送りハンドルをサーキットで使う技術とコツ

サーキット走行で送りハンドルは有効なのか。レーシングドライバーが実践する押しと引きの使い分け、正確な舵角調整のテクニック、クロスハンドルとの違いまで解説します。サーキット初心者が知るべき送りハンドル操作の全てとは?

送りハンドルとサーキット

この記事のポイント
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送りハンドルの基本

握る位置を変えずにハンドルを操作する技術で、サーキットでは舵角の微調整がしやすい特徴があります

押しと引きの技術

プロレーシングドライバーが実践する押し手と引き手の使い分けで、正確なコーナリングを実現します

🎯
サーキット走行での注意点

カウンター操作や高速コーナーでの使い方など、サーキット特有の送りハンドル活用術を解説します

送りハンドルの基本操作とサーキットでの特徴

送りハンドルとは、ハンドルを握る手の位置をほとんど変えずに、曲がる方向へハンドルを操作する技術です。一般道では推奨されないこの操作方法ですが、サーキット走行では舵角の微調整がしやすいというメリットがあります。
参考)送りハンドルとは?ダメとされる理由について解説!

サーキットでは、レーシングドライバーの多くが送りハンドルを実践しており、特に遊びの少ないクイックなステアリング設定の車両では適している操作方法とされています。基本的な握り位置は9時15分、もしくは10時10分で、この位置から手を滑らせながらハンドルを操作します。
参考)http://www.green.dti.ne.jp/benkei/01lancia/lancia_daily188.html

送りハンドルの最大の特徴は、両手がハンドルから離れることがなく、タイヤのグリップ情報を常に手のひらで感じ取れる点です。サーキット走行では、路面からのインフォメーションを正確に把握することが速さにつながるため、この特性は重要な要素となります。
参考)ハンドルの切り方について 引くのか押すのかどちらがいいの? …

送りハンドル操作における押しと引きのテクニック

サーキットでの送りハンドルには、「押し手」と「引き手」という2つの基本テクニックがあります。右コーナーを曲がる場合、引き手方式では右手を12時の位置まで迎えに行き、そこから3~4時の位置まで引き下ろします。このとき左手は9時の位置でステアリングを滑らせながらキープし、さらに舵角が必要な場合は左手で押し上げていきます。
参考)プロレーシングドライバーの意見も真っ二つ! 「押す」もアリ「…

一方、押し手方式では左手を右方向に押してハンドルを回す操作が基本となります。この方法の利点は、ハンドルを180度回転させることができ、タイヤからのインフォメーションを感じやすい点です。引き手だとハンドルのキレ角は120~130度が限度となりますが、押し手なら180度の操作が可能になります。​
プロレーシングドライバーの中にも、押し派と引き派で意見が分かれています。最大舵角時に左手が11時付近にあると、押し上げた左手で肩と身体を支える形になり、ホールド性が高まって疲れにくくなるという利点もあります。自分の運転スタイルや車両特性に合わせて、どちらの方式を採用するか判断することが重要です。
参考)第3回 ステアリングはクルマへの鞭。上手く使うためには?

送りハンドルとクロスハンドルの使い分け

サーキット走行では、送りハンドルとクロスハンドルを場面に応じて使い分けることが求められます。クロスハンドルは、腕を交差させながらハンドルを回す方法で、交差点での右左折など低速で大きくハンドルを切る際に有効です。
参考)「運転がうまい!」と言われたい!! じゃあハンドルの握り方&…

送りハンドルは、両手がハンドルから離れず手の動きも大きくないため、見通しの悪い道やスピードを出しながらの走行中も比較的安全とされます。舵角の微調整がしやすい半面、慣れないと操作が難しく、充分な練習が必要です。​
サーキットではタイトコーナーなど切り幅が大きい場合を除き、基本的に送りハンドルが推奨されます。特にカウンターステアを当てる際、送りハンドルなら適正なカウンター量を把握しやすいという利点があります。クロスハンドルだと、腕を交差させる都合上、操作中に体が前傾姿勢となり、高速走行では安全性に欠けるケースもあります。
参考)ステアリングの回しかた(サーキット初心者編) href="https://basis.vc/2012/09/801" target="_blank">https://basis.vc/2012/09/801amp;#8211;…

📊 送りハンドルとクロスハンドルの比較

項目 送りハンドル クロスハンドル
適した場面 高速コーナー、舵角微調整​ 低速右左折、タイトコーナー​
操作速度 時間がかかる​

素早い操作が可能
参考)クルマの運転の基本 ~ハンドルの回し方~

安定性 両手が常にハンドルにある​ 腕が交差し前傾姿勢になる​
習得難易度 慣れが必要​

教習所で習う基本操作
参考)送りハンドルとは?クロスハンドルとの違いや内掛けハンドルなど…

タイヤ情報 手のひらで常に感知​ 持ち替え時に情報が途切れる​

サーキット初心者が送りハンドルで注意すべきポイント

サーキット走行で送りハンドルを使う際、初心者が最も注意すべきは正しいシートポジションです。シートに座って背中と背もたれをしっかりつけ、ハンドルの頂点を持った時に少し肘に余裕がある位置が理想的です。シートが遠すぎると送りハンドルの回数が増え、かえって操作が遅れる原因となります。​
ハンドルの握り方も重要なポイントで、場所は10時10分あたりを握り、親指に力を入れるのではなく小指や薬指でハンドルを握る感覚が推奨されます。手の甲が自分の方へ向く感じがベストで、この握り方によりタイヤのグリップ力を正確に感じ取ることができます。​
送りハンドルで最も危険なのは、カウンターステアを当てる時に適正なカウンター量が分からなくなることです。サーキット走行では、原則として送りハンドルは禁止とする指導もあり、タイトコーナーなどどうしても切り幅が大きい時にのみ使用することが推奨されています。初心者は、まず基本的なハンドル操作をマスターし、徐々に送りハンドルの技術を習得していくことが安全です。
参考)サーキット初心者必見!車で初めてサーキットを走るために知って…

送りハンドルで実現する舵角コントロールの精度向上

サーキット走行において、送りハンドルは舵角の精密なコントロールを可能にする技術です。レーシングラインを正確にトレースするには、ブレーキングポイント、ターニングポイント、クリッピングポイントで適切な舵角を維持する必要があります。送りハンドルなら、手の位置をほぼ固定したまま微調整ができるため、理想的なラインを走り続けることが可能です。youtube​​
サーキット走行の上級テクニックとして、曲がる前に最大舵角時の手の位置を予測し、一気に持ち替えて切る方法があります。一般的な送りハンドルのようにチョビチョビ切り足すのではなく、持ち替えは基本的に一回だけで完結させます。この技術を習得すると、ハンドル操作の無駄が減り、より速いラップタイムにつながります。
参考)http://www.carphys.net/drive/gsenser.html

タイヤと路面の関係を理解することも、送りハンドル操作の精度向上には不可欠です。タイヤグリップのトラクションスクエアをイメージしながら、コーナーの各地点でグリップのどの部分を使っているかを把握することで、最適な舵角調整が可能になります。送りハンドルは、この繊細なグリップ管理を手のひらの感覚で行える点で、サーキット走行に適した操作方法といえます。youtube​​
サーキット初心者向けの総合的なドライビング理論とテクニックの解説が参考になります(中納徹氏によるサーキット走行8つのコツ)
ブリヂストンのステアリング操作に関する詳しい技術解説(送りハンドルのメリット・デメリット含む)