ニコイチ車とは、文字通り「2つの車を1つにする」という意味で、複数台の車両の部品を組み合わせて1台の車両を作り上げる手法のことです。この用語は自動車業界で広く使われており、2台から作れば「ニコイチ」、3台なら「サンコイチ」、4台なら「ヨンコイチ」と台数によって呼び方が変わります。
ニコイチ車が作られる主な理由は以下の通りです。
ニコイチ車には大きく分けて4つのタイプが存在します。
1. 接続車
車両と車両を溶接で物理的に繋げるタイプです。最も極端な例では、フロント部分とリア部分を中央で切断し、損傷のない部分同士を溶接して1台の車両を作り上げます。
2. パーツ集約車
事故車などから使用可能な部品を集めて組み立てた車両です。エンジン、トランスミッション、足回り部品など、様々なパーツを異なる車両から調達して組み合わせます。
3. フェイススワップ車
同じプラットフォームを使用する兄弟車のフロントマスクを移植するカスタマイズです。有名な例として、日産180SXのフロントマスクをシルビアに移植した「シルエイティ」や、その逆の「ワンビア」があります。
4. 箱替え車
チューニングカーやモータースポーツ車両で行われる手法で、ヘタったボディから主要パーツ一式をヘタリの少ないボディに移植します。
ニコイチ車には深刻な安全性の問題が潜んでいる場合があります。特に不適切な施工が行われた場合、以下のようなリスクが発生します。
構造的強度の低下
車両の骨格であるフレームを切断・溶接することで、本来の設計強度が大幅に低下する可能性があります。事故時の衝撃吸収性能や車体剛性が著しく劣化し、乗員の安全を脅かす危険性があります。
溶接品質による影響
素人や技術力の低い業者による溶接では、接合部分の強度が不十分になりがちです。走行中の振動や応力により接合部が破損し、重大な事故につながる恐れがあります。
隠れた損傷の見落とし
外見上は問題なく見えても、使用された部品に見えない損傷やクラックが存在する場合があります。これらは時間の経過とともに拡大し、予期しない故障を引き起こす可能性があります。
車検適合性の問題
不適切なニコイチ車は車検に通らない場合があり、公道走行が不可能になるリスクがあります。また、保険適用時にも問題となる可能性があります。
中古車購入時にニコイチ車を見分けるためには、以下のポイントをチェックすることが重要です。
外観の確認ポイント
書類と履歴の確認
信頼できる販売店の選択
極端に安価な車両は避け、以下の条件を満たす販売店を選ぶことが重要です。
残念ながら、ニコイチ技術は犯罪にも悪用されているのが現実です。特に自動車盗難事件では、盗難車の身元を隠すためにニコイチ手法が使われることがあります。
盗難車両の偽装手法
盗難された車両は、そのままでは車台番号やコーションプレートによって身元が判明してしまいます。そこで犯罪者は、同一車種の事故車や水没車を安価で購入し、その車体から車台番号部分を切り取って盗難車に移植する「目玉抜き」と呼ばれる手法を使用します。
2019年には認知されただけでも7,143件の自動車盗難が発生しており、これらの多くでニコイチ技術が悪用されています。善意の第三者が知らずにこのような車両を購入してしまった場合でも、証拠品として没収される可能性があり、被害は甚大です。
見分け方と対策
犯罪に使用されたニコイチ車を避けるためには。
このような犯罪防止のため、自動車の製造技術や流通トラッキングシステムは年々進化しており、不正行為の発見が容易になってきています。しかし、消費者自身も知識を身につけて賢い選択をすることが重要です。