ダイハツ・セニアは2004年にデビューした7人乗りコンパクトMPVで、ダイハツとトヨタの初の共同開発車として誕生しました。車名の「XENIA」は、ギリシャ語で「おもてなしの概念」を意味し、「ゲストの友情」という意味が込められています。
現在までに3世代のモデルが展開されており、累計販売台数は約68万台に達し、ダイハツがインドネシアで販売する商品において最大の販売実績を誇ります。トヨタブランドでは「アバンザ」として販売されており、新興国市場での重要な戦略車種となっています。
初代モデル(2004-2011年)は後輪駆動を採用し、1.0Lと1.3Lエンジンを搭載していました。2代目(2011-2021年)では燃費性能や乗り心地、静粛性の向上が図られ、3代目(2021年~)では前輪駆動化とDNGAプラットフォームの採用により、大幅な進化を遂げています。
現行の3代目セニアは、ダイハツの新世代プラットフォーム「DNGA-B」を採用した初のBセグメント小型車です。ボディサイズは全長4,395mm×全幅1,730mm×全高1,690-1,700mmで、ホイールベースは2,750mmとなっています。
パワートレインには2種類のエンジンが用意されています。
両エンジンともDual VVT-i可変バルブタイミング機構を搭載し、トランスミッションは5速MTまたはCVT(D-CVT)を組み合わせています。駆動方式は3代目から前輪駆動(FF)に変更され、燃費性能と室内空間の向上を実現しています。
最低地上高は195mmと高めに設定されており、日本のシエンタやフリードと比較して、より悪路走破性を重視した設計となっています。
セニアの価格帯は、インドネシア現地価格で2億2,600万ルピア(約200万円)から2億9,280万ルピア(約260万円)となっています。この価格設定は、新興国市場における300万円以下の車両需要に対応したものです。
特に注目すべきは、2024年に追加されたスポーティ仕様「セニア ADS」です。このモデルは最上級グレードにパッケージオプションとして設定され、価格は2億5,025万から2億8,385万ルピア(約235万から270万円)となっています。
セニア ADSの特徴:
この価格帯は、日本の軽自動車の上級グレードと同程度であり、7人乗りのコンパクトMPVとしては非常にコストパフォーマンスに優れています。
3代目セニアには、ダイハツの予防安全システム「スマートアシスト」(現地名:Advanced Safety Assist)がリーズナブルな価格で設定されています。これは新興国市場において、安全装備の普及を促進する重要な取り組みです。
エクステリアデザインでは、シャープな造形のLEDヘッドランプや精悍なフロントグリル、新デザインのLEDコンビネーションランプを採用し、従来モデルよりもスポーティで上質な外観を実現しています。
内装面では、モダンなヘッドユニットインターフェースが搭載され、ドライバーと乗員に新しいエンターテインメント体験を提供します。また、多彩で便利なシートアレンジの採用により、荷室の拡大と利便性の向上が図られています。
興味深いのは、リアドアにヒンジ式(スイング式)を採用している点です。日本のシエンタやフリードのようなスライドドアではありませんが、これにより製造コストを抑制し、手頃な価格設定を実現しています。
現在、日本では物価上昇に対して収入の増加が追いつかない状況が続いており、東南アジア向けのコンパクトで安価な3列シートMPVの日本導入を望む声が自動車メディアを中心に高まっています。
セニアと同様のカテゴリーには、ホンダBR-V、三菱エキスパンダー、スズキエルティガといったクロスオーバー寄りミニバンがあり、これらのモデルの日本導入に対する期待も高まっています。
実際に、セニアは過去に日本でも販売されていた経緯があります。2006年から2016年まで販売されたダイハツビーゴ&トヨタラッシュは、初代・2代目セニアと同じプラットフォームを使用していました。
現在のセニアが日本市場に導入される場合、以下のような優位性が考えられます。
ただし、日本の安全基準や環境規制への適合、スライドドアへの変更など、日本市場向けの仕様変更が必要となる可能性があります。
インドネシア市場でのセニアの成功は、新興国における手頃な価格の7人乗りMPVに対する強いニーズを示しており、日本市場においても同様の需要が存在する可能性があります。特に、子育て世代やアウトドア愛好家にとって、コンパクトで経済的な7人乗り車両は魅力的な選択肢となるでしょう。
ダイハツの公式発表によると、セニアはインドネシア市場において新しいジャンルを開拓した基幹車種として位置づけられており、今後も継続的な改良と市場拡大が期待されています。