束を守り続ける」と述べています。これは、単なるモデルチェンジではなく、ロードスターの DNA を受け継ぎながらも時代に適応した革新的なスポーツカーを目指していることを示唆しています。
開発スケジュールを考慮すると、2025年後半から2026年前半にかけてのワールドプレミア、そして2026年中の市場投入というタイムラインが現実的と考えられます。
次期ロードスターne型の最大の変更点は、間違いなくパワートレーンの電動化です。現行nd型で採用されている純ガソリンエンジンから、ハイブリッドシステムまたはプラグインハイブリッド(PHEV)への転換が確実視されています。
具体的なエンジン構成については、現在搭載されている1.5リッター直列4気筒および2.0リッター直列4気筒のSKYACTIV-Gエンジンをベースに、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせる可能性が高いとされています。この組み合わせにより、環境性能を大幅に向上させながらも、ロードスター本来の軽快な走りを維持することが期待されています。
興味深いのは、排ガス規制への対応策として「低回転トルク重視型」のエンジン特性への変更が検討されていることです。これまでのロードスターは高回転型のエンジン特性で知られていましたが、電動アシストとの組み合わせにより、低回転域からの力強いトルクを活用した新しい走行フィールを提供する可能性があります。
ただし、マツダは軽量化へのこだわりを決して諦めていません。現行nd型の約1,000kgという軽量性を可能な限り維持しながら、電動化システムを搭載するという技術的チャレンジに取り組んでいます。
電動化に伴い、新型ロードスターne型の価格上昇は避けられない状況です。現行nd型の最安モデルが約269万円からスタートしているのに対し、ne型では最低でも300万円台後半からの価格設定になると予想されています。
この価格上昇の主な要因は、ハイブリッドシステムの搭載コストです。参考として、マツダCX-60のガソリンモデルとPHEVモデルの価格差は約217万円となっており、ロードスターでも電動化のレベルに応じて50万円から100万円程度の価格上昇が見込まれます。
しかし、価格上昇の一方で、マツダは「安価」「軽量」「前後重量配分50:50」というロードスターの基本コンセプトを維持することを明言しています。これは、電動化によるコスト増を可能な限り抑制し、多くのスポーツカーファンにとって手の届く価格帯を維持したいという意思の表れと言えるでしょう。
特に注目すべきは、2029年にはロードスター誕生40周年を迎えることから、記念モデルの投入も期待されています。このような特別仕様車では、より高性能なハイブリッドシステムや専用装備が搭載される可能性があり、価格帯も多様化することが予想されます。
新型ロードスターne型のデザインについて、マツダのチーフデザイナー玉谷聡氏は、2022年に発表された「ビジョンスタディモデル」からインスピレーションを受けたデザインになる可能性があることを示唆しています。
このビジョンスタディモデルは、マツダの将来的なデザイン方向性を示すコンセプトカーとして発表されたもので、現代的なEVデザインの要素を取り入れた2ドアクーペとなっています。また、2023年のジャパンモビリティショーで公開された「アイコニックSP」も、次期ロードスターのデザインに影響を与える可能性があります。
外観の変更点として特に注目されるのは、ボディのワイド化です。スクープされたテストカーの画像からは、現行nd型と同じホイールベースを維持しながら、より広いスタンスを持つスポーツカーになることが予想されています。これにより、より安定した走行性能と迫力のある外観を実現することが期待されます。
また、空力性能の向上も重要な要素となります。電動化により重量増が避けられない中で、空気抵抗の低減は燃費性能向上に直結するため、フロントグリルやボディライン、リアスポイラーなどの形状が最適化される可能性があります。
新型ロードスターne型の開発において最大の技術的課題となるのが、電動化と軽量化の両立です。ロードスター開発主査は、次期型でも車両重量1トン以下の実現可能性について言及しており、マツダの軽量化への強いこだわりが伺えます。
現行nd型ロードスターの車重は約1,000kgと、現代のスポーツカーとしては驚異的な軽さを実現しています。しかし、ハイブリッドシステムの搭載により、バッテリーやモーター、インバーターなどの追加重量は避けられません。一般的に、ハイブリッド化により50kg~100kg程度の重量増加が発生するとされています。
この課題に対してマツダが取り組んでいるのが、軽量素材の積極的な活用です。アルミニウム合金やカーボンファイバーなどの軽量材料を適材適所に配置することで、電動化による重量増を相殺する取り組みが進められています。
また、バッテリーの配置についても工夫が凝らされています。車両の前後重量配分50:50を維持するため、バッテリーを車体中央部の低い位置に配置することで、重心の最適化と運動性能の向上を図る設計が検討されています。
さらに注目すべきは、48Vマイルドハイブリッドシステムの採用により、従来のフルハイブリッドよりも軽量なシステム構成を実現できる可能性があることです。これにより、電動化のメリットを享受しながらも、ロードスター本来の軽快感を損なわない仕上がりが期待されています。