オート三輪の歴史は1910年代の大阪にまで遡ります。当初はアメリカから輸入された自転車用補助エンジン「スミスホイールモーター」をフロントカーに取り付けたものが始まりでした。その後、1920年代に入ると英J.A.P製オートバイエンジンを搭載し、馬力と積載性を高めたオート三輪が登場しました。
純国産のオート三輪は1926年に広島の宍戸オートバイ製作所が製造したのが元祖とされています。メーカーによる本格的な生産は日本自動車(現・日産工機)が1929年から開始し、続いて発動機製造(現・ダイハツ)が1930年、東洋工業(現・マツダ)が1931年に市場参入しました。
現在、ダイハツ ミゼットの中古車価格は78〜300万円で取引されており、1959年から1998年製まで幅広い年式の車両が市場に出回っています。新車価格は設定されていませんが、その希少性から高値で取引される傾向にあります。
現代のオート三輪新車は、従来の内燃機関から電動化へと大きく舵を切っています。特に注目すべきは、トヨタのi-ROADから進化したリーン3です。このリーン3は2025年に台湾での発売を予定しており、価格は20万台湾元(約100万円)程度と設定されています。
リーン3の主要諸元は以下の通りです。
日本では原付ミニカー扱いとなるため乗員が1名に制限されますが、台湾では2名乗車が可能です。
世界各国でオート三輪の新車販売が活発化しています。イタリアのピアッジオ社は「ガンマ APE(アペ)シリーズ」を展開し、世界最大の三輪自動車メーカーとして知られるインドでは商用三輪車が大量生産されています。
カナダのポラリス・インダストリーズが製造する「ポラリス スリングショット」は、スポーツタイプの三輪車として注目を集めています。約760kgのボディに173馬力のGM製2.4リッターエンジンを搭載し、パワーウェイトレシオは4.4kg/PS前後を実現しています。日本でもホワイトハウス・オートモービルが輸入販売を予定しており、普通自動車免許で運転可能な3ナンバー登録車として販売される予定です。
岡山県のコアテックが開発している「eFalcon(イーファルコン)」は、リバーストライク型(前2輪・後1輪)のEVライトウェイトスポーツカーです。この車両は以下の特徴を持っています。
特筆すべきは、バッテリーを左右のサイドシル部に配置することで、スポーツカーらしい重量バランスを実現している点です。シャシーはCFRP製で軽量化を図り、前2輪はダブルウィッシュボーン式、後1輪はスイングアーム式のサスペンションを採用しています。
オート三輪新車の未来は、地方部の交通問題解決の鍵を握る可能性があります。バスやタクシーといった公共交通が脆弱化する中、リーン3のような多様なモビリティが補完的役割を果たすことが期待されています。
しかし、日本における法規制の課題も存在します。現在の道路交通法では、多くの三輪車が原付ミニカー扱いとなり、乗車定員や最高速度に制限があります。これらの規制緩和が進めば、より実用的な三輪車の普及が期待できるでしょう。
また、補助金制度の整備も重要な要素です。電動三輪車が補助金対象となれば、より手頃な価格での購入が可能となり、普及に弾みがつくと考えられます。
製造コストの削減も課題の一つです。現在の三輪車は少量生産のため、四輪車と比較して割高になる傾向があります。量産効果による価格低下が実現すれば、より多くのユーザーに受け入れられる可能性があります。
環境性能の向上も重要なポイントです。電動化により排出ガスゼロを実現できる三輪車は、都市部の環境改善に貢献する可能性があります。特に配送業務や短距離移動において、従来の四輪車に代わる選択肢として注目されています。
安全性の向上も継続的な課題です。三輪車特有の走行特性を考慮した安全装備の充実や、ドライバー教育の整備が必要となるでしょう。
オート三輪新車は、昭和の象徴から現代の革新的な移動手段へと進化を遂げています。電動化技術の進歩と法規制の整備により、今後さらなる発展が期待される分野といえるでしょう。