マツダロードペーサーは1975年に登場したマツダ初の3ナンバー車で、当時としては異例の大型ボディを採用した最高級セダンです。全長4850mm×全幅1885mm×全高1465mm、ホイールベース2830mmという堂々としたサイズは、現代の高級車と比較しても遜色ない大きさを誇ります。
車両重量は1575kgと、当時の日本車としては重量級でありながら、マツダ製の654cc×2ローター13B型ロータリーエンジンを搭載していることが最大の特徴です。このエンジンは最高出力135馬力/6000rpm、最大トルク19.0kg・m/4000rpmを発揮し、3速ATと組み合わされていました。
オーストラリアのGMホールデンから部品供給を受けて開発されたという珍しい経緯を持ち、オーストラリア製のボディにマツダのロータリーエンジンを搭載するという、世界でも類を見ない組み合わせが実現されました。
ロードペーサーの新車価格は368万円から371万円で、これは当時のトヨタセンチュリーの最上級グレード(342万円)や日産プレジデントよりも高額な設定でした。この高価格が販売不振の一因となり、発売からわずか2年後の1977年に生産中止となったため、総生産台数は約800台という極めて希少な車両となっています。
現在の中古車市場では、その希少性から「究極のカルトカー」として位置づけられており、状態の良い個体は数百万円から1000万円を超える価格で取引されることもあります。特にオリジナルの状態を保った個体や、走行距離の少ない車両は非常に高値で取引される傾向にあります。
中古車として流通する個体は年間数台程度と極めて少なく、マニアやコレクターの間では「一生に一度出会えるかどうか」と言われるほどの希少車です。そのため、購入を検討する際は価格よりも車両の状態や整備記録を重視することが重要です。
ロードペーサーの中古車購入時には、特にロータリーエンジンの状態確認が最重要ポイントとなります。13Bロータリーエンジンは定期的なメンテナンスが必要で、特にアペックスシールの交換やオーバーホールの履歴を確認することが大切です。
🔧 エンジン関連のチェックポイント
また、オーストラリア製のボディ部品については、現在では入手が困難な部品も多く存在します。特に外装パーツや内装の特殊な部品については、修理や交換が必要になった場合の部品調達が困難になる可能性があります。
電装系についても、1970年代の車両特有の問題として、配線の劣化やリレー類の不具合が発生しやすいため、購入前には必ず電装系の動作確認を行うことが重要です。
ロードペーサーの維持には、一般的な中古車以上のコストがかかることを覚悟する必要があります。まず燃費については、ロータリーエンジンの特性上、リッター5-6km程度と現代の基準では非常に悪く、燃料費だけでも相当な負担となります。
🛠️ 年間維持費の目安
整備については、ロータリーエンジンに精通した整備工場を見つけることが重要です。一般的な整備工場では対応できない場合が多く、マツダディーラーやロータリー専門店での整備が必要になることがほとんどです。
特にエンジンオーバーホールが必要になった場合は、100万円以上の費用がかかることも珍しくありません。そのため、購入時にはエンジンの状態を十分に確認し、将来的な整備費用も含めて予算を検討することが重要です。
ロードペーサーは単なる中古車ではなく、自動車史に残る貴重なコレクションアイテムとしての価値を持っています。マツダが唯一製造した大型高級車であり、ロータリーエンジンを搭載した最大級の乗用車という特異な存在です。
近年のクラシックカーブームにより、希少な日本車への注目が高まっており、ロードペーサーもその恩恵を受けて価値が上昇傾向にあります。特に2023年にマツダのロータリーエンジン搭載車が累計生産200万台を達成したことで、ロータリーエンジンへの関心が再び高まっています。
投資対象としても魅力的で、状態の良い個体は年々価値が上昇しており、適切に保管・維持された車両は将来的にさらなる価値向上が期待できます。ただし、維持費の高さを考慮すると、純粋な投資目的よりも、自動車愛好家としての情熱を持って所有することが重要です。
コレクターの間では「レア車ファンの聖地」とも呼ばれ、所有すること自体がステータスシンボルとなっています。実際に、普通の人があまり乗らない車ばかりを乗り継ぐレア車ファンがわざわざ探してマイカーにするほどの魅力を持った車両です。