
ジャパンモビリティショー2023完全ガイド&東京モーターショーアーカイブ1954-2019 (CARTOP MOOK)
世界各国のモーターショーでは、女性コンパニオンを廃止または大幅に削減する動きが2010年代から加速しています。特に2015年の上海モーターショーでは、主催者が「自動車展示会の本義に立ち戻り、技術と製品により注目する」という理由でコンパニオンを全面禁止しました。この決定の背景には、習近平政権による反腐敗キャンペーンの影響があり、コンパニオンの出演料を通じた不正な資金の流れや、国有企業幹部への特別な接待といった問題が指摘されていました。
参考)世界中のオートショーで女性コンパニオンが減少中! その背景に…
欧米諸国では、多様性を重んじる価値観や男女平等への意識の高まりから、モーターショーでコンパニオンを配置するブースがほとんど見られなくなっています。F1では2018年に「大会のブランド価値や現代の慣習にマッチしない」という理由でグリッドガールの廃止が正式発表され、これがモータースポーツ業界全体に大きな影響を与えました。アメリカのリバティ・メディアによるF1買収後、経営陣が「現代の社会規範と矛盾する」との判断を下したことが廃止の直接的な要因となっています。
参考)レースクイーンの廃止による日本への影響やレースクイーンの存在…
日本でも2023年のジャパンモビリティショーでは、コンパニオンの数が減少し、露出の控えめな衣装が目立つようになりました。プレス向け公開日には、各出展ブースの受け付けに若い女性はいるものの、従来のような「コンパニオン」と呼べる女性の姿はほとんど見かけられなかったという報告があります。この変化は、世界的な潮流が日本のモーターショーにも影響を及ぼし始めていることを示しています。
参考)ジャパンモビリティショーではコンパニオンが減少傾向!? 女性…
コンパニオン廃止の主な理由として、男女平等やジェンダー平等の観点が強く影響しています。ニュースサイトに掲載された女性ライターの記事では、「若い女性の色香で集客しようとする男性目線のひと昔前のマーケティング」がコンパニオン目当てのカメラ小僧たちで会場が大混乱になっていると指摘されました。この指摘に対し、ネット上では「F1もレースクイーンを廃止した。時代に合わない」とする賛成意見と、「コンパニオンの苦労と役割がわかっていない」という反対意見が真っ向からぶつかっています。
参考)「モーターショーに女性コンパニオンはいらない!」 女性ライタ…
中国では2012年の北京モーターショーで、コンパニオンのコスチュームが極度に露出の多いデザインになり、「自動車ショーではなくお色気ショーだ」との批判が噴出しました。地元メディアがこれを大々的に報道すると、「主催者やメーカーは不謹慎」などの厳しい意見が世間から相次ぎ、以降コスチュームは全体として露出を抑える方向へと180度変わりました。主催者の通知書に書かれた「技術と製品が脇役に追いやられ、不健全で非創造的な雰囲気が漂っていた」という表現は、過去のモーターショーのあり方を暗に認めるものでした。
参考)コンパニオンが消えた!? その中国的裏事情【上海ショー201…
また、コンパニオン自身からも「新車やコンセプトカーの横に立ち、笑顔をふりまき、撮影に応じるだけという仕事への不満」があるとの声が出ています。展示車両の近くでポージングをして見せる宣伝が主な仕事内容であり、専門知識を活かせる場面が限られていることが、職業としての意義に疑問を投げかける要因となっています。
参考)世界中のオートショーで女性コンパニオンが減少中! その背景に…
日本のモーターショーにおけるコンパニオンは、バブル期に生まれた特有の文化として30年以上続いており、廃止の動きがあっても簡単にはなくならないと考えられています。実際にレースを見に行くと、観客の3割はレースクイーン目当てであり、その多くが高額のパドックパスやピットウォーク券を購入しているため、主催者やサーキットにとって無視できない存在となっています。コンパニオンを採用するスポンサー企業、手配する広告代理店、提供するプロダクションにとっても大きな収入源となっており、廃止に対する反発が起こることは間違いないとされています。
参考)https://allabout.co.jp/gm/gc/473361/
しかし、2023年のジャパンモビリティショーではコンパニオンの数が減少傾向にあり、大人しい印象に変化していることが報告されています。各出展ブースの受け付けには若い女性がいるものの、「コンパニオン」と呼べるような華やかな存在は限られていました。この変化は、海外の「男女平等」の声が強まる中で、日本のモーターショーも徐々に影響を受けていることを示唆しています。
