オービス看板の設置は、単なる親切心ではなく、法的な必要性に基づいています。1980年代のオービス裁判闘争において、東京簡裁は重要な判決を下しました。
「速度違反で無制限に運転者の容貌を撮影すれば、肖像権侵害のおそれがあるとの誹りを免れない。制限速度を多少超えた程度で撮影するのは相当ではない」という判決内容は、現在のオービス運用の基礎となっています。
この判決により、以下の2つの条件が確立されました。
最高裁判所の判例でも、オービスで撮影した写真を速度違反の証拠として採用するためには、これらの条件が必須とされています。
興味深いことに、オービス導入当初の1970年代後半には「人権無視」として大きな社会問題となり、タクシーやトラックの組合が中心となって「オービス裁判闘争」を展開していました。
オービスの種類により、看板設置ルールが大きく異なります。この違いを理解することで、取り締まりの仕組みがより明確になります。
固定式オービス(無人式)
移動式オービス(有人式)
半固定式オービス
この違いの根拠は、「認知」と「現認」の法的区別にあります。固定式は「速度違反認知カード」、移動式は「速度違反現認カード」として処理され、有人式の移動式では警察官が現場で違反を確認するため、事前告知の必要性が低いとされています。
オービス看板のデザインは、全国統一ではなく地域により大きく異なります。この多様性は、各都道府県警察の裁量によるものです。
主要地域別デザイン
特に興味深いのは、景観に配慮した看板の存在です。広島県では白地に赤と緑の文字を使用し、かつて岐阜県には茶色地に白文字の景観配慮型看板も存在していました。
看板サイズと設置方法の違い
これらの違いは、設置場所の道路環境や景観への配慮、予算などの要因により決定されています。
オービス看板の設置には、技術的な基準が存在します。これらの基準は、ドライバーの視認性と安全性を確保するために設定されています。
視認性確保の技術基準
設置場所の選定基準
興味深いことに、可搬式オービスの取扱説明書には「『速度違反自動取締中』看板」が構成品として明記されており、「ウエイト付」とされています。これは、移動設置時の安定性を確保するための技術的配慮です。
また、トンネル内のオービス設置では、照明条件や反射の影響を考慮した特別な看板設置基準が適用されています。
オービス看板の設置ルールは、技術の進歩と社会情勢の変化により進化しています。特に移動式オービスの普及により、従来の看板設置概念が大きく変わりつつあります。
移動式オービスの告知方法の変化
現在、多くの県警では以下の方法で事前告知を行っています。
技術革新による変化
社会情勢の変化による影響
監視カメラの普及により、プライバシー権に対する社会的認識が変化しています。1980年代の「人権無視」という批判から、現在では「防犯・安全確保」として受け入れられる傾向にあります。
この変化により、将来的には移動式オービスの警告看板設置期間がさらに短縮される可能性があります。現在の「約1カ月間」から、より短期間での運用や、完全な事前告知なしでの運用への移行も検討されています。
ただし、透明性の確保と公平な取り締まりの観点から、何らかの形での事前告知は継続される見込みです。技術の進歩と法的要件のバランスを取りながら、オービス看板の役割も進化していくことが予想されます。
参考:警察庁の速度違反取締装置に関する技術基準
https://www.npa.go.jp/
参考:交通安全対策に関する最新情報
https://www.itarda.or.jp/