日産タウンスターは、欧州市場向けに開発されたコンパクトミニバンで、ルノー日産三菱アライアンスのCMF-Cプラットフォームをベースとしています。このプラットフォームは、新型ルノー・カングーやメルセデス・ベンツ・シタンなどとも共通部品を採用しており、高い設計の自由度と製造効率を実現しています。
日本導入時の対象となる乗用仕様では、2つのボディバリエーションが展開されます。標準ボディの「タウンスター・コンビ」は全長4488mm、全幅1860mm、全高1838mm、ホイールベース2716mmで、2列シート5人乗りの設定です。トヨタノアやセレナより短めでありながら、ワイドで背高な設計により、都市部や郊外での使い勝手を優先したサイズ設定となっています。
ロングボディの「タウンスター・エバリア」は、全長4911mm、ホイールベース3100mmと、かなり拡張されており、3列シート7人乗りのミニバン仕様が設定されます。この仕様により、エルグランドの後継候補としても注目されています。特に、2列目と3列目のシートを折りたたむと、最大3750Lの荷室容量となり、大型荷物の運搬も可能です。
タウンスターには、現代の排出ガス規制に対応した2つのパワートレイン選択肢が用意されています。ガソリンエンジン仕様では、直列3気筒1.3Lターボエンジンを搭載し、最高出力130馬力、最大トルク240Nmを発生します。この数値は、従来の自然吸気エンジンの2.4Lに相当するパフォーマンスを備えており、欧州の排出ガス規制「Euro 6d」に完全対応しています。コンパクトミニバンの「タウンスター・コンビ」での燃費は15.6km/Lで、同クラスのセレナやノアを上回る低燃費性を実現しています。
EV仕様は、45kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、122馬力、最大トルク245Nmのモーターを搭載します。一充電での航続距離は300km以上(無積載・平均速度30km/hの場合)であり、都市内利用では十分な走行距離を確保しています。急速充電対応により、わずか37分で15%から80%までの充電が可能であり、利便性に優れています。
タウンスター・コンビの荷室容量は、2列目シート使用時に775L、シート全折時に2800Lへ拡大します。開口部の寸法も広く、高さ1111mm、幅1190mmという設計により、大型の家具や建築材料、自転車なども容易に積載できます。このような広大な荷室スペースにより、ファミリーレジャーから小型ビジネス用途まで幅広い利用シーンに対応可能です。
内装には、8インチのタッチスクリーン、10インチのデジタルメーター(EV仕様)が搭載され、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応しています。駐車支援システムとして「アラウンドビューモニター」も装備され、真上からの視点で駐車位置を確認できる便利な機能が備わっています。安全装備として、衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシスト、交通標識認識、ヒルスタートアシストなど、最新の予防安全技術が搭載されています。
一般に注目されるのは乗用仕様ですが、実は日産タウンスターの真価は、商用バン仕様にあるという指摘があります。現在の日本国内では、純正のBEV(電気自動車)商用バンがラインアップから欠落しており、この領域はまだ市場開拓の余地が大きいのです。
タウンスター商用バンのEV仕様は、排出ガスゼロとランニングコストの大幅削減により、都市部の配送業務やクリーニング、飲食店、工事業者などの小型ビジネス用途に極めて有効です。さらに、欧州では純正のキャンピングカー仕様も設定されており、日本でも限定的な導入により、車中泊ニーズを捉える可能性があります。このように、商用バン・キャンピングカー仕様への展開を視野に入れることで、タウンスター日本導入の収益性は飛躍的に向上する可能性があるのです。
円安が進む現在、海外工場で生産された日本車を輸入する際の価格上昇は、自動車メーカーの大きな課題です。しかし円安が解消された場合を想定すれば、日産タウンスター・コンビの導入予想価格は295万円~とされています。標準モデルでこの価格設定なら、トヨタシエンタやホンダフリードなどの競合コンパクトミニバンと価格帯が競争可能な水準です。
ロングボディのタウンスター・エバリアは、345万円程度での導入が予想されており、これはセレナe-POWERハイウェイスターVより少し安い設定です。この価格帯により、販売低迷中のエルグランド後継候補として、幅広い日産ユーザーから注目される可能性があります。実現までには円相場の変動や国内規制への対応など、乗り越えるべき課題がありますが、市場ニーズの高さから導入の可能性は十分あるといえます。
国内市場ではトヨタシエンタ、ホンダフリードといったコンパクトミニバンが好調販売を続ける中で、日産はラインアップ強化が急務です。既に欧州で販売実績を積んだタウンスターは、設計の信頼性も高く、日本の消費者ニーズに応えるための最適な選択肢の一つとなり得るでしょう。