レクサスがタクシーとして使用できないという認識は完全な誤解です。道路運送法や国の規制において、特定の車種をタクシーとして使用してはいけないという決まりは存在せず、制度上はレクサスでタクシー営業を行うことが完全に可能です。
この誤解が生まれる背景には、レクサス車の高価格帯とタクシー業界で求められるコスト効率とのギャップがあります。通常のタクシー運行では以下の要素が重視されます。
一般的なタクシー車両であるトヨタの「JPNタクシー」は、LPG(液化石油ガス)燃料を使用し、燃料費を大きく抑えられます。一方でレクサスの多くはガソリン車もしくはハイブリッドであり、燃料コストが割高になるほか、タイヤやブレーキといった消耗品のコストも高額になります。
そのため、法人タクシー会社が複数台のレクサス車を導入するのは現実的ではなく、導入されるケースの多くは個人タクシーや特別なサービスに限定されています。
実際にレクサスをタクシー車両として導入している事例が存在します。東京都練馬区の国産自動車交通では、2017年に法人タクシーとして初めて高級車「レクサス」をタクシー車両に導入しました。
現在では以下の車種を運用しています。
導入のきっかけについて、国産自動車交通の代表を務める荻野嘉彦氏は「先代の社長の『サービスの質改善と労働環境の向上を目指す』というひとことがきっかけで導入を決めました」と語っています。
お客様からの評価は非常に良好で、「いつもは短い距離しか乗らないお客さまも、『せっかくなら駅じゃなくて家まで行こうかな』というように、レクサスタクシーを気に入ってくださる方もいます」という反応を得ています。
国産自動車交通では2019年時点で5台目のレクサスタクシーを導入しており、継続的な拡大を図っていることがわかります。これは顧客満足度の高さとビジネス的な成功を物語っています。
レクサスをタクシーとして利用する際の料金は、通常のタクシーよりも大幅に高額になります。これは車両そのものの価格に加えて、提供されるサービスの質や快適性が大きく影響しているためです。
料金設定の例:
このような料金設定は、通常のタクシー業務というよりも、ハイヤーや観光タクシーに近い形式で運用されることが多いためです。主な利用シーンは以下の通りです。
料金体系は定額制や時間制など、利用目的に応じて柔軟に設定されている場合が多く、事前に見積もりをとるのが一般的です。また、予約が必須であるケースも多く、突然の利用には対応できないこともあるため注意が必要です。
レクサスタクシーは「移動手段」というより「移動を含めたサービス体験」に重点を置いた料金体系になっている点が最大の特徴といえます。
2024年1月、MKタクシーを運営するエムケイがハイヤー車両としてレクサスの最高級ミニバン「LM」2台を導入しました。この導入は「走るファーストクラス」というコンセプトで大きな注目を集めています。
レクサスLMの特別装備:
料金設定は3時間で46,000円、以降30分ごとに4,500円という超高額設定となっています。これは従来のレクサスタクシーをさらに上回る最高級サービスです。
パーティション上部には乗員とその周辺温度を検知するセンサーを装備しており、顔、胸、大腿、下腿の4カ所の温熱感を推定することで、常に快適な車内温度を実現します。この技術は一般的なタクシーでは見られない革新的な機能です。
レクサスタクシーの導入は、運転手の労働環境改善にも大きな効果をもたらしています。国産自動車交通の荻野氏によると、担当乗務員からは以下のような好評価を得ています。
ドライバーからの評価:
「レクサスを語れるタクシードライバーは少ないですからモチベーションの向上にも役立っていると思います」という荻野氏のコメントからも、仕事への意気込み向上が見て取れます。
高級モデルらしい快適性や機能性の高いレクサスで業務を行うことにより、先代の社長が目指していた労働環境の向上にひと役買っているうえ、ドライバーの職業的プライドや満足度も向上しています。
この取り組みは、タクシー業界全体の労働環境改善や人材確保の新しいアプローチとして注目されており、他の事業者への波及効果も期待されています。従来の「安価で効率的」という発想から、「高品質で差別化」という戦略への転換を示す先進事例といえるでしょう。
また、リピーター確保や売上向上という経営面でのメリットも実証されており、レクサスタクシーは単なる話題作りではなく、持続可能なビジネスモデルとして成立していることが証明されています。