マツダは2025年1月の東京オートサロン2025で、長年ファンから要望されていた2L幌仕様のロードスターを「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」として正式発表しました。これまでマツダは「最良のロードスターは1.5Lモデル」という方針を貫いてきましたが、ついにその方針を転換することになりました。
この決定に至るまでには社内での激しい議論があったとされ、「日本では2リッターの幌は出さない」という勢力が存在していたことも明らかになっています。しかし、スーパー耐久レースでの2Lモデルの活用や、海外市場での成功を受けて、ついに日本市場への投入が決定されました。
発売時期は2025年秋に商談予約受付を開始し、2025年内の販売開始を予定しています。これは現行ND型ロードスターのフィナーレを飾るモデルとして位置づけられており、エンジン搭載車としての集大成的な意味合いも持っています。
新しい2L幌仕様のロードスターには、2つのグレードが設定されています。通常モデルはRFと同じ184psの2.0L SKYACTIV-Gエンジンを搭載し、価格は500万円台からとなります。一方、限定200台の「12R」は専用チューニングにより200psまでパワーアップされ、価格は700万円台に設定されています。
12Rの特徴として、エンジンは人の手によって専用パーツを使って組み上げられ、冷却系の強化も図られています。足回りには専用チューンのビルシュタイン製車高調整式ダンパーやブレンボ製ブレーキシステム、レイズ製鍛造アルミホイールが装備されます。
インテリアには日常での乗降性とサーキット走行時のホールド性を両立させた専用設計のフルバケットシートが装備され、ダッシュボードやセンターコンソールにはアルカンターラ調の表皮が貼り込まれるなど、質感も大幅に向上しています。
500万円台という価格設定について、多くのファンから「高い」という声が上がっています。現行のRF(ハードトップ)が379万6千円からスタートすることを考えると、確かに大幅な価格アップとなります。
しかし、この価格には理由があります。まず、このモデルはマツダの正式なカタログモデルではなく、「MAZDA SPIRIT RACING」というサブブランドによる特別仕様車という位置づけです。トヨタのGRシリーズや日産のNISMO仕様のような、メーカー系チューニングブランドの製品として考える必要があります。
実際に装備される専用パーツを考慮すると、新規開発のエアロパーツ、専用チューンのビルシュタイン製サスペンション、ブレンボ製ブレーキシステム、レイズ製鍛造ホイールなど、アフターマーケットで同等の装備を揃えようとすると相当な金額になることを考えれば、500万円台という価格も決して高くないという見方もできます。
予算500万円で考えた場合、新しい2L幌仕様を選ぶか、既存のRFを購入して自分好みにカスタマイズするかという選択肢があります。
RFのRSグレードは、レカロシートとビルシュタインサスペンション、タワーバーなどが標準装備されており、BBSホイール&ブレンボブレーキをオプション選択すると470万円超となります。この価格は新しい2L幌仕様と30万円弱しか変わりません。
開放感を重視するなら幌仕様が圧倒的に有利ですが、RFには遮音性の高さというメリットがあります。特に中高速域でのキャビン環境はRFが一線を画しており、日常使いでの快適性を重視するならRFも魅力的な選択肢となります。
また、RFは既に市場に出回っているため、中古車市場での選択肢も豊富で、予算に応じて様々なグレードから選択できるという利点もあります。
幌仕様のロードスターを選ぶ際に重要なのが、ソフトトップのメンテナンスです。マツダの取扱説明書によると、幌は高品質な生地を使用していますが、手入れ方法を誤ると生地が硬化したり、シミや光沢ムラを起こす可能性があります。
定期的な水洗いが必要で、毛のやわらかいブラシで砂埃を取り除き、やわらかいスポンジやセーム皮で洗うことが推奨されています。ボディー用ワックスや油脂類が付着した場合は、水で薄めた中性洗剤(約5%)を使用する必要があります。
また、ドレーンフィルターの清掃も年に1回程度行う必要があり、これを怠ると室内に水が入る可能性があります。自動洗車機や高圧洗車機の使用は禁止されており、シンナーやガソリンなどの有機溶剤の使用も厳禁です。
2Lエンジン搭載により、1.5Lモデルと比較して燃費は若干悪化することが予想されますが、その分トルクフルな走りが楽しめるため、走行性能を重視するユーザーには十分なメリットがあります。
現在、自動車業界は電動化の波が押し寄せており、内燃機関を搭載したスポーツカーの将来性について不安視する声もあります。しかし、マツダは「エンジンを諦めない」という方針を明確にしており、カーボンニュートラルに対応した内燃機関技術の開発を継続すると発表しています。
ロータリーエンジン開発部門の再結成も発表されており、北米エミッションへの適合マップを取得するなど、技術開発は着実に進展しています。これは内燃機関搭載車の継続的な開発への強い意志を示しており、ロードスターの将来性についても楽観的に考えることができます。
限定200台の12Rについては、希少性から将来的な価値向上も期待できます。一方、通常モデルについては特に限定数が設定されていないため、じっくりと検討してから購入することが可能です。
ただし、現行ND型のフィナーレモデルという位置づけを考えると、次期モデルへの移行時期も視野に入れて購入タイミングを検討する必要があります。電動化の流れを考慮すると、純粋な内燃機関搭載のロードスターとしては最後のモデルになる可能性もあり、その意味では歴史的価値を持つモデルとなるかもしれません。
購入を検討している方は、2025年秋の商談予約受付開始に向けて、資金計画や仕様の検討を進めておくことをお勧めします。特に12Rについては限定200台のため、早期の予約が必要になると予想されます。