車のエアコンには「外気導入」と「内気循環」という2つのモードがあります。これらの違いを理解することが、効果的な使い分けの第一歩となります。
外気導入モードは、文字通り車外の空気を車内に取り入れるシステムです。このモードでは、エアコンのブロアファンが車外から新鮮な空気を吸い込み、エバポレーターで冷却してから車内に送り込みます。一方、内気循環モードは車内の空気を循環させるシステムで、外気の侵入を最小限に抑えながら車内の空気を冷却し続けます。
これらのモードの切り替えは、多くの車種でスイッチ一つで簡単に行えます。内気循環のスイッチのみがある場合は、ランプが点灯している時が内気循環モード、消灯している時が外気導入モードとなっているのが一般的です。
興味深いことに、外気導入と内気循環では風量にも違いが生じます。内気循環の場合は密閉空間内での循環のため風量が安定していますが、外気導入では外気を車内に押し込む形になるため、若干風量が弱くなる傾向があります。
冷房効率の観点から見ると、内気循環の方が優れているケースが多いのが実情です。これは、すでに冷却された車内の空気を再び循環させることで、エアコンの負荷を軽減できるためです。
具体的な数値で見ると、炎天下で車内温度が50℃を超えるような状況では、外気温が35℃程度であっても、内気循環の方が効率的に車内を冷却できます。これは、温度の高い車内空気を冷やすよりも、相対的に温度の低い外気を取り入れた方が良いという一般的な考えとは逆の結果となります。
ただし、車内温度が外気温よりも高い初期段階では、外気導入を活用することで効率的に車内温度を下げることができます。この段階では、窓を全開にして外気導入モードで走行し、車内の熱気を追い出すことが重要です。
燃費の観点からも、冷房時には内気循環の方が有利です。外気を冷却するよりも、すでに冷却された空気を循環させる方がエアコンコンプレッサーの負荷が軽減され、結果的に燃費向上につながります。
外気導入が威力を発揮するのは、主に換気が必要な場面や窓ガラスの曇り取りが必要な時です。特に冬場の暖房使用時には、外気導入が重要な役割を果たします。
窓ガラスの曇り取りにおいて、外気導入は非常に効果的です。車内外の温度差によって発生する結露を防ぐには、外気を取り入れて車内の湿度を下げることが必要です。この際、A/Cスイッチをオンにしてデフロスターと組み合わせることで、より迅速に曇りを除去できます。
長時間のドライブでは、定期的な換気が安全運転の観点から重要です。内気循環を長時間続けると、車内の二酸化炭素濃度が上昇し、最大で6,770ppmに達することがあります。これは外気の約5.5倍の濃度で、眠気や頭痛の原因となる可能性があります。
トンネルを出た後や渋滞から抜け出した際には、外気導入に切り替えることで車内の空気を新鮮に保つことができます。また、車内に食べ物の臭いがこもった場合なども、外気導入による換気が効果的です。
内気循環が最も威力を発揮するのは、エアコンがある程度効いてきた段階です。車内温度が外気温に近づいた時点で内気循環に切り替えることで、冷房効率を最大化できます。
特に夏場の高速道路走行では、内気循環の効果が顕著に現れます。外気温が35℃を超えるような状況では、外気導入よりも内気循環の方が車内を効率的に冷却できます。この際、風量を最大にすることで、より早く車内温度を下げることが可能です。
渋滞時やトンネル内走行時には、内気循環が必須となります。これらの状況では排気ガスの濃度が高く、外気導入では車内環境が悪化する可能性があります。内気循環により、排気ガスや粉塵の侵入を防ぎながら、快適な車内環境を維持できます。
花粉症の方にとって、内気循環は強い味方です。最近のエアコンフィルターは花粉除去能力が向上していますが、内気循環と組み合わせることで、より効果的に花粉の侵入を防ぐことができます。ただし、衣類に付着した花粉の除去も重要な対策となります。
燃費への影響を考える際、冷房と暖房では異なる特性を示します。冷房時には内気循環の方が燃費に有利ですが、暖房時にはそれほど大きな差は生じません。
冷房時の燃費差が生じる理由は、エアコンコンプレッサーの負荷にあります。内気循環では、すでに冷却された空気を再び冷却するため、コンプレッサーの負荷が軽減されます。一方、外気導入では常に高温の外気を冷却し続ける必要があり、コンプレッサーの稼働時間が長くなります。
実際の燃費データを見ると、夏場の高速道路走行において、内気循環と外気導入では燃費に約5-10%の差が生じることがあります。これは年間を通じて考えると、決して無視できない差となります。
暖房時の燃費への影響が少ない理由は、自動車の暖房システムがエンジンの排熱を利用しているためです。エンジンの冷却水の熱をヒーターコアで熱交換し、その熱を利用して暖房を行うため、外気導入と内気循環による負荷の差は冷房ほど顕著ではありません。
ただし、エンジン始動直後の暖房効率を考えると、内気循環の方が早く車内を温めることができます。これは、相対的に温度の高い車内空気を循環させることで、効率的な暖房が可能になるためです。
JAF(日本自動車連盟)の実験データによると、適切な外気導入と内気循環の使い分けにより、安全性と燃費の両方を向上させることができることが証明されています。
JAFの車内環境テスト結果
JAFが実施した車内環境テストの詳細データと、二酸化炭素濃度の測定結果について
効果的な使い分けのコツとして、1時間に1回程度の換気を心がけることが推奨されています。これにより、安全性を確保しながら燃費効率も最適化できます。また、季節や走行環境に応じて、適切なモードを選択することで、快適なドライブと経済性を両立させることが可能です。