車のウッドパネルは、1940年代のアメリカ車から始まった装飾スタイルです。マーキュリーのシリーズ79MやプリムスP10など、初期のモデルではボディパネルに実際の木材が使用されていました。
この装飾は特にアメリカで人気を博し、ナッシュ、フォード、クライスラーなど、メーカーの枠を超えて広く採用されました。特に雄大な自然の中でも映えるラグジュアリーなステーションワゴンやSUVで多く見られ、アメリカ人のライフスタイルと密接に結びついていました。
1970年代から1990年代にかけて、この流行は日本にも波及しました。日本では外板をウッド調にしたモデルが登場し、アメ車に憧れる人々やサーファーなど、自然の中でスポーツを楽しむ人たちから熱烈な支持を受けました。
当時の日本では、日産セドリック/グロリアワゴンなどが代表的なウッドパネル車として人気を集めていました。これらの車は、ロングボードも積み込めるステーションワゴンとして、サーファー文化と強く結びついていたのです。
現代の車用ウッドパネルは、実際の木材ではなく、高度な技術によって作られています。多くの場合、デカール(シールの一種)が使用されており、本物の木材の風合いを忠実に再現しています。
高級車メーカーのロールス・ロイスでは、ウッドパネルの製造に特別な技術が用いられています。車内で使用する木材の加工を専門にする「ウッドショップ」と呼ばれる部署があり、トリムやプレス、サンディング(やすりがけ)などを行う専門職人が存在します。
ロールス・ロイスのウッドパネルは、衝突安全性も考慮して設計されています。家具とは異なり、車内に使用するウッドパネルは、アルミニウムに何層も薄い木を貼り合わせ、圧着して製作されています。この技術により、美しい木目を保ちながら、車両の安全基準を満たすことができるのです。
顧客は木の種類や木目、色などを選ぶことができ、要望に合わせて木の色合いを組み合わせた図柄を作ることも可能です。このような細かなカスタマイズが、高級車の魅力の一つとなっています。
ウッドパネルの最大の魅力は、車に高級感と上質さを演出することです。木目調の外観や車内装は、見る人に対して贅沢な印象を与え、車の価値を高める効果があります。
木目調のトリムやパネルは、外観の雰囲気を引き締める効果があります。自然な木の風合いを再現することで、温かみや居心地の良さを感じさせ、車内の雰囲気をより快適にします。これにより、長時間のドライブでもリラックスして過ごすことができるでしょう。
また、ウッドパネルは車内のデザインにアクセントを加え、スタイリッシュで洗練された外観を演出します。木目調のデザインは、モダンな雰囲気やクラシックな雰囲気を作り出すことが容易で、様々なスタイルに対応できる汎用性があります。
現代のウッドパネルは実際の木材ではなく合成材料で作られているため、耐久性があり、汚れや傷に強いという実用的なメリットもあります。メンテナンスも比較的容易で、こまめな洗車が必要なく、誰でも常にレトロ感を演出することができます。
一度廃れたウッドパネルスタイルが、現在再び注目を集めています。2020年1月に開催された「東京オートサロン」では、ホンダN-VANの側面に帯状の木調装飾を施した「N-VAN MALIBU」が、「東京国際カスタムカーコンテスト2020」のKカー・コンパクトカー部門で最優秀賞を獲得しました。
この復活の背景には、現代のファッショントレンドが大きく影響しています。90年代ファッションが定番となり、ハイウエストなジーンズやロゴT、ティンバーランドやドクターマーティンなどのブーツが注目を集める中、自分たちのファッションにマッチする車として、80年代から90年代の車に手を出す人が増えています。
近年の「東京オートサロン」などのショーでは、ウッドパネルを施したスズキジムニーやトヨタハイエースといったカスタムカーの出展が見られます。2018年にはフォルクスワーゲンジャパンが、「ザ・ビートル」の側面にウッドパネルを取り付けたモデルを出展し、その好評を受けて同パネルを純正アクセサリーとしても発売しています。
この復活は単なる懐古趣味ではなく、「このカタチって新しいよね」と飛びつく若者も多いといいます。当時を知らない世代にとって、ウッドパネルは見たことのない最新アイテムに映っているのです。
ウッドパネルを採用した車を選ぶ際は、いくつかのポイントを考慮する必要があります。まず、パネルの材質を確認することが重要です。現代の多くのウッドパネルは合成材料で作られており、耐久性と美観を両立しています。
メンテナンスの観点では、定期的な清拭と保護が必要です。直射日光による色褪せを防ぐため、可能な限り屋根付きの駐車場を利用することをお勧めします。また、洗車時には中性洗剤を使用し、研磨剤入りのクリーナーは避けるべきです。
ヴィンテージ車のウッドパネルを選ぶ場合は、パネルの状態を慎重にチェックする必要があります。剥がれや色褪せ、ひび割れなどがないか確認し、必要に応じて専門業者による修復を検討しましょう。
カスタムでウッドパネルを追加する場合は、車体のラインに合わせたデザインを選ぶことが重要です。DAMDなどの専門メーカーでは、車種に合わせたオリジナルデザインのウッドパネルを提供しており、プロフェッショナルな仕上がりを期待できます。
購入前には、そのウッドパネルが車検に適合するかどうかも確認しておくことが大切です。適切な材質と施工方法であれば、車検に問題はありませんが、事前の確認は必須です。
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