1回の事故で、向こう4年間の保険料が最大11万円以上も余計にかかる可能性があります。
自動車保険の契約は、所有・使用している車の台数によって大きく2つに分類されます。車が10台以上あればフリート契約、9台以下であればノンフリート契約です。
「Fleet(フリート)」とはもともと「艦隊・船団」を意味する英語で、保険の世界では多数の車両を一括管理する契約スタイルを指します。対してノンフリートは、その名の通り「フリートではない」契約のことです。
個人が所有する車が10台以上になることはほとんどないため、一般のドライバーが加入する自動車保険はほぼすべてノンフリート契約にあたります。つまり、これはほとんどの車好きに直接関係する話です。
フリート契約は契約者単位でまとめて保険料が計算される仕組みで、最大70〜80%もの大幅割引を受けられる反面、1台でも事故を起こすと全車両ぶんの保険料が跳ね上がるというリスクがあります。一方、ノンフリート契約では1台ごとに等級が設定され、それぞれの事故歴をもとに保険料が計算されます。
割引の単位が違うということですね。フリートは会社単位、ノンフリートは車単位が原則です。
なお、2〜9台の車を1枚の保険証券でまとめて管理できる「ミニフリート契約(セミフリート契約)」という仕組みもあります。ミニフリートはノンフリート契約の一種で、割引率はノンフリートと同じです。複数台の車を持つ人は、手続きが簡略化されるというメリットがあります。
| 区分 | 契約台数 | 保険料の計算単位 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| フリート契約 | 10台以上 | 契約者単位 | 法人・大規模事業者 |
| ノンフリート契約 | 1〜9台 | 車両ごと | 個人・中小企業 |
| ミニフリート契約 | 2〜9台(一括) | 車両ごと(一括証券) | 複数台保有の個人・法人 |
【参考】ノンフリート契約・フリート契約・ミニフリート契約の違いを詳しく解説(資産防衛の教科書)
ノンフリート契約の保険料は「ノンフリート等級別料率制度」によって決まります。等級は1〜20の20段階に分かれており、等級が高いほど保険料の割引率が大きくなります。
初めて自動車保険に加入する場合、原則として6等級からスタートします。そして1年間無事故であれば、翌年度に等級が1つ上がります。逆に事故を起こして保険を使った場合は等級が下がり、割引率も低下します。
等級ごとの割引・割増率は以下のとおりです。特に注目してほしいのは「無事故」と「事故あり」で割引率が大きく違う点です。
| 等級 | 無事故の割引率 | 事故ありの割引率 |
|---|---|---|
| 1 | 64%割増 | — |
| 2 | 28%割増 | — |
| 3 | 12%割増 | — |
| 4 | 2%割引 | — |
| 5 | 13%割引 | — |
| 6 | 19%割引 | — |
| 7 | 30%割引 | 20%割引 |
| 8 | 40%割引 | 21%割引 |
| 10 | 45%割引 | 23%割引 |
| 15 | 51%割引 | 33%割引 |
| 20 | 63%割引 | 44%割引 |
20等級まで到達すると保険料が63%引きになります。仮に割引なしの保険料が年間10万円だとすれば、20等級では約3万7,000円まで下がる計算です。それだけ長年の無事故積み上げには大きな価値があります。
重要なのはここです。等級が同じでも「無事故」か「事故あり」かで、割引率に最大20ポイント前後の差が出ます。これは「事故有係数適用期間」という仕組みによるもので、後のセクションで詳しく説明します。
最高等級に注意すれば大丈夫です。6等級から毎年1等級ずつ上がるとして、20等級に到達するまでには最短14年かかります。
【参考】チューリッヒ保険公式:ノンフリート等級制度の詳細な仕組みと割引率一覧
「事故1回くらいなら保険使っても大丈夫だろう」と考えている人は多いです。しかし実際の数字を見ると、その認識が大きく変わるかもしれません。
事故を起こして対人・対物賠償や車両保険を使うと「3等級ダウン事故」として扱われ、翌年の等級が3つ下がります。これは痛いですね。さらに「事故有係数適用期間」が3年間加算されます。
事故有係数適用期間とは、事故を起こした後に「事故あり」の割引率が適用される期間のことです。たとえ等級が戻ってきても、この期間中は同じ等級の「無事故」の人より保険料が高いままになります。上限は最長6年です。
ソニー損保のシミュレーションをもとにした具体的な試算は以下のとおりです。
| 事故前の等級 | 事故後の等級 | 4年間の差額(総額) |
|---|---|---|
| 20等級(無事故) | 17等級(事故あり) | 約75,000円の損 |
| 15等級(無事故) | 12等級(事故あり) | 約92,000円の損 |
| 10等級(無事故) | 7等級(事故あり) | 約110,000円の損 |
10等級から7等級に下がっただけで、4年間で約11万円も余分に払うことになります。これだけの額があれば、車好きにとっては消耗品の交換やドライブレコーダーの購入に使えるはずです。
さらに深刻なのは、事故有係数適用期間中に再度事故を起こした場合です。その場合、事故有係数適用期間は最長6年まで延長されます。つまり1回の不注意が、6年間にわたって毎年の保険料に影響し続けるということです。
これが原則です。「小さな事故でも保険を使うかどうか」は、この数字を念頭に置いて慎重に判断すべきです。修理費が数万円程度なら、自己負担で済ませたほうが長い目でトクになるケースは少なくありません。
等級は、自分だけのものではありません。条件を満たせば家族に引き継ぐことができます。これは使えそうです。
