2024年11月5日から8日にかけてラスベガスで開催された世界最大級のアフターマーケット見本市「SEMAショー2024」において、トヨタは注目のオープン仕様ランドクルーザー「ROX」を世界初公開しました。
SEMAショーは毎年、カスタムカーやチューニングカーの最新トレンドが集まる場として知られており、近年トヨタは積極的な姿勢でこのイベントに参加しています。今回のROXは、米国で発売されたばかりのランドクルーザー(日本名:ランドクルーザー250)をベースとしたカスタムカーとして、来場者から特に大きな注目を集めました。
ROXの設計を担当したのは、トヨタがアメリカ合衆国に設立したデザインスタジオ「CALTY Design Research」です。このスタジオは、過去の象徴的なオープントップのランドクルーザーを現代に再定義するというコンセプトで、ROXの開発に取り組みました。
「レクリエーションオープンエクスペリエンス」をコンセプトに製作されたROXは、ランドクルーザー250をベースにボディをオープンに改造し、キャビンスペースと荷台スペースを自由に拡張できる構造を実現しています。
ROXの最も印象的な特徴は、そのオープンエアー設計にあります。乗客がアウトドアを最大限に満喫できるよう、キャビンスペースのルーフには前後にスライドするソフトトップが装着されています。この機構により、天候や使用シーンに応じて柔軟に屋根の開閉が可能となっています。
エクステリアデザインでは、特別に設計されたワイドフェンダーが採用されており、よりアグレッシブで力強い外観を演出しています。また、18インチホイールには巨大なタイヤが装着され、オフロード性能の向上と同時に、視覚的なインパクトも大幅に向上させています。
内装においても、豪華なオレンジ色の内装が採用されており、アウトドアシーンにふさわしい明るく活動的な雰囲気を演出しています。この色彩選択は、自然環境との調和を意識しながらも、モダンで洗練された印象を与える絶妙なバランスを実現しています。
スケルトンドアの採用も注目すべき特徴の一つです。これにより、従来のドアよりも軽量化を図りながら、オープンエアーの開放感をより一層高めることに成功しています。
今回のROXの発表は、単なる新しいカスタムカーの披露以上の意味を持っています。実は、ランドクルーザーには長い歴史の中で数多くのオープン仕様が存在してきました。
歴代のランドクルーザーモデルには、開閉式ソフトトップや幌式ドアを備えたワイルド仕様が数多く存在し、これらは「オフロード4WDは自然と人間を近づけるクルマだから、できれば屋根もドアもないほうがいい」という哲学を体現していました。
この考え方は、ジープ・ラングラーやフォード・ブロンコといった競合車種でも共通しており、これらの車両はルーフやドアを脱着することができる設計となっています。ROXは、この伝統的なオープンカー文化を現代のランドクルーザーに復活させる試みとして位置づけられています。
特に注目すべきは、トヨタBJから続く「70」シリーズの存在です。70シリーズは「泥臭く、地道に働き続けるクルマがアイコンにまで上り詰めた」存在として、まさに伝説そのものとなっています。SNSでも大勢のファンから「ずっと売り続けてくれ」「ランクルらしさを変えないで」という声が多数寄せられており、その声に応えてアップデートされた70シリーズも発表されています。
ROXの技術的な側面を詳しく見ると、単なるデザイン変更にとどまらない本格的な機能性の追求が見て取れます。キャビンスペースと荷台スペースを自由に拡張できる構造は、アウトドア愛好家にとって非常に実用的な機能です。
前後にスライドするソフトトップシステムは、従来の固定式ルーフとは異なり、使用状況に応じて段階的な開閉が可能です。これにより、完全なオープンエアーから部分的な日除けまで、様々なシーンに対応できる柔軟性を実現しています。
ワイドフェンダーの採用は、単なる見た目の変更ではなく、より大径のタイヤを装着することで、オフロード性能の向上を図っています。18インチホイールと巨大なタイヤの組み合わせは、悪路走破性を大幅に向上させ、本格的なオフロード走行にも対応できる仕様となっています。
また、スケルトンドアの採用により、従来のソリッドドアと比較して大幅な軽量化を実現しています。これは燃費性能の向上にも寄与し、環境性能と走行性能の両立を図っています。
現在のところ、ROXはコンセプトモデルとして発表されており、市販化については明確な発表がされていません。しかし、SEMAショーでの反響の大きさや、オープンカー市場の需要を考慮すると、将来的な市販化の可能性は十分に考えられます。
特に北米市場では、ジープ・ラングラーやフォード・ブロンコなどのオープン仕様SUVが高い人気を誇っており、ランドクルーザーのオープン仕様に対する潜在的な需要は相当なものと予想されます。
日本市場においても、アウトドアブームの継続やキャンプ文化の浸透により、オープンエアーを楽しめる車両への関心は高まっています。ランドクルーザー250の人気を考慮すると、オープン仕様の投入は大きな話題となることは間違いありません。
トヨタとしても、ランドクルーザーブランドの多様化と差別化を図る上で、オープン仕様の展開は戦略的に重要な意味を持ちます。特に、伝統的なランドクルーザーの価値観である「自然との一体感」を現代的に表現する手段として、ROXのようなオープン仕様は非常に有効です。
今後の展開としては、まず限定生産モデルとしての市販化、その後の反響を見て本格的な量産化という段階的なアプローチが考えられます。また、日本市場向けには、日本の道路事情や法規制に適合した仕様での展開も検討される可能性があります。
ROXの発表は、ランドクルーザーの新たな可能性を示すものであり、今後のSUV市場に大きな影響を与える可能性を秘めています。オープンエアーの魅力と本格的なオフロード性能を両立させたROXは、アウトドア愛好家にとって理想的な一台となることでしょう。