2023年7月3日に施行された車検ステッカーの貼り付け位置変更は、無車検運行防止対策として実施されました。従来の規定では「前方から見えやすい位置」とされていましたが、新規定では「前方かつ運転席から見えやすい位置」に変更されています。
この変更により、運転者が車検の有効期間をより意識しやすくなることが期待されています。従来の位置では、ルームミラーの裏側に貼られることが多く、運転者が車検満了日を意識しない限り見ることがありませんでした。
国土交通省では、右ハンドル車の場合はフロントガラスの右上角、左ハンドル車の場合は左上角に貼り付けることを推奨しています。この位置変更により、運転者の視界に入りやすくなり、車検の受け忘れ防止効果が期待されています。
新しい貼り付け位置には重要な例外規定が設けられています。「上記位置で運転者の視野を妨げる場合は、運転者の視野を妨げない前方かつ運転席から見やすい位置」という但し書きが付けられています。
この例外規定が適用される具体的な条件として、以下のケースが挙げられます。
例外規定を適用する場合の具体的な貼り付け位置として、国土交通省担当者は以下の場所を例示しています。
重要なのは、例外規定を適用する場合でも「前方かつ運転席から見やすい位置」という基本原則は守らなければならないことです。
実際の車検現場では、車検ステッカーの貼り付け位置について柔軟な対応が取られています。フロントガラスの着色部分がある車両については、着色された部分を除いた「前方かつ運転席から見えやすい位置」に貼り付けることが明確化されています。
貼り付け位置の変更対象となるのは、2023年7月3日以降に新規・継続を含む全ての検査を受けた車両です。すでに貼られている車検ステッカーについては、位置を変更する必要はありません。
車検業者や整備工場では、車両の構造や運転者の視界を考慮して、最適な貼り付け位置を判断しています。特に輸入車や特殊車両については、個別の判断が必要となるケースが多く見られます。
道路運送車両法第66条では車検ステッカーの表示義務が定められており、指定の位置に貼り付けしなかった場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
車検ステッカーの貼り付け位置変更から約1年が経過した現在でも、ユーザーからは賛否両論の意見が寄せられています。肯定的な意見として「あまり気にならない」「そんなに問題ないかな」という声がある一方で、「邪魔!」「目障りに感じる」といった否定的な意見も多数見られます。
特に推奨されている右端(右ハンドルの場合)に貼ることで、ドライバーの視界に入りやすいことから、運転時に違和感を感じるユーザーが少なくありません。
変更から1年経った現在でも、以下のような意見が継続して寄せられています。
また、無車検運行防止効果についても「ステッカーの位置変えても車検忘れる人いるだろ」「変更位置変えても意味ないと思う」といった疑問視する声も多く聞かれます。
車検ステッカーの位置変更には、実は高度な技術的検討が背景にあります。国土交通省では、運転者の視認性を高めるため、車検ステッカーの字体やサイズの見直しも同時に実施しています。
従来の車検ステッカーでは、車内側に記載される有効期間満了日の視認性が課題となっていました。新しい規定では、運転席からの視認性を向上させるため、以下の改良が加えられています。
また、車検ステッカーの材質についても検討が重ねられており、長期間の使用に耐える耐久性と、剥がしやすさのバランスが追求されています。
さらに、デジタル化の進展に伴い、将来的には車検ステッカーの電子化も検討されています。現在の車検証の電子化に続き、車検ステッカーについてもQRコードやICチップを活用した電子化が研究されており、物理的な貼り付け位置の問題を根本的に解決する可能性があります。
これらの技術的背景を理解することで、現在の位置変更が単なる規則変更ではなく、将来的な車検システム全体の改革の一環であることが分かります。運転者にとっては一時的な不便さを感じるかもしれませんが、長期的には車検制度の効率化と安全性向上に寄与する重要な変更といえるでしょう。
車検ステッカーの位置変更は、自動車業界全体のデジタル化と安全性向上の流れの中で位置づけられる重要な施策です。今後も技術の進歩とともに、より使いやすく効果的な車検システムの構築が期待されています。