バリュープログレスが新型ビースト開発に着手した背景には、「メイド・イン・ジャパンの超スーパースポーツカーを製作する」という強い信念がありました。同社は福島県を拠点に、東京オートサロンなどの自動車イベントで過去4度以上の受賞歴を持つ、実力派のカスタムカーメーカーです。2003年のコンパクトカー部門グランプリ受賞、2010年の優秀賞受賞など、積み重ねられた技術と経験が、このプロジェクトの基盤となっています。
新型ビーストの開発を担当した代表の白岩氏は、単なる改造車ではなく、スーパーカーに匹敵する車を製作することを目指していました。既存の日本の自動車メーカーでは決して製造しない、「夢とムダがいっぱい詰まった車」を作るという理念が、このプロジェクトを推進させました。2024年7月に完成したマスターモデルは、その理念を形にした集大成となっています。バリュープログレスにとって、この新型ビースト は、単なるカスタムカーではなく、日本のものづくりの誇りを体現するフラッグシップモデルなのです。
新型ビーストの最大の特徴は、ミッド搭載されたV型12気筒エンジンです。このエンジンはランボルギーニ ディアブロの心臓であり、圧倒的な排気量と出力を誇っています。これに6速マニュアルミッション(6速MT)を組み合わせることで、ドライバーダイレクトな操舵感と変速感を実現しています。
トリプルプレートクラッチの採用は、単なる装備ではなく、この巨大なエンジンからの莫大なトルクを確実に伝達し、長期間の耐久性を確保するための設計です。6速MTとの組み合わせにより、ドライバーはエンジンの息吹を直接感じながら走行可能。スーパーカーには珍しい、ドライバーとマシンの一体感を実現する動力系が、新型ビースト の大きなアピールポイントとなっています。V型12気筒という贅沢なエンジンレイアウトは、多くのスーパーカーが電動化やダウンサイジングへ向かう現代において、ガソリンエンジンの魅力を存分に引き出す選択肢として機能しています。
新型ビーストの最も個性的な特徴は、「和製スーパーカー」を標榜する独創的なエクステリアデザインです。ランボルギーニ ディアブロをベースとしながらも、ボディパネルは全面的に改造され、神社や仏閣、鳥居を彷彿とさせる多段式エアロが特徴的です。複雑な直線が組み合わされたボディデザインは、西洋的なスーパーカーの概念に「和」の美学を融合させようとした試みです。
エクステリアの完成度は約8割の状態から、さらに進化を遂げています。ヘッドランプを縦配置に変更することで、より迫力あるフロントマスクが実現されました。フード部分は30mm延長され、ヘッドランプとの融合が綿密に計算されています。中央には丸いフォグランプが取り付けられ、戦闘的なイメージを強調しています。
ボディカラーはイタリアンレッドを基調に、ダークグレーと特殊顔料のマジョーラが組み合わされ、情熱的でありながら高級感を演出する配色になっています。この色彩表現も、日本の伝統的な色彩感覚と西洋的なスーパーカー文化の融合を意図したものと考えられます。
新型ビーストのボディサイズは、全長5030mm、全幅2400mmというワイドなスタンスを採用しています。全高1100mm(ルーフ部)、スポイラー最上部までの高さは1260mmで、超低く広いプロポーションが実現されています。このサイズは一般的な乗用車をはるかに上回り、圧倒的な存在感を放ちます。
タイヤサイズもフロント265/30R19、リア345/25R20と、リアが極端に大きくされています。ホイール構成はフロント19×10J、リア20×14Jで、この巨大なタイヤを収めるために、ボディ全幅が2400mmという大口径必要になったわけです。
空力設計は単なる美観追求ではなく、走行性能に直結しています。特徴的なルーフデザインは、走行中に入ってくる空気でダウンフォースを生成し、同時にエンジンルームへのエアフローを最適化する設計となっています。リア中央最上部に配置された4本の極太マフラーと、大迫力のリアディフューザーは、走行時のダウンフォースが有効に働くよう計算されています。このような空力設計は、見た目のインパクトだけでなく、実際のハイスピード走行時の安定性確保に寄与する重要な役割を担っています。
新型ビーストの走行性能を支える重要な要素として、足回りとブレーキシステムの存在があります。このマシンは、単なる外観改造車ではなく、V型12気筒という大出力エンジンを安全かつ確実に制御するために、「一流の足回り」と「確実に止まるブレーキ廻り」を装備しています。
これは公式サイトで明示されている設計哲学で、パワーの大きさに見合った制動性能が実装されていることを示唆しています。極太のタイヤサイズ(リア345/25R20)は、この強力なエンジンからのトルクを路面に伝達する際に、グリップ力を最大化するための選択です。ワイド&ロープロファイルタイヤの採用により、コーナリング時の剛性感も飛躍的に向上しています。
また、サイドミラーの設計にも細かい配慮がうかがえます。2本支柱のシルエットを採用することで、幅広いボディラインと調和させながらも、戦闘的なイメージを演出しています。こうした細部の設計が、新型ビースト全体の統一感を生み出しており、単なるパーツ組み換えではなく、トータルデザインアプローチが取られていることが明確です。
新型ビーストについて詳しくはこちら。
バリュープログレス公式サイト - 和製スーパーカー「BEAST」
新型ビーストのニュース詳細については以下を参照。
くるまニュース - 新型ビースト開発のプロセス