r36スカイラインの物語は、2022年8月にデザインディレクターのRoman Miah氏とAvante Design社が共同制作したレンダリング画像から始まりました。この「R36スカイラインGT-R」と名付けられたCGデザインは、6か月以上の設計期間と数百時間の3Dモデリング作業を経て完成し、SNSで瞬く間に話題となりました。
レンダリング画像の完成度は実車と見間違うほど高く、現行R35 GT-Rをベースとしながらも、R32、R33、R34の歴代スカイラインGT-Rのデザインエッセンスを巧みに融合させた斬新なスタイリングが特徴でした。特にフロントマスクはR34型の雰囲気を色濃く反映し、リアデザインにはR33を連想させる要素が盛り込まれています。
このレンダリング画像に対する世界中のファンからの反響は予想を上回るものでした。「素晴らしい」「古い外観を新しいモデルに導くのはいいアイデアだ」「なんてこった!こんな風に見えたら100%買っちゃう」といった称賛の声が殺到し、実車化を望む声が高まっていきました。
ファンの熱い要望に応える形で、r36スカイラインの実車化プロジェクトが始動しました。製造を担当するのは、このプロジェクトのためにドイツに設立されたアルティザン ビークル デザイン社です。同社はハノーヴァーに工場を構え、完全オーダーメイドのスペシャルモデル「アルティザンGT-R」として製造を進めています。
製造プロセスは非常に大がかりなもので、まずオーナーが持ち込んだR35 GT-Rをベースに、全てのボディパネルをカーボンファイバー製の専用品に交換します。これにより軽量化と高剛性化を同時に実現し、見た目の印象も劇的に変化させています。
特に注目すべきは、ヘッドライトとテールライトの交換です。これらはR34型を思わせるデザインの専用品が用意され、r36スカイラインの個性を決定づけるアイコンとなっています。内装も全面的にリビルドされ、カーボンファイバーパネルとアルカンターラレザーを組み合わせた高級仕様となっています。
アルティザンGT-Rには「トラックパッケージ」と「アルティメットパッケージ」の2つのグレードが用意されています。トラックパッケージでは、インタークーラーや燃料ポンプの交換により800馬力を実現し、排気系、ギアボックス、サスペンション、ブレーキシステムにも手が加えられます。
一方、アルティメットパッケージは更に過激な仕様となっており、排気量を4.1リッターにアップし、ターボチャージャーも交換することで1000馬力を発生します。ギアボックスのリビルドはもちろん、排気系、サスペンション、ブレーキ、エアロダイナミクスなどもレーシング仕様にアップグレードされます。
足回りにも妥協はありません。アルティメットパッケージには、ドイツの自動車部品メーカーであるビルシュタイン社製のショックアブソーバーや、イギリスのレーシングブレーキメーカーであるアルコン社製のビッグブレーキキットが装備されます。これらの高性能パーツにより、1000馬力という大パワーに対応できる足まわりを実現しています。
ボディカラーは青、紫、白、黒など全10色から選択可能で、同社のウェブサイトでは着せ替え機能や細かいカスタマイズにも対応しています。完全オーダーメイドの特性を活かし、オーナーの好みに合わせた仕様変更が可能となっています。
気になる価格設定ですが、r36スカイラインの製造費用は決して安くありません。ドナーカー(R35 GT-R)を持ち込む場合、トラックパッケージが36万9000ポンド(約7217万円)から、アルティメットパッケージが40万ポンド(約7824万円)からとなっています。
ドナーカーを持っていない場合は、アルティザン社が調達をサポートしてくれますが、別途ドナーカー代が必要となります。現在のR35 GT-Rの中古車価格を考慮すると、総額で1億円を超える可能性も十分にあります。
生産台数は全世界で36台限定となっており、この数字はR36という名称にちなんだものと考えられます。限定性の高さから、将来的にはコレクターズアイテムとしての価値も期待されています。
注文から完成までの期間については具体的な情報は公開されていませんが、完全オーダーメイドという性質上、相当な時間を要することが予想されます。2024年9月30日には生産版のデザインが公開され、実際の製造工程がSNSで随時公開されています。
r36スカイラインの実車化は、カスタムカー業界に新たな可能性を示しています。従来のアフターマーケットパーツによる改造とは異なり、完全にボディパネルを交換してデザインを一新するという手法は、まさに「リビルド」と呼ぶにふさわしいものです。
日本国内でも「これはカッコいいGT-R」「超絶イケメンでたまんねぇなぁ!」「めちゃくちゃカッコいいな」「やっぱR34のデザインが良かったからコレはカッコいい」といった称賛の声が多数寄せられています。特にR34世代のデザインを愛するファンからの支持は絶大で、現代の技術で蘇らせたクラシックデザインへの憧憬が感じられます。
一方で、日産公式のR36 GT-R開発についても注目が集まっています。日産は2024年3月に現行R35の2025年モデルをもって生産終了を発表し、次期型の開発を検討する旨を明かしています。環境性能とパフォーマンスの両立を軸とした開発方針が示されており、純エンジン車、ハイブリッド、電気自動車のいずれになるかは未知数です。
興味深いことに、過去には日産の海外法人がr36スカイラインのSNS投稿をシェアしたこともあり、公式も注目するモデルとなっていました。これは単なるファンアートを超えた影響力を持つプロジェクトであることを示しています。
r36スカイラインプロジェクトは、メーカー公式の次期型開発とは別の次元で、ファンの夢を現実化した画期的な取り組みと言えるでしょう。限定36台という希少性と、1000馬力という圧倒的な性能、そしてR34を彷彿とさせるノスタルジックなデザインの組み合わせは、GT-Rファンにとって究極の選択肢となる可能性を秘めています。
今後の展開としては、実際の完成車両の公開や試乗レポート、さらには日本への輸入可能性なども注目されるポイントです。また、このプロジェクトの成功が他の名車の「リビルド」プロジェクトにも影響を与える可能性があり、カスタムカー業界の新たなトレンドを生み出すかもしれません。