ハザードランプの正式名称は「非常点滅表示灯」で、道路交通法施行令第18条により使用が義務付けられているのは以下の2つのケースのみです。
これらの法定用途以外での使用について、道路交通法では明確な禁止規定が存在しません。しかし、本来の「危険を知らせる」という目的から逸脱した使用であることは間違いありません。
興味深いことに、警察庁交通局は「弁護士ドットコムニュース」の取材に対して「直ちに違法とは解されません」と回答しており、山口県警も「とりあえず問題はない」との見解を示しています。
サンキューハザードが違法行為として処罰される可能性があるのは、以下のような状況に限定されます。
安全運転義務違反に該当するケース
実際の取り締まりでは、サンキューハザード単体での違反切符は極めて稀で、事故や危険運転と併せて問題視されるケースがほとんどです。
地域による解釈の違い
地方によってはサンキューハザードの意味が異なることがあり、関西地方では「先に行け」という意味で使われることもあります。このような地域差が、法的判断を複雑にしている要因の一つです。
法的リスクを完全に回避したい場合は、以下の代替手段が推奨されます。
視覚的な感謝表現
音による感謝表現
これらの方法は法的問題が一切なく、相手にも感謝の気持ちが伝わりやすいとされています。特に、手を上げる行為は国際的にも理解されやすい感謝表現です。
自動車教習所では、サンキューハザードについて興味深い対応を取っています。
教習所の公式スタンス
指導員の個人的見解
多くの指導員は、サンキューハザードの存在を認識しつつも、法的グレーゾーンであることを理由に積極的な推奨は避けています。代わりに、正しいハザードランプの使用方法と、感謝を伝える適切な方法を指導しています。
免許更新時の講習内容
免許更新時の講習では、サンキューハザードに関する言及はほとんどありません。これは、公的機関として法的に曖昧な行為を推奨できないという立場を反映しています。
サンキューハザードの違法性を巡る議論の背景には、日本独特の運転文化があります。
トラック業界から始まった文化
サンキューハザードは、もともとトラックなどの職業ドライバー間で始まったコミュニケーション手段でした。長距離運転が多い職業ドライバーにとって、お互いの安全運転を支え合う重要な意思疎通手段として発達しました。
一般ドライバーへの普及過程
1990年代頃から一般ドライバーにも徐々に普及し、現在では多くのドライバーが当然のマナーとして認識しています。この普及過程で、本来の法的位置づけと実際の使用実態に乖離が生じました。
世代間の認識差
若い世代ほどサンキューハザードを当然のマナーと考える傾向があり、高齢者世代では「本来の使い方ではない」という意見が多く見られます。この世代間ギャップが、違法性論争を複雑化させています。
海外との比較
欧米諸国では、サンキューハザードのような習慣はほとんど見られません。代わりに、手を上げる、ライトを点滅させるなどの方法が一般的です。日本のサンキューハザード文化は、国際的に見ても特殊な現象と言えるでしょう。
現在、自動車メーカーの中には「サンキューボタン」のような専用機能の搭載を検討している企業もあり、将来的にはより適切な感謝表現手段が提供される可能性があります。