古い年版の本で練習すると、本番と内容が違って免許を失うリスクがあります。
長年クルマを愛し、毎日のように運転してきた人ほど、75歳の免許更新で初めて「認知機能検査」という壁にぶつかります。この検査は2009年から始まった制度で、高齢ドライバーの記憶力と判断力を測るものです。検査を受けずに更新はできませんし、点数次第では医師の診断が義務付けられます。つまり、ドライビングライフを続けるための"試験"そのものです。
認知機能検査の対象者は、運転免許証の更新期間満了日の年齢が75歳以上のすべてのドライバーです。70〜74歳の方は高齢者講習のみで、認知機能検査は不要です。対象者には更新満了日の約190日前(6か月前)に警察からはがきが届き、そこから予約を取って受検する流れになります。
検査の合否という概念は厳密には存在しません。ただし、総合点が36点未満になると「認知症のおそれあり」と判定され、専門医の受診が必須となります。医師に「認知症である」と診断された場合は、免許の取り消しまたは効力停止という処分を受けることになります。免許を失うリスクが現実にあるということです。
検査の所要時間は約30分。受検手数料は1,050円です。会場は都道府県の運転免許センターや指定自動車教習所で、電話またはウェブから事前予約が必要です。はがきが届いたらすぐに予約するのが得策です。
警察庁|認知機能検査について(検査用紙・イラストのダウンロードも可)
検査は「手がかり再生」と「時間の見当識」の2種類だけです。
手がかり再生は、イラスト(絵)を記憶して後で何が描かれていたかを回答する検査です。具体的には、4種類のイラストが描かれたボードを約1分かけて記憶することを4回繰り返し、合計16種類の絵を覚えます。記憶後はすぐに回答するのではなく、いったん介入問題(数字に斜線を引く作業)をはさみ、記憶が薄れた状態で思い出す仕組みになっています。回答は2段階で、まず「自由回答」(ヒントなし)、次に「手がかり回答」(ヒントあり)の順で行います。
📝 手がかり再生の配点は以下の通りです。
| 回答状況 | 配点 |
|---|---|
| 自由回答で正答(ヒントなしで思い出せた) | 2点 |
| 手がかり回答のみ正答(ヒントありで思い出せた) | 1点 |
| 両方とも不正答 | 0点 |
全問正答すれば2点×16問=32点満点です。
時間の見当識は、検査を受けている時点の年・月・日・曜日・時刻の5問に答えるものです。1問ごとに配点が異なり、「今年は何年ですか」が5点、「今月は何月」が4点、「今日は何日」が3点、「曜日」が2点、「今何時何分」が1点で、合計15点満点です。
総合点は「2.499×手がかり再生の点+1.336×時間の見当識の点」という計算式で出されます。この計算で36点以上になると「認知症のおそれなし」と判定されます。介入問題(数字の斜線作業)は採点に関係しません。これが基本です。
チューリッヒ損保|認知機能検査とは(採点方法・イラストパターンを詳しく解説)
書店や通販には複数の対策本が並んでいて、どれを選べばいいか迷いやすいところです。ここで注意が必要なのが、年版を確認せずに購入することです。2022年5月に道路交通法が改正され、認知機能検査の内容が大きく変わっています。具体的には「時計描写」という検査項目が廃止され、採点方法も変更されました。法改正前の本を使うと、実際の本番と内容がまったく異なる問題を練習することになります。
⚠️ 購入前に必ず確認したい3つのポイントを整理します。
- 最新の年版である:2022年5月以降の改正に対応しているか表紙・奥付で確認する。2026年受検なら2025〜2026年版を選ぶのが安心。
- 全4パターンのイラストが収録されている:本番ではパターンA〜Dのうちどれが出るかわかりません。4パターンすべてが載っている本でないと、外れる可能性があります。
- 模擬テスト形式で練習できる:本番と同じ流れで練習できる「模擬テスト付き」の本を選ぶと、時間感覚も含めて体に覚えさせることができます。
対策本の価格帯は900円前後のものが主流で、Amazonや楽天でも購入可能です。篠原菊紀監修の「運転免許認知機能検査 対策&問題集」(M.B.MOOK・919円)や、英和出版社の「これで合格!運転免許認知機能検査」(EIWA MOOK)が多くの読者に選ばれています。これは使えそうです。
なお、警察庁の公式ウェブサイトでは、検査用紙・イラスト4パターン分・採点方法がすべて無料でダウンロードできます。費用をかけずに本番と同じ問題を手に入れられるため、まず無料素材で試してから本を購入する、という順番も合理的です。
