レーザーパトカーは、パトカーのルーフ上に設置された赤色灯の間に「LSM-100」と呼ばれる東京航空計器製のレーザー式速度測定装置を搭載した最新の取締車両です。この装置は黒っぽい開口部にレーザースキャンセンサーとCCDカメラが設置されており、レーザー光を照射して走行車両の速度を瞬時に測定します。
従来のレーダーパトカーとの最大の違いは、レーザーパトカーが無線従事者の資格を必要としないことです。レーダー式の場合、Xバンド(10.525GHz)の電波を使用するため、操作には第二級陸上特殊無線技士以上の資格が必要でした。しかし、レーザー式では特別な資格が不要なため、より多くの警察官が操作できるようになっています。
レーザーパトカーの外観的特徴として、赤色灯間の測定装置部分が黒っぽい開口部になっていることが挙げられます。これに対してレーダーパトカーは白っぽい開口部となっており、見分けることが可能です。
レーザーパトカーによる取締は、建物や木々の陰など、ドライバーから見えにくい場所に車両を駐車することから始まります。警察官は車内で待機し、速度超過と思われる車両を発見すると、その都度レーザー光を照射して速度を測定します。
測定は前方からだけでなく、後方からも可能です。対向車線の路肩に停車したレーザーパトカーが、遠ざかっていく車両の速度を測定するケースも確認されています。この柔軟性が、従来の取締方法と大きく異なる点です。
速度違反が確認されると、即座に赤色灯を点灯させサイレンを鳴らして追尾を開始します。測定から追尾開始までの時間は非常に短く、ドライバーが気づいた時には既に測定が完了していることがほとんどです。
追尾距離は約200メートル程度とされており、この間にドライバーがサイドミラーで赤色灯の点滅に気づいて減速すれば、検挙を免れる可能性もあります。しかし、この猶予時間はわずか数秒程度と非常に短いのが現実です。
レーザーパトカーの配備は北海道から始まり、現在では熊本県、静岡県、沖縄県、岩手県、佐賀県など全国各地に拡大しています。北海道での導入理由は、極寒の冬季に警察官が屋外でネズミ捕りを行うのが困難なためです。レーザーパトカーなら車内で待機しながら取締が可能で、真冬でもゲリラ的な速度取締を実施できます。
同様の理由で、酷暑となる沖縄県にも配備が進んでいます。気候条件に左右されない取締手法として、レーザーパトカーの需要は今後さらに高まると予想されます。
最新の情報では、北海道に新型レーダーパトカーも導入されており、従来のレーザーパトカーの約2倍の測定距離(推定80~100メートル)を持つとされています。この新型は前後両方向の車両を同時に監視できる機能も備えており、取締の効率化が図られています。
レーザーパトカーに対する根本的な対策は、法定速度の遵守以外にありません。しかし、安全運転を心がける上で知っておくべき注意点がいくつかあります。
まず、前車の挙動に常に注意を払うことが重要です。前車が急にブレーキを踏んだ場合、前方にレーザーパトカーが潜んでいる可能性があります。この場合は迷わず減速することが賢明です。
単独走行時は特に注意が必要です。レーザーパトカーは複数の車両が走行している状況よりも、単独走行車を狙う傾向があります。これは、車内からの視認による判断が必要なため、明らかに速度超過している車両を特定しやすいからです。
ドライブレコーダーの装備も推奨されます。レーザーによる速度測定の精度については、警察内部でも評価が定まっていないとされており、誤測定の可能性も完全には否定できません。ドライブレコーダーの映像から速度を割り出すことも可能なため、万が一の際の証拠として活用できます。
レーザーパトカーと従来の取締手法を比較すると、その革新性が明確になります。従来のネズミ捕りでは、警察官が路肩に立って速度測定を行うため、ドライバーからも発見されやすく、気象条件にも左右されていました。
覆面パトカーによる追尾取締では、ストップメーターを使用して違反車両と同じ速度で走行する必要があり、測定に時間がかかっていました。また、追尾中であることがドライバーに気づかれるリスクもありました。
レーザーパトカーはこれらの問題を解決し、瞬時の測定、悪天候での運用可能性、高い隠密性を実現しています。測定距離も従来のネズミ捕りより長く、ドライバーが気づく前に測定を完了できる点が大きな特徴です。
最新のレーザー探知機では、レーザーパトカーからのレーザー光を探知できる製品も登場していますが、ステルス性の高い取締方法のため、警告された時点で既に測定済みである可能性が高いのが現実です。
効果的な対策として、レーザー探知機の情報を参考にしつつ、常に法定速度を意識した運転を心がけることが最も重要です。また、取締ポイントの情報を搭載したナビゲーションアプリの活用も一定の効果が期待できますが、レーザーパトカーの機動性を考慮すると、過信は禁物です。
レーザーパトカーの普及により、速度違反の取締は新たな段階に入ったと言えるでしょう。ドライバーにとっては、より一層の安全運転意識が求められる時代となっています。