日産テラノ復活の可能性と新型PHEV技術の展望

2002年に生産終了した日産テラノが、中国市場でのフロンティア・プロ発表により復活の兆しを見せています。PHEVシステム搭載の新型テラノは実現するのでしょうか?

日産テラノ復活への道筋

日産テラノ復活の背景
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フロンティア・プロの登場

上海モーターショー2025で発表されたPHEVピックアップトラックがテラノ復活の鍵

PHEV技術の進化

408ps以上のシステム出力とEV航続距離135kmを実現

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オリジナルデザインの継承

1980年代のD21型テラノの3つのエアインテークをオマージュ

日産テラノの歴史と生産終了の経緯

日産テラノは1986年に初代モデルが誕生し、本格派SUVとして多くのファンに愛されてきました。初代テラノ(WD21型)は、ピックアップトラック「ダットサントラック」をベースに開発され、ラダーフレーム構造による堅牢性と高い悪路走破性を特徴としていました。

 

特に印象的だったのは、フロントフードに配置された3つのエアインテークです。この独特なデザインは、北米日産デザインスタジオ(NDI)によって手がけられ、無骨ながらも洗練された外観として高く評価されました。

 

1995年には2代目(R50型)にフルモデルチェンジを果たしましたが、SUV市場の変化や環境規制の厳格化により、2002年に日本での生産を終了しました。この決定は多くのテラノファンにとって残念な出来事でしたが、海外では「パスファインダー」として進化を続けています。

 

生産終了から20年以上が経過した現在でも、テラノの名前は自動車愛好家の間で語り継がれており、その復活を望む声は根強く存在しています。

 

日産テラノ復活を示唆するフロンティア・プロの詳細

2025年5月に開催された上海モーターショーで、日産は画期的なピックアップトラック「フロンティア・プロ」を初公開しました。このモデルは鄭州日産との共同開発により生まれた、日産初のPHEVピックアップトラックです。

 

フロンティア・プロの最大の特徴は、その圧倒的なパワーです。

  • エンジン: 1.5リッター直列4気筒ターボエンジン
  • モーター: 電気モーターとの組み合わせ
  • システム出力: 408ps以上
  • 最大トルク: 800Nm
  • EV航続距離: 135km(目標値)

このスペックは、従来のピックアップトラックの概念を大きく覆すものです。特に800Nmという最大トルクは、重い荷物を積載した状態でも余裕のある走行性能を実現します。

 

デザイン面では、スタイリングコンセプトを「逞しくかつ先進的(Rugged tech)」と位置づけ、左右のヘッドランプに挟まれるように配置された3つのLEDライトが特徴的です。これは明らかに1980年代のD21型ダットサントラック、そしてテラノのフロントフードにあった3つのエアインテークをオマージュしたデザインです。

 

日産テラノ新型モデルのPHEVシステム技術

フロンティア・プロに搭載されるPHEVシステムは、日産の電動化技術の集大成とも言える先進的なものです。このシステムの詳細を分析すると、将来のテラノ復活モデルに搭載される可能性が高い技術が見えてきます。

 

PHEVシステムの構成要素

  • 1.5L直4ターボエンジン: 高効率と高出力を両立
  • 高出力電気モーター: 瞬間的な加速性能を提供
  • 大容量バッテリー: EV走行135kmを実現
  • インテリジェント制御システム: 最適な動力配分を自動調整

このシステムの革新的な点は、従来のハイブリッドシステムとは異なり、完全なEV走行が可能な点です。日常の通勤や買い物程度であれば、ガソリンを一切使用せずに走行できるため、環境性能と経済性を大幅に向上させています。

 

また、408ps以上というシステム出力は、従来のV8エンジンに匹敵する性能を持ちながら、燃費性能は大幅に改善されています。これにより、パワーと環境性能の両立という、現代のSUVに求められる要件を満たしています。

 

バッテリー技術についても、日産が長年培ってきた電気自動車「リーフ」の技術が活用されており、信頼性と耐久性において高い水準を実現しています。

 

日産テラノ復活に対する市場の反応と予想CG

テラノ復活の可能性が報じられると、自動車愛好家やデザイナーの間で大きな反響が生まれました。特に注目を集めているのが、デザイナーのEnoch Gonzales氏が制作した新型テラノの予想CGです。

 

このCGは、フロンティア・プロのフロントエンドデザインを継承しながら、完全なSUVスタイルに仕上げられています。具体的な特徴として。

  • フロントデザイン: 3つのLEDライトを配置したテラノオリジナルのオマージュ
  • ボディスタイル: 角張った無骨なデザインを現代風にアレンジ
  • ルーフライン: 段差付きルーフによる独特のシルエット
  • リアセクション: 垂直に近いDピラーとディフューザー付きバンパー

SNSでの反応を見ると、「やっぱり無骨なクロカンスタイルはイイ」「今となっては新鮮!」「SUVは四角いスタイルがいちばん」といった好意的なコメントが多数寄せられています。

 

これらの反応は、現在のSUV市場が乗用車ベースのクロスオーバーSUVに偏っている中で、本格的なラダーフレーム構造のSUVを求める声が根強く存在することを示しています。

 

市場分析の観点から見ると、テラノの復活は以下のような意義があります。

  • 差別化戦略: 他社との差別化を図る独自のポジション
  • ブランド価値向上: 歴史あるネームバリューの活用
  • 新技術のアピール: PHEVシステムの技術力をアピール

日産テラノ復活実現への課題と今後の展望

テラノ復活の可能性は高まっているものの、実現には多くの課題が存在します。まず最大の課題は生産体制の構築です。現在の日産は国内生産拠点の縮小を進めており、新たなモデルの生産をどこで行うかが重要な問題となっています。

 

技術的課題も無視できません。

  • コスト管理: PHEVシステムの高コストをいかに抑制するか
  • 重量バランス: 大容量バッテリー搭載による重量増加への対応
  • 充電インフラ: PHEVの普及に必要なインフラ整備
  • 法規制対応: 各国の環境規制や安全基準への適合

一方で、市場機会も存在します。特に中国市場では、政府の新エネルギー車推進政策により、PHEVやEVへの需要が急速に拡大しています。フロンティア・プロが中国市場をターゲットとしているのも、この背景があります。

 

今後の展望として考えられるシナリオ。

  1. 段階的展開: まず中国市場でSUV版を投入し、成功すれば他市場へ展開
  2. 技術移転: フロンティア・プロで培った技術を他のSUVモデルに応用
  3. ブランド戦略: テラノの名前を復活させることでブランド価値を向上

また、日産のアライアンスパートナーであるルノーとの協業も重要な要素です。過去にインド市場でルノー「ダスター」のOEMとしてテラノが復活した例もあり、今回も類似の戦略が取られる可能性があります。

 

環境規制の厳格化により、従来のガソリンエンジンのみのSUVは将来的に販売が困難になることが予想されます。そのため、PHEVシステムを搭載したテラノの復活は、時代の要請に合致した戦略と言えるでしょう。

 

最終的に、テラノ復活の成否は、日産が電動化技術とブランド価値をいかに効果的に組み合わせられるかにかかっています。フロンティア・プロの市場での成功が、テラノ復活への道筋を決定づける重要な試金石となるでしょう。