たとえば長年無事故を続けて20等級まで積み上げた等級を、新たに車を持つ子どもや配偶者に渡すことが可能です。通常、新規加入は6等級スタートなので19%割引ですが、20等級を引き継げば63%割引からのスタートになります。その差額は大きく、年間保険料で数万円単位の節約につながります。
ただし等級の引き継ぎには厳格な条件があります。
- 配偶者:別居していても引き継ぎ可能
- 子ども・親・兄弟姉妹などの親族:同居していることが必須条件
- 別居している親族へは引き継ぎ不可
ここが多くの人が知らないポイントです。「子どもが一人暮らしを始めたけど、自分の等級を引き継がせよう」と思っても、別居しているなら引き継ぎは認められません。たとえ住民票を移していない場合でも、実態として別居していれば不可です。
このルールの例外が条件です。配偶者だけは別居でも等級継承ができる、という点は覚えておきましょう。
さらに、2台目を購入する際に「セカンドカー割引(複数所有新規特則)」を使うと、通常6等級スタートのところを7等級スタートにできます。小さい差に見えますが、7等級の割引率は30%(無事故)なのに対し、6等級は19%です。初年度から割引率が11ポイント違うということですね。2台目を買う際には必ず申請を検討してください。
【参考】家族から等級は引継げるの?条件と注意点(ソニー損保公式)
車を手放す予定があっても、等級を捨てる必要はありません。中断証明書という制度を使うと、現在のノンフリート等級を最長10年間保存しておくことができます。
たとえば20等級まで積み上げた状態で、海外赴任や長期入院などの理由で車を売却・廃車にしたとします。その際に保険会社に「中断証明書」の発行を申請しておけば、10年以内に再び車を購入した際に20等級からスタートできます。中断証明書なしで再加入すると、原則として6等級からやり直しになります。これは無料です。
中断制度が使える主な条件は以下のとおりです。
- 車の譲渡・廃車・車検切れ・盗難などで自動車保険を解約・満了した場合
- 海外赴任などで日本国内での車の使用を中止した場合
中断証明書の有効期限は、中断日の翌日から10年間です。10年を超えると失効し、再加入時は6等級スタートになります。また、中断証明書を使って保険を再開する際は、新しく購入した車を取得してから1年以内であることも必要です。
つまり「10年以内+車取得から1年以内」が条件です。再開の際には保険会社各社によって対応が異なる場合もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。なお、楽天損保など一部のネット保険会社では中断証明書を利用した再加入を受け付けていない場合があります。この点は有料・無料に関わらず注意が必要です。
長年愛車に乗り続けてきた車好きにとって、20等級近くまで育てた等級は一種の「資産」です。廃車や売却の際には、反射的に解約するのではなく、まず中断証明書の発行を保険会社に相談してみましょう。
【参考】昔の契約の等級でも引き継げるの?中断証明書の仕組み(ソニー損保公式)
【参考】自動車保険の中断証明書とは?発行条件と活用方法(AXAダイレクト公式)
「等級を育てる」という視点で自動車保険と向き合っている人は、意外と少ないです。実は、ノンフリート等級の仕組みを理解すると、車の乗り方や保険の使い方に対する意識が変わります。
まず知っておきたいのが「ノーカウント事故」の存在です。自分や同乗者が事故でけがをした際に使う人身傷害保険や搭乗者傷害保険、また弁護士費用特約などを使っても、等級はまったく下がりません。これは問題ありません。一方、相手の車を傷つけた場合や自分の車が壊れた場合に車両保険を使うと等級が下がります。
つまり、すべての保険利用が等級に影響するわけではないということです。「保険を使ったら必ず等級が下がる」という先入観は危険で、事故の種類や使う保険の種類によって対応を変えることが重要です。
もう一つ、車好きにとって見落としがちな点があります。ドライブレコーダーの活用です。近年では、ドライブレコーダーの映像提供で保険料割引を受けられる「テレマティクス保険」や「ドライブレコーダー型保険」が普及しています。これらは安全運転が記録されることで、ノンフリート等級とは別に追加の割引が得られる仕組みです。
長距離ツーリングが好きなドライバーや、週末だけ車に乗るドライバーにとっては、走行距離に応じて保険料が変わる「走行距離連動型保険」も検討に値します。年間走行距離が少ない場合は、同じ等級でも保険料をさらに抑えられるからです。
等級を意識した運転習慣を持つことが条件です。事故を1回起こすだけで数年分の等級積み上げ効果が消えることを考えれば、急ぎすぎない・無理な追い越しをしない・疲れたら休むという基本的な安全運転の重要性が、お金の面からも納得できるはずです。
日頃から保険証券の等級欄を確認しておく習慣をつけておくと、乗り換えや更新のタイミングで最適な判断ができます。保険証券に記載されている現在の等級と事故有係数適用期間を確認するのは、年に1度でも十分です。
| 保険の種類 | 使っても等級が下がる? | 備考 |
|---|---|---|
| 対人賠償保険 | ⚠️ 3等級ダウン | 相手を死傷させた場合 |
| 対物賠償保険 | ⚠️ 3等級ダウン | 相手の物を損壊した場合 |
| 車両保険(対物事故) | ⚠️ 3等級ダウン | 自分の過失がある衝突等 |
| 車両保険(自然災害・盗難) | 🔶 1等級ダウン | 台風・水没・いたずらなど |
| 人身傷害保険 | ✅ 等級変わらず(ノーカウント) | 自分・同乗者のけが |
| 弁護士費用特約 | ✅ 等級変わらず(ノーカウント) | 示談交渉費用など |
| ロードサービス | ✅ 等級変わらず(多くの会社) | 保険会社により異なる |
【参考】ノンフリート等級別割引・割増制度の詳細(あいおいニッセイ同和損保公式)