プロエースシティは、トヨタが欧州市場向けに販売する商用バンで、2019年の発表以来、特にポーランドでは高い販売実績を記録しています。グループPSA(プジョー・シトロエン)傘下のステランティスグループが設計・生産を担当し、プジョーではパートナー、シトロエンではベルランゴ、オペルではコンボとして販売されている同一プラットフォームの4兄弟車です。日本国内では正規販売されていないため、中古市場に出回る車両はすべて並行輸入車となります。これは正規ディーラーでのサポートが受けられない点に注意が必要です。
EMP2(Efficient Modular Platform 2)プラットフォームを基本とし、プロエースの弟分として位置づけられたプロエースシティは、商用バンと乗用ミニバン「ヴァーソ」の2つの仕様が存在します。中古市場で見かける車両の大多数はドイツ仕様で、これはEU離脱による英国仕様への影響やディーゼルエンジンとMT、8速ATの設定がドイツ仕様に存在することが理由とされています。
参考情報:全長4403~4753mm、全幅1848mm、全高1796~1825mmのボディサイズで、ノアとアルファードの中間的な立ち位置にあります。
パワートレーンは2つの選択肢があります。ガソリン仕様は1.2リッター直列3気筒ターボで、110馬力版と130馬力版の2種類が展開されており、ディーゼル仕様は1.5リッター直列4気筒ターボで、102馬力版と130馬力版が設定されています。ガソリン110ps仕様とディーゼル102ps仕様には5速MTが組み合わされ、ディーゼル130ps仕様には6速MT、ガソリン・ディーゼルの130ps仕様には8速AT(EAT8)が設定されています。
欧州市場での小排気量のダウンサイジング戦略により、日本国内では経験の少ないPSA製エンジンが採用されています。ガソリン仕様のPureTech 1.2ターボは、高い過給圧により少ない排気量で十分なパフォーマンスを提供しますが、中古市場での部品入手性やメンテナンスコストは事前に確認が必須です。ディーゼルのBlueHDi 1.5ターボは、トルクが豊富で商用バンとしての実用性に優れています。
参考情報:PSA製エンジンの信頼性と耐久性について、欧州での長期実績データ
パワートレーン詳細とエンジン特性の解説
並行輸入業者による新車販売時点では、税抜き435万円程度の販売例が報告されています。この価格に登録手続き費用や諸経費として20~30万円程度が加算され、消費税を含めると総額510万円前後の購入予算が必要となっていました。中古市場での車両相場は車齢や走行距離によって大きく変動するため、複数の並行輸入業者で比較検討が重要です。
中古プロエースシティの価格決定要因としては、ボディタイプ(商用バンか乗用ミニバン・ヴァーソか)、ホイールベース(L1ショート版またはL2ロング版)、エンジン仕様(ガソリンまたはディーゼル)、トランスミッション(MT対AT)、座席配置(5人乗り2列シートまたは7人乗り3列シート)、仕様年式などが挙げられます。左ハンドル仕様がメインであることも、日本での再販が難しく中古相場を左右する要因となっています。
独自視点として、並行輸入車市場ではプロエースシティの認知度が比較的低く、ニッチなニーズに対応する販売店が限定的である点があります。これにより、販売価格の透明性が低く、交渉余地が存在する可能性がある反面、買い取り時の査定額が不利になる傾向も否めません。正規ディーラーでの下取り評価は極めて低く、並行輸入車専門の買い取り業者との比較が不可欠です。
内装は、2列シートの5人乗り仕様と3列シートの7人乗り仕様の2つが用意されており、両側スライドドアと跳ね上げ式のバックドアを採用しています。8インチタッチスクリーン式ディスプレイと3Dコネクトナビゲーションシステム、音声認識機能が備わり、EU規格のトヨタセーフティセンスも搭載されています。
フランス車流の合理的な作りが特徴で、快適性と実用性が重視された設計となっています。3列目シートを畳んだ状態での積載性は高く、商用用途と家族利用の両立が可能です。しかし、中古市場での個体差が大きく、海外での使用履歴によっては内装の劣化や故障が懸念されます。中古車購入時には、走行距離だけでなく、使用環境や直前所有者による保守状況の詳細確認が非常に重要となります。
参考情報:EU規格とトヨタセーフティセンスの安全性評価
内装装備と実用性の詳細レビュー
並行輸入車であるプロエースシティは、国内の一般的なトヨタディーラーでは修理対応が難しい場合があります。PSA製エンジンや8速AT(EAT8)、左ハンドル仕様特有の部品などは、入手困難性が高く、修理費用も割高になる傾向があります。並行輸入業者が経営する整備工場での保守管理が基本となるため、購入前に整備体制の確認と長期保証の内容を詳しく確認することが肝要です。
税務登録上の問題もあります。並行輸入車は輸入登録時に諸申請が必要であり、過去の登録手続きが不正確だと後々トラブルの原因となります。購入時に、前所有者からの名義変更書類や輸入時の申告書が完全に揃っているか、レポートで確認する必要があります。また、海外での不具合履歴や修復歴がないかについても、欧州での車両データベース照会が可能か販売店に確認しましょう。
中古プロエースシティは、正規ディーラーでの下取りが極めて低い評価になるため、売却時には並行輸入車専門の買い取り業者を活用することが現実的です。購入時点で将来の売却性を視野に入れ、ボディの状態、走行距離、修復履歴などを総合判断する必要があります。