「ミニNSX」として話題を集めるNS660は、軽オープンスポーツ「S660」をベースに、1990年代の初代NSXのデザインエッセンスを詰め込んだカスタムモデルです。開発はワイズスクエアが主導し、株式会社WONDERが販売を担当しています。
2025年1月の東京オートサロンで初披露された際は「miNiSX660」の名称で展示され、低く構えたフロントノーズ、サイドエアインテーク、リトラクタブル風ヘッドライトなど、NSXらしい造形が大きな話題を呼びました。外装にはフロント・リアバンパー、フェンダー、サイドスカート、エアロエンジンフード、リアウイングを装備し、徹底した作り込みが施されています。
特筆すべき点は、ボディが拡幅されており軽自動車枠を超えて普通車登録となる仕様である点です。これにより、660ccの制限を超えた走行性能の実現が可能になっています。2025年4月の富士スピードウェイでのテストでは、雨天のコンディション下で2分21秒のタイムを記録し、その走行性能の高さが証明されました。
エンジンは660ccの直列3気筒DOHCターボで、軽自動車の自主規制値である64馬力を発生させます。キット内容にはFRPボディキット、NSXテールランプ、ヘッドライト、マフラーが含まれ、取付、塗装、配線加工は別途カスタムショップで対応する必要があります。2025年6月から完全予約制で販売が開始され、143万円という価格設定で、90年代スピリットを求めるファンの心を掴んでいます。
ミニNSXの購入検討時に重要な理解点は、「ミニNSX」という名称が複数の対象を指しているという点です。カスタムモデルのNS660と、ホンダの純正スポーツカーNSXは全く異なる車です。
ホンダNSXは1990年に発売された日本初のミッドシップ・スーパースポーツカーで、F1技術を応用した高性能と快適性を融合させた「快適F1」をコンセプトに開発されました。初代モデルは世界初のオールアルミボディや電動パワーステアリングなど先進技術を採用し、誰もが扱いやすい「人間中心のスポーツカー」として高い評価を受けています。
2016年に登場した2代目NSXは、3.5L V6ツインターボエンジンと3基の電動モーターを組み合わせた「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載し、圧倒的な加速性能と高い操縦安定性を実現しています。初代モデルは販売終了から約15年以上経過した現在でも高値で取引される人気モデルで、走行距離の少ない車両では希少性から当時の新車価格を上回るプライスタグが掲げられる場合もあります。
ミニNSXの中古相場を語る際、S660カスタム化による完成度の高いNS660と、実在するホンダNSXの2つのカテゴリーを分けて考える必要があります。
NS660のカスタムキット価格は143万円で、これに工賃や塗装代などを加えると総額200万円~250万円程度になると予想されます。一方、ホンダNSXの初代中古車は298万円から2,760万円の広い価格帯で流通しており、年式やグレード、走行距離、ボディカラーによって大きく異なります。
走行距離別の買取相場では、1万km以下の低走行車は最大2,194.9万円~最小2,028.6万円、7万kmの車両で最大598.8万円~最小598.8万円となっており、走行距離が購入価格に与える影響が極めて大きいことがわかります。2代目NSXは2370万円という高額な新車本体価格が設定されており、中古車登録はごく少数です。登録されている車両の大半は低走行車で、2,398万円から2,950万円の価格帯で取引されています。
購入時は、最新の価格をグーネットやカーセンサーなどの中古車サイトでこまめにチェックし、複数の業者から査定を取ることが価格交渉の成功につながります。
参考リンク:初代NSXの詳細な中古相場情報
グーネット NSX NA系中古価格相場
参考リンク:2代目NSXの最新流通情報
カーセンサー NSXの相場情報
ミニNSXをカスタム化したNS660の場合、基本はS660の軽自動車であるため、初期のメンテナンス費用は比較的抑えられます。ただし、カスタムパーツの品質や耐久性に不安がある場合は、施工店の選定が極めて重要になります。
一方、ホンダNSXの年間維持費は型式によって大きく異なります。初代NA系の3.0L/4AT/ミッドシップモデルでは、使用燃料が無鉛プレミアムガソリンで10モード燃費8.4km/Lであり、年間ガソリン代約172,619円と自動車税51,000円で年間維持費は約226,619円です。NA2の6MT仕様では燃費が9.0km/Lで年間維持費は約212,111円になります。
2代目NC1の3.5L/CVT/フルタイム4WDモデル/ハイブリッドでは、JC08モード燃費12.4km/Lで年間ガソリン代約116,935円と自動車税58,000円により、年間維持費は約174,935円とやや低くなります。ただし、初代モデルの方が保険料が低い傾向にあり、総合的な維持費コストは個別の状況によって異なります。
予定外の修理対応に備え、購入後の修理履歴を把握し、信頼できる認定中古車販売店での購入をお勧めします。
参考リンク:NSX購入ガイドと維持費の詳細
ネクステージ ホンダNSX購入方法解説
ホンダNSXはGT-RやフェアレディZと並ぶ国産スポーツカーの傑作であり、1990年代の高性能スポーツカー黄金期を象徴する車です。初代モデルのエンジンはショートストロークのVTEC機構付3.0L V型6気筒DOHC自然吸気エンジンを横置きミッドシップに搭載し、軽量・高剛性を誇るオールアルミモノコックボディと相まって、卓越したハンドリング性能を実現しています。
パワーバンドを積極的に使ったメリハリのある走行性能、リトラクタブルヘッドライト仕様の前期型と固定型プロジェクター式ディスチャージヘッドランプの後期型という2つのデザイン系統、NSX-Rなどの特別仕様グレード設定など、多彩なバリエーションが魅力です。
中古NSXを購入することで、単なる移動手段ではなく、あの時代の「走る歓び」を再び体験することができます。希少性と歴史的価値を備えた中古NSXは、自動車愛好家にとって特別な1台となるでしょう。一方、NS660によるカスタム化は、現代的な実用性を保ちながら90年代スピリットを表現できる、新しい選択肢として注目を集めています。
いずれの選択肢においても、十分なリサーチと信頼できるディーラーや業者との相談を通じて、自分の理想の1台を見つけることが重要です。