日産が2024年に投入を予定している新型コンパクトミニバンは、現行「ノート」をベースとした3列シート仕様のモデルとなる見込みです。ボディサイズは全長4,300mm程度、全幅1,700mm以内、全高1,700mmとなり、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」とほぼ同等のサイズに設定される予定です。
室内空間確保のため、ベースとなるノートからホイールベースを150mm程度延長し、全長は200mm程度拡大される計画となっています。これにより、3列目シートまでの十分な居住空間を確保しつつ、5ナンバーサイズの取り回しの良さを維持する設計となります。
パワートレインには、ノートと同様の1.2L直列3気筒エンジン+モーターのe-POWERシステムが搭載される予定で、FFに加えてリアモーターを追加した4WDシステムも設定される見込みです。
現在のコンパクトミニバン市場は、トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」の2強体制が続いています。シエンタは2024年7月の販売台数で全体3位、フリードは6位にランクインするなど、高い人気を維持しています。
車種 | 全長 | 全幅 | 全高 | 燃費 | 価格帯 |
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シエンタ | 4,260mm | 1,695mm | 1,695-1,715mm | 28.8km/L | 195万円~ |
フリード | 4,310mm | 1,695-1,720mm | 1,755-1,780mm | 20.9km/L | 233万円~ |
日産新型(予想) | 4,300mm | 1,700mm | 1,700mm | 25km/L(予想) | 250万円~ |
日産の新型モデルは、これらの競合車種に対してe-POWERシステムによる独自の走行性能と燃費性能で差別化を図る戦略と考えられます。特に第3世代e-POWERは、初代から燃費が20%向上し、高速走行時の燃費は第2世代から15%アップする見込みとなっています。
新型コンパクトミニバンに搭載予定の第3世代e-POWERシステムは、従来モデルから大幅な進化を遂げています。エンジンを発電専用として使用し、モーターで駆動するシステムにより、ガソリン車の利便性とEVの静粛性・加速性能を両立させています。
技術的な進歩として注目されるのは、コスト削減と燃費向上の両立です。第3世代e-POWERでは、初代と比較してコストを20%削減しながら、燃費性能を20%向上させることに成功しています。これにより、競合車種に対する価格競争力を維持しつつ、優れた環境性能を実現できる見込みです。
また、4WDシステムにはリアモーターを採用することで、前後輪の駆動力配分を電子制御で最適化し、悪路走破性と燃費性能を高次元で両立させる技術が投入される予定です。
安全装備面では、プロパイロット技術の搭載も期待されており、高速道路での運転支援機能により長距離ドライブの疲労軽減に貢献すると考えられます。
日産は経営計画「The Arc」において、2026年度末までに16車種の電動車両と14車種の内燃機関車を新たに投入すると発表しており、新型コンパクトミニバンもこの計画の一環として位置づけられています。
市場投入のタイミングについては、2024年秋頃の登場が有力視されています。これは、2023年10月のジャパンモビリティショー2023での先行展示の可能性も示唆されていましたが、実際の発表は2024年中にずれ込む見込みとなっています。
価格設定については、250万円から350万円前後の価格帯が予想されており、シエンタの上位グレードからフリードの中間グレード程度の価格帯での競争となる見込みです。この価格設定により、e-POWERシステムの付加価値を訴求しつつ、市場での競争力を確保する戦略と考えられます。
販売戦略としては、日産独自の技術であるe-POWERシステムの優位性を前面に押し出し、静粛性と加速性能、燃費性能の三拍子揃った特徴をアピールすることで、シエンタ・フリードとの差別化を図る方針と予想されます。
日産の新型コンパクトミニバン投入により、これまでトヨタとホンダの2強体制だった市場構造に大きな変化が生まれる可能性があります。特に、e-POWERシステムによる独自の走行フィールは、従来のハイブリッドシステムとは異なる魅力を提供することで、新たな顧客層の開拓につながると考えられます。
興味深い展開として、日産とホンダが2024年8月1日に次世代技術に関する共同研究契約を締結し、車両の相互補完も明らかにしたことが挙げられます。これにより、将来的にはホンダ「フリード」の日産へのOEM供給という可能性も浮上しており、コンパクトミニバン市場における協業の可能性も示唆されています。
市場全体への影響として、3社競合による価格競争の激化が予想される一方で、各社の技術的特徴がより明確になることで、消費者にとっての選択肢が大幅に拡大することが期待されます。特に、e-POWERの独特な走行特性を好むユーザー層の取り込みにより、市場全体の活性化が見込まれます。
また、日産の参入により、コンパクトミニバンセグメントにおける技術革新競争が加速し、自動運転技術や電動化技術のさらなる進歩が期待される状況となっています。これは最終的に、消費者により高性能で魅力的な車両の提供につながると考えられます。
長期的な視点では、日産の新型コンパクトミニバンの成功如何により、他の自動車メーカーの同セグメントへの参入意欲にも影響を与える可能性があり、市場のさらなる多様化が進む可能性があります。