レクサスのスピンドルグリルは、ブランドの長年の課題を解決するために生まれました。1989年から北米市場を中心に展開してきたレクサスは、高品質で高性能なクルマを送り出してきましたが、外観上の統一感や高級車らしい押し出し、ブランディングには長年苦労を重ねていました。
2012年の「GS」から採用が始まったスピンドルグリルは、2個の台形のうち上側を反転して繋げたような独特な形状が特徴です。「スピンドル」とは紡績機の糸を巻き取る紡錘を意味しており、この名称からもレクサスの精密さと職人技への敬意が感じられます。
現在では、顔の大部分をスピンドルグリルが占めるほどにまで拡大し、街中で見かけたら一目でレクサス車と分かる個性的なデザインとなっています。この統一されたフロントフェイスは、レクサスブランドの強力なアイデンティティとして機能しています。
レクサスのスピンドルグリルは、各モデルによって異なる表情を見せています。フラッグシップモデルであるLC、LS、LXを比較すると、同じスピンドルグリルでもデザインやボディスタイルの違いで与える印象が全然違うことがわかります。
クーペモデル LC
セダンモデル LS
SUVモデル LX
これらの違いは、各車種のキャラクターや用途に応じて細かく調整されており、レクサスの設計思想の奥深さを物語っています。
レクサスは2024年に発表された新型RXから、従来のスピンドルグリルを進化させた「スピンドルボディ」という新しいコンセプトを導入しました。これは、LEXUSの象徴であったスピンドルグリルからメッキ枠をはずし、塊を強調したデザインです。
スピンドルボディの特徴。
さらに、「シームレスグリル」という技術も採用されています。これは、スピンドルボディと冷却機能の両立のため、マーク下端までボディ色としボディとグリルを融合させた表現で、新しいLEXUSの独自性に挑戦したものです。
この進化は単なるデザイン変更ではなく、電動化という自動車業界の大きな変化に対応した機能的な改良でもあります。
自動車業界では多くのメーカーが統一フェイスを採用していますが、レクサスのスピンドルグリルは特に印象的な存在です。他ブランドの統一フェイスと比較すると、その独自性がより明確になります。
他ブランドとの比較
レクサスのスピンドルグリルが他と異なるのは、その複雑さと立体感です。単純な幾何学的形状ではなく、紡錘という工業製品からインスピレーションを得た有機的な曲線が特徴的で、見る角度によって表情が変わる奥深さがあります。
この複雑さは製造コストの増加につながりますが、レクサスが高級ブランドとして追求する品質と個性の表現には欠かせない要素となっています。
スピンドルグリルの美しさを保つためには、適切なメンテナンスが重要です。その複雑な形状ゆえに、清掃や手入れには特別な注意が必要となります。
メンテナンスのポイント
また、スピンドルグリルは単なる装飾ではなく、エンジン冷却という重要な機能も担っています。グリルの目詰まりは冷却効率の低下につながるため、定期的な清掃が車両の性能維持にも直結します。
近年のモデルでは、グリルシャッターという技術も採用されており、走行状況に応じて自動的に開閉することで空気抵抗を減らし、燃費向上に貢献しています。これは、デザインと機能性を両立させるレクサスの技術力の表れでもあります。
さらに、スピンドルグリルの形状は歩行者保護の観点からも設計されており、万が一の衝突時に衝撃を分散させる構造になっています。美しさだけでなく、安全性も考慮された総合的なデザインといえるでしょう。