警察庁公式|認知機能検査用紙・イラスト(パターンA〜D)の無料ダウンロードページ
多くのドライバーが「16種類の絵を覚えるのは自信がない」と感じます。ただ、本番問題のイラストは警察庁が公開しており、パターンはA・B・C・Dの4種類に固定されています。つまり、64枚すべてのパターンを事前に覚えてしまえば、どのパターンが出ても完答できるということです。
イラストをただ眺めるだけでは記憶に定着しません。おすすめなのは「ストーリー記憶法」で、関係のない4つのイラストを一つのストーリーとして結びつける方法です。例えばパターンAの一枚「大砲・オルガン・耳・ラジオ」なら、「大砲の音をオルガン演奏に聞き間違えた耳の悪いおじさんが、ラジオを爆音で流していた」という短い話にする。意味のある文脈があると、脳の海馬が記憶を強く定着させます。
4枚×4セット=16種類を覚えるのはこの方法を使えば、繰り返し練習する中で自然に身についていきます。対策本の多くもこのストーリー記憶法を採用しており、本を読みながら練習を重ねると効果的です。
時間の見当識の対策はシンプルです。毎日カレンダーを確認して、今日の年・月・日・曜日を声に出して確認する習慣をつけましょう。検査当日に急に意識しても、「今日の曜日」は意外と出てきにくいものです。日々の習慣が最強の対策になります。
また、会場によっては検査にタブレット端末が使われます。タッチペンで手書き入力する操作が必要で、スマートフォンのキーボード入力とは感覚が違います。不安な場合は、家族のタブレットを借りて手書き文字の練習をしておくと当日の戸惑いを防げます。タブレット操作は試験内容ではありませんが、操作ミスで余分なストレスを抱えないためにも準備しておくのが無難です。
75歳以上のドライバーの中でも、特定の交通違反をした方には「運転技能検査」への合格も義務付けられています。これは2022年5月の改正道路交通法で新設された制度です。認知機能検査の対策本とは別の話なので、自分が対象かどうか確認しておく必要があります。
対象になるのは、免許更新の誕生日160日前までの過去3年以内に、信号無視・速度超過・横断歩道での歩行者妨害など、特定の11種類の違反行為をしたドライバーです。
運転技能検査では、教習所の実車コースを実際に走行し、100点満点からの減点方式で採点されます。第1種免許の合格基準は70点以上です。合格するまで期間中は何度でも再受検できますが、合格しないと免許更新ができません。厳しいところですね。
📋 運転技能検査の主な課題は以下の通りです。
- 指示速度での走行(速度コントロール)
- 一時停止
- 右左折
- 信号通過
- 段差乗り上げ
認知機能検査の対策本は、あくまでも認知機能検査に特化した内容です。運転技能検査の対策が必要な方は、JAFが発行する「これ一冊で必勝!!! 認知機能検査&運転技能検査」のような、両方をカバーする書籍を選ぶとよいでしょう。
警視庁|75歳以上の免許更新・認知機能検査と高齢者講習の詳細ページ
ここまで対策の話をしてきましたが、実は認知機能検査の対策本には、免許更新以外にも使える側面があります。検査の核心である「手がかり再生」は、脳の記憶力・集中力を鍛えるトレーニングとしても機能します。医療や介護の現場では、認知症の早期発見ツールとして類似の検査が活用されており、日常的に練習することで記憶力の維持に役立てる考え方もあります。
長く運転を続けるためには、ハンドル操作や車両感覚を磨くことと同じくらい、脳の健康を維持することが重要です。対策本のイラスト記憶練習を、週1〜2回のルーティンに取り入れてみると、本番への備えと認知機能のトレーニングを同時に実現できます。
また、対策本を購入する際には「お風呂ポスター」「4コマ漫画記憶法の小冊子」などの副教材も有名です。これらはイラスト64枚をすべて日常の目に入る場所で何度も確認できるよう工夫された商品で、検査対策の本と組み合わせると暗記の定着度が大幅に上がります。
繰り返しになりますが、購入する対策本は必ず最新年版を確認してください。年版の違いは外見だけではわかりにくく、表紙に「2025年版」「2025-2026最新版」などと書かれている場合がほとんどです。せっかく勉強しても、法改正前の内容で練習すれば本番と異なる問題に当たります。最新の本で正しく練習することが、合格への一番の近道です。
全国指定自動車教習所協会連合会|高齢運転者支援サイト(認知機能検査の方法・内容の公式解説)