東京オートサロンでは、コンパニオンの数が他の展示会に比べて群を抜いて多く、全国各地からコンパニオンの撮影だけを目的とした「カメラ小僧」が集まることで知られています。このカメラ小僧問題は、車両そのものへの関心よりもコンパニオン撮影が主目的となり、会場の混雑や本来の来場者の迷惑となる事例が報告されています。スカートの下を覗き込むような撮影行為など、マナー違反の問題も指摘されており、コンパニオン文化を維持する上での課題となっています。
参考)東京オートサロン - Wikipedia
モーターショーにおけるコンパニオンの主な仕事内容は、「商品の宣伝」と「名刺回収・サンプリング配布」の2つです。商品宣伝では、他のイベントとは異なり来場者に積極的に声掛けをすることはあまりなく、自動車のデザインや会社のイメージをかたどったコスチュームを身に着けて、自動車の近くでポージングをする「見せる宣伝」を主に行っています。多くの参加者が写真や動画を撮影するため、常に笑顔でポージングをして応えることが求められます。
参考)イベントコンパニオンはモーターショーに必要?仕事内容や応募方…
企業向けのPRとして、ブースでPR用の限定商品を配布し、企業の人であれば名刺と交換するようにお願いすることもコンパニオンの重要な業務です。イベントコンパニオンがお願いをすることで、企業も名刺を渡しやすくなる効果が狙われています。一日の流れとしては、朝のブリーフィングから始まり、その日のスケジュールや注意点が共有され、メイクアップとスタイリングで外見を整えた後、展示ブースでの接客やプロダクトプレゼンテーションに移ります。
参考)モーターショーコンパニオンの仕事内容と2つの応募方法!向いて…
しかし、中国の上海モーターショーで「受付係」や「車両説明員」という建前でモデルを起用した際、彼女たちは本来の業務をまったく行えず、広報担当者への取り次ぎや車両説明を求められても「わからない」と困惑した表情を見せたという報告があります。このような事例は、コンパニオンが実質的な業務を行っているのか、それとも単なる装飾的存在なのかという疑問を投げかけています。モーターショーの華として魅力を引き立てる役割と、専門的な知識を持った説明員としての役割の間で、コンパニオンの存在意義が問われています。
参考)「モーターショーに女性コンパニオンはいらない!」 女性ライタ…
コンパニオン廃止後の代替案として、ロボットやキャラクターが注目されています。2016年の東京オートサロンでは、ヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパー)」が商品案内をするコンパニオン代わりとして起用されました。2025年4月の上海モーターショーでも、従来のイベントコンパニオンの姿がめっきりと減り、代わりにロボットやキャラクターがその役割を務める事例が見られました。これは、競争が厳しくなる中で、出展側も来場者も真剣さが増していることを反映しています。
参考)美女が消えたモーターショー。お祭り騒ぎから真剣な展示会へ -…
また、コンパニオンの役割を男女双方が担う形への転換も検討されています。ただし、現状では来場者のほぼ全てが男性であるため、女性コンパニオンの需要が高いという実態があります。お客様が女性の場合も、男性だと声をかけづらいとおっしゃる人がいることから、女性スタッフの配置には一定の合理性があるとの意見もあります。
参考)「コンパニオンは不要」「女性の搾取!」の主張に、元コンパニオ…
日本国内では、完全廃止ではなく段階的な変化が起きています。コンパニオンの衣装が露出を抑えたデザインに変わり、受付や説明に徹する形へとシフトしています。F1のグリッドガールが廃止されて4年以上が経過した現在でも、日本のモータースポーツシーンではレースクイーンがレースに華を添え続けており、文化として根付いた存在が一朝一夕には変わらないことを示しています。今後は、技術や製品に焦点を当てた真剣な展示会へと変化していく中で、コンパニオンの役割がどのように再定義されるかが注目されます。
参考)コンパニオンに起きた変化、受付と説明に徹する?…北京モーター…
参考:上海モーターショーのコンパニオン禁止とその背景について詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
コンパニオンが消えた!? その中国的裏事情【上海ショー2015】
参考:F1のグリッドガール廃止と日本のレースクイーン文化の違いについては、こちらが参考になります。
F1でグリッドガール廃止。日本のレースクイーンも…!?
参考:モーターショーにおけるコンパニオンの必要性について議論された記事です。
「モーターショーに女性コンパニオンはいらない!」女性ライターの問